上 下
516 / 687
11章

617.すいとん

しおりを挟む
鍋を見ると入れた小麦粉の生地に火が通って上の方に浮いてくる。

それを確認するとミヅキが一口味見をしてみる。

「うん!大丈夫そう、美味しっ!」

「これは…短いうどんか何かか?」

匂いをかいでベイカーさんが聞くと

「これはすいとんだよ、これがモチモチで食べ応えがあって美味しいんだよ」

早速とみんなの分をよそおうとすると…

「ああいい、いいミヅキは休んでな。俺がやってやるよ」

アランさんが変わろうとミヅキからおたまを借りる。

「いいの?ありがとうアランさん」

ミヅキが笑って場所を変わると…

「ほら、じじい共。お前達は年寄りだからなぁ、喉に詰まらせたら大変だ。柔らかい野菜をたくさん入れといたぞ」

アランさんがディムロスとロブに器を渡すと

「一言余計じゃ!」

文句を言いながらも二人が受け取ると

「ほら、ロバートお前は筋肉が大事だからな!肉を多めに入れてやったぞ」

「お、俺も?一緒にいいのか?」

ロバートが戸惑うと

「一緒に小麦粉捏ねただろうが、ほら食えよ」

アランさんが強引にロバートさんに器を渡す。

「次はベイカーとコジローな、お前達も最近野菜が足りてないみたいだな…ほらよ」

ドサッと山盛りの野菜を盛る。

「ミヅキはちっこいからなたくさん食えよ」

さらに大盛りでよそう…

「こんなに食べられないよー」

「残したらシルバにでも食べてもらえ」

そうしてシルバ達の分もよそってあとは自分の分…底に残った肉とでかいすいとんを自分の器に入れる。

アランがニヤリと笑うと

「グルル…」

シルバが何やら不機嫌そうに唸った。

「ん?なぁにシルバ?」

ミヅキがシルバから話を聞いている…アランがちらっと伺うと…

「えっ…」

ミヅキが驚いた顔をしてこちらを見た…そして近づいて来ると…

「アランさん、ちょっとそのすいとん見せてくれる?」

ミヅキがじっと見つめながら声をかけてきた。

「な、なんでだ、みんなにちゃんと分けただろ!」

アランがミヅキに届かないように高い位置に持っていくと…

「怪しい!」

ベイカーがアランの器を取り上げた!

