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11章

619.レオンハルト視点

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「お待たせしました、こちらの部屋へどうぞ…」

レオンハルト達は数刻待たされると違う部屋へと案内された。

ユリウスとシリウスがピッタリとレオンハルトを挟みついて行くと…

「ではこちらの部屋へ…」

三人が入るとそこにはアルフレッド王子と大臣が二人…そしてアルフレッドに似た獣人の女の子がいた。

「すまないが私はアルフレッド王子と二人で話がしたいと言ったはずだが?」

レオンハルトが邪魔な三人を見ると…

「そうですが…さすがに我らもまだ幼い新たな王を一人には出来ません…そちらも二人、条件は一緒では?」

大臣が笑うと

「このハゲ…」

ボソッとレオンハルトがつぶやくと

「レオンハルト様…」

ユリウスがそっと注意する。

「わかってるが…」

ちらっとユリウスに目を向けると

「聞こえますから言うならもっと小さな声でお願いします」

「あ、ああ…言っていいんだ…」

レオンハルトが頷く。

「我らは護衛の為だ…お二人のお話に口を挟むことはない…そちらも大臣ではなく兵士を用意してはどうだ?」

シリウスが提案する。

「我らも獣人…大臣と言えどそれなりの戦闘は出来ますからご安心を…」

大臣が答えると

「アルフレッド王子!あなたはどうなのだ!?あなたの意見を聞きたい!私と二人で腹を割って話す気はないのか!?あなたの父上ならきっとそうしたはずだ!」

レオンハルトがアルフレッドに話しかけた。

「父…上…」

アルフレッドの瞳が宙を彷徨う…

「アルフレッド様、アトラス様の事はお忘れ下さい…あれは国の裏切り者です」

大臣がそっと耳打ちすると

「裏切り者…そうだあれはもう父ではない…私はそもそもこの協定に疑問があった…蔑まれて来たのは我らだ…それがなぜまたへりくだってそちらと協定を結ばなければならない!協定を結びたいならお前達が殺した仲間達と同じ数の人間を殺して献上しろ!」

アルフレッドが興奮しながら叫び出した!

「なんて事を…」

レオンハルトがアルフレッドを睨みつけると…

「我らの思いの真実はこれです…ですがそれではまた戦争の繰り返しです…ですからこちらとしては苦渋の思いでこの協定を前向きに考えております」

レオンハルトが大臣を見つめると

「何が言いたい?」

「そちらがまたいつ裏切るとも分かりません…ですのでレオンハルト様にはどうか我が国の姫を婚約者として迎えて欲しいと考えております」

「はっ?」

レオンハルトが思わず変な声を出すと

「バイオレッド…様」

大臣が名前を呼ぶと

「はい…」

先程からずっといた獣人の女の子が一歩前に出た…

「レウタニア・バイオレッドと申します…末永くよろしくお願い致します」

そういうと軽く膝を曲げた…

レオンハルト達はあまりの展開に何も言えずに黙り込むと…

「バイオレッド様は器量よしで戦闘も人の女子に劣る事などありません…今後は是非とも大々的にウエスト国で祝って頂きたい。すれば我らの関係も確固としたものになります!」

大臣達が楽しみだと笑い出すと…

「ま、待って下さい!話が急過ぎます!」

ユリウスが止めると

「そ、そうだ…俺はここに協定を結びに来たんだ…嫁を貰いに来た訳ではない!」

レオンハルトが無理だと首を振ると

「それはバイオレッドが獣人だからですか?獣人の差別を無くそうと言ってくださるレオンハルト様が率先して獣人と結ばれる…これ程獣人と人間達の関係がすぐに良くなる案などないと思いますが?」

「それにしても急すぎる!それにレオンハルト様はウエスト国の第一王子時期国王の継承者だ!」

「ええ、ですからこのバイオレッドがウエスト国初めての獣人の王妃となりますね」

「何を言っているんだ…」

レオンハルト達は信じられないと大臣達を見つめると

「我らはこの条件がのめない限り協定を結ぶつもりはありません…」

「それはこの話を断ればまた戦争をすると言うことか?」

「まさか!我らはそちらが絶対にこんないい話を断るとは思っておりません…ですので戦争など考えてもいませんよ…」

ふふふと笑うと

「まぁレオンハルト様もまだお若い…少しバイオレッドと話して二人の仲を深めて見てはいかがでしょう…元よりこちらにまだ滞在するご予定でしたよね?」

大臣が笑うと

「この…」

シリウスが剣を握りしめようとすると…レオンハルトが手を出してそれを止める。

「わかった…しかし少し考える時間が欲しい…さすがに私の一存ですぐに決められる事では無いからな…」

「ええ…ごゆるりと…ああ!この部屋ですが…ここがバイオレッドの部屋となっております…レオンハルト様ならいつでもお越しください…もちろん夜中でも構いませんので…」

大臣達は笑うとそれではとアルフレッドを連れて部屋を出ていった…

一人残されたバイオレッドは微動だにせずにずっと頭を下げている。

「あんなんだ…あのハゲ野郎は…」

シリウスが獣人の大臣達が消えた扉を睨みつけると…

「シリウス…まだ姫が残っております…口を慎みなさい」

ユリウスが注意すると

「バイオレッド様、あなたの気持ちはどうなんですか?」

レオンハルトがポツンと立つ彼女に話しかけると

「バイオレッドと申します…可愛がって下さいませ…」

今度は膝をついてこうべを垂れる。

「おい!俺は話がしたいんだ、顔をあげてくれ!」

レオンハルトが思わず強い口調になると

「はい…なんでも致します。お好きにしてください」

そういうとパラッ…と肩からかけていた布を脱ぎ出した…

「えっ…な、なんなんだ!」

レオンハルトはたまらずに顔を赤くしてユリウスの後ろに隠れると…

「シリウス」

「ああ」

シリウスはサッとベッドのシーツを掴むとバイオレッドに巻き付けた。

ユリウスはバイオレッドに近づくと

「失礼致します…」

バイオレッドの顔を覗き込む、しかし近くで見ているのにも関わらずバイオレッドと視線が合うことはなかった。

クンクン…

周りの匂いを嗅ぐが薬品の香りもしない…

「どうも操られている様だが薬とかでは無いようだな…」

「レオンハルト様、どうしますか?このまま逃げ出して一度国に帰りますか?」

ユリウスが聞くと

「それがいいだろ…どうもおかしすぎる。あいつらバイオレッド様を呼び捨てにしていたぞ…忠誠心なんてあったもんじゃない」

シリウスも賛成すると

「すぐに兵士を集めて国を出ましょう」

ユリウスが準備をしようと部屋を出ようとすると…

「いや待て…」

レオンハルトは難しい顔をして二人を止めた。
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