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11章

607.選定

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「舐めてんのか!やるのはお前だけか!」

他の奴は手を出す気は無いのか後ろに下がる…

舐めた様子にギルドの冒険者達はキレそうになる。

「この状況見ても他の奴らは手伝う気がないんだな…もしかしてお前見捨てられたのか?」

そう言って引き攣りながら笑うと

「んなわけないだろ、俺一人で十分だからあいつらは休んでんだよ。ほら御託はいいから早くしようぜ」

ベイカーはつまらなさそうに欠伸をすると

「こいつ…」

冒険者達は一斉に襲いかかった!

「ん?ああ、一応CかB級の力はあるみたいだな…」

ベイカーは一人一人の力量を動きを見ながら測っていく。

「お前はスピードはあるが力が弱すぎる!C級だな!」

そう言って男を壁に投げつけると…

「お前はまぁまぁバランスがいいな、でもそれだけだな特化してるものがない。おまけしてB級!」

次々と何級か言いながら男達を沈めていった。

「なんなんだ…あいつ…」

冒険者達が戸惑うと

「まるで昇級試験を受けてるみたいだ…」

歯も立たない存在の男を唖然と見つめた…

「な、なんなんだお前…一体何級なんだ…」

「何ってA級冒険者だよ」

「A級…」

「ああ、お前らと違って本物のA級冒険者だ」

そう言うとベイカーはA級の証のギルドカードを取り出した。

ベイカーの輝くカードを見て男達はそのカードを見つめる…

「あれがA級のカード…初めて見た…」

「ば、馬鹿やろう!」

口を滑らせた男を副ギルが殴りつけた!

「お、お前らだって同じだろうが!」

「そ、そうだった…」

男達は気を引き締める。

「おい、全員でかかるぞ…さすがにこの人数ならいけるだろ」

残った男達は頷くとジリジリとベイカーを取り囲んだ…

合図と共に一斉に覆いかぶさろうと飛び込むと…

ドスン!

そのまま地面へとダイブする。

「いたた…」

「あの男は?」

男達がキョロキョロと周りを見ると

「ぐぅ……」

見るとベイカーは副ギルを後ろから羽交い締めにしていた…

副ギルは息が出来ずにバシバシとベイカーの腕を叩くがピクリともしない、そのうちに手の動きが止まり…ダランと力なく垂れ落ちた。

「副ギル!」

男達が叫ぶと

「ほらよ」

ベイカーが副ギルを投げつける。

「うわっ!」

どうにか投げられたのを受け止めると

「こんな事をしてただで済むと思うなよ!」

「凄い!漫画の悪役のようなセリフ!」

ミヅキがまた訳の分からないところで興奮した。

「ミヅキー、黙ってろ」

ベイカーさんから注意が飛ぶ。

「はーい」

ミヅキが大人しく座り直すと

「で?どうするって?このギルドのA級冒険者達がA級一人に勝てないってのはどういうことなんだ?」

ベイカーが聞くと

「うるさい!お前が何か不正をしているんだろうが!これは上に報告させてもらうぞ!」

「上?上ってなんだよ」

ベイカーが聞くと

「ギルマスを呼んでこい!」

男は怯えるベディに声をかけるが、足がすくんでいるのか動かない。

「早くしろ!」

男に怒鳴られベディはヨタヨタしながら中に入っていった。

「副ギルが駄目なら今度はギルマスか?全く上から下まで腐ってんな」

ベイカーが呆れる。

「ミヅキ、プルシアはじじいの町までどのくらいで着ける?」

「じいちゃんのとこ?」

【プルシア、どうかな?】

【そうだな…まぁ半日ってところかな…】

「ベイカーさん半日だって!」

「そうか…じゃあ悪いけどじじい連れてきてくれないか?」

ベイカーが頼むと

「じいちゃんを