「あっ!返せ!」

アランが取り返そうとすると…

「あっ!アランさん自分のにだけこんなに肉入れやがって、しかもなんだこのでかいすいとんは…」

アランさんのすいとんはみんなの倍以上の大きさだった…

「やっぱり!シルバが怪しいから調べろって言ったんだよ!」

ミヅキが怒ると

「やっぱり気づいてたのか…」

アランがシルバを睨むとシルバが何か吠えた。それをミヅキが訳すと…

「自分だけ狡いって!…えっ狡い?」

ミヅキが驚き振り返ってシルバを見る。

「それってシルバも欲しかった…って事じゃないよね?一人だけじゃなくて俺にも寄越せって事?」

ミヅキが聞くと、シルバが慌てて首を振っていた。

「アランさんもそんなに大きなすいとんだと多分芯まで火が通ってないよ。それじゃあお腹壊しちゃうよ」

「な、なに!?」

アランがベイカーからすいとんをとりあげて一口かじって見ると…確かに中心部分までまだ火が通ってなかった…

「あともう少し煮込まないとね~」

ミヅキが笑うと

「くっそー…」

「そうやってズルするから食べられなくなっちゃうんだよ!」

「そうだぞ、全く本当に食いじがはってるなぁ」

「しょうがない奴だな、このままでもすごい美味いのに勿体ない」

じいちゃん達は構わずにうまいうまいとすいとんを食べている。

「ズルをしたアランさんはほっといて俺達は腹ごしらえしちゃおうぜ」

ベイカーやコジロー達も構わずに食べ始めると

「お、俺のを少しやろうか?」

ロバートさんがしょうがないとアランさんにすいとんを渡そうとすると

「ロ、ロバート!」

アランさんが嬉しそうにロバートさんを見つめる。

「なんて優しいんだ!人間共よりよっぽど獣人の方が優しいじゃねぇか!どうなってるそこの人間共!」

「あんたはその人間様を騙そうとした人間だろうが」

ベイカー達はアランに構わずすいとんを食べ終えた。

「ロバートさんそれはロバートさんの分だから食べていいよ。アランさんのは私がちゃんと食べられるようにするからね」

ミヅキが苦笑してロバートさんの分を返すと

「ミヅキ~お前は優しいな!やっぱりお前だけだよ可愛いのは」

アランがミヅキの頭を撫でると

「もう駄目だよ!次は無いからね!」

ミヅキが怒ってアランさんのドデカすいとんを一口大に切るとすいとんの汁の中に入れる。

「具材の大きさにも意味があるんだから勝手に変えたら駄目だからね」

ミヅキがすいとんを煮込みながら説明すると

「わかった、もう料理に関してはミヅキには逆らわんぞ!」

アランが素直に頷くと

「まぁわかればよろしい!」

ミヅキがふんぞり返って頷いた。

すいとんに火が通ると器によそってあげる。

「熱いから気をつけてね」

ミヅキから受け取りアランはありがたくすいとんを口にした…

腹も膨れて今日はここで寝て明日らダンジョンの本格的な捜索へと向かう事になった。

みんなで輪になってこれからの事を話し合う。

ロブさんがみんなを見ながら

「今日見てきた感じだとエリクサーを置く部屋まではこのメンバーなら…まぁ行けるだろう、ミヅキには悪いが進みながらエリクサーを作って貰いたい」

「わかった!頑張るよ」

ミヅキが頷く。

「そういえばダンジョンって部屋に別れてるの?」

ミヅキが聞くと

「ダンジョンにもよるがここのは地下にどんどん潜るタイプだ、地下二十階まである…下に降りる階段を見つければその階はクリアだな」

「へー!」

「地下五階までは行き来は自由なんだが、その先は一度進むと十階、十五階と最終の二十階まで行かないと戻れない仕様になっている」

「なんか人が作ったアトラクションみたいだね」

「アトラ…くしょん?」

ロブさんが首を捻ると

「なんでもないよ、じゃあ明日はとりあえず五階まで?」

「そうだな…五階までならまぁ一日もあれば行けるだろう」

「はい!質問!」

「はいミヅキ」

ロブさんが手を上げたミヅキを指さした。

「十階まで行ってまた地上に戻ったらまた十階から挑戦できるんですか!?」

「出来ん…それが出来れば苦労はないんだがな…一度戻るとまた最初っからやり直しだ」

「うーん…となると一度潜ったらなるべく一気に行きたいね。エリクサーを使うのは何階ですか?」

「エリクサーは十六階だ。俺はそこに行けなくて十五階で戻ってきた…」

「じゃあそれまでに作らないとね…」

「アトラスの様子がわからんがあんまりのんびりとはしてられんだろう…」

「わかった!じゃあ今日はしっかりと休んで明日から頑張ろうね!」

「みんなも頼む!」

ロブはうっすら毛の生えてきた頭を深々と下げた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです 無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す! 無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!

異世界召喚に巻き込まれたおばあちゃん

夏本ゆのす(香柚)
ファンタジー
高校生たちの異世界召喚にまきこまれましたが、関係ないので森に引きこもります。 のんびり余生をすごすつもりでしたが、何故か魔法が使えるようなので少しだけ頑張って生きてみようと思います。

幸子ばあさんの異世界ご飯

雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」 伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。 食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。

転生幼女はお願いしたい~100万年に1人と言われた力で自由気ままな異世界ライフ~

土偶の友
ファンタジー
 サクヤは目が覚めると森の中にいた。  しかも隣にはもふもふで真っ白な小さい虎。  虎……? と思ってなでていると、懐かれて一緒に行動をすることに。  歩いていると、新しいもふもふのフェンリルが現れ、フェンリルも助けることになった。  それからは困っている人を助けたり、もふもふしたりのんびりと生きる。 9/28~10/6 までHOTランキング1位! 5/22に2巻が発売します! それに伴い、24章まで取り下げになるので、よろしく願いします。

転生少女の異世界のんびり生活 ~飯屋の娘は、おいしいごはんを食べてほしい~

明里 和樹
ファンタジー
日本人として生きた記憶を持つ、とあるご飯屋さんの娘デリシャ。この中世ヨーロッパ風ファンタジーな異世界で、なんとかおいしいごはんを作ろうとがんばる、そんな彼女のほのぼのとした日常のお話。

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

料理がしたいので、騎士団の任命を受けます!

ハルノ
ファンタジー
過労死した主人公が、異世界に飛ばされてしまいました 。ここは天国か、地獄か。メイド長・ジェミニが丁寧にもてなしてくれたけれども、どうも味覚に違いがあるようです。異世界に飛ばされたとわかり、屋敷の主、領主の元でこの世界のマナーを学びます。 令嬢はお菓子作りを趣味とすると知り、キッチンを借りた女性。元々好きだった料理のスキルを活用して、ジェミニも領主も、料理のおいしさに目覚めました。 そのスキルを生かしたいと、いろいろなことがあってから騎士団の料理係に就職。 ひとり暮らしではなかなか作ることのなかった料理も、大人数の料理を作ることと、満足そうに食べる青年たちの姿に生きがいを感じる日々を送る話。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」を使用しています。

自重をやめた転生者は、異世界を楽しむ

饕餮
ファンタジー
書籍発売中! 詳しくは近況ノートをご覧ください。 桐渕 有里沙ことアリサは16歳。天使のせいで異世界に転生した元日本人。 お詫びにとたくさんのスキルと、とても珍しい黒いにゃんこスライムをもらい、にゃんすらを相棒にしてその世界を旅することに。 途中で魔馬と魔鳥を助けて懐かれ、従魔契約をし、旅を続ける。 自重しないでものを作ったり、テンプレに出会ったり……。 旅を続けるうちにとある村にたどり着き、スキルを使って村の一番奥に家を建てた。 訳アリの住人たちが住む村と、そこでの暮らしはアリサに合っていたようで、人間嫌いのアリサは徐々に心を開いていく。 リュミエール世界をのんびりと冒険したり旅をしたりダンジョンに潜ったりする、スローライフ。かもしれないお話。 ★最初は旅しかしていませんが、その道中でもいろいろ作ります。 ★本人は自重しません。 ★たまに残酷表現がありますので、苦手な方はご注意ください。 表紙は巴月のんさんに依頼し、有償で作っていただきました。 黒い猫耳の丸いものは作中に出てくる神獣・にゃんすらことにゃんこスライムです。 ★カクヨムでも連載しています。カクヨム先行。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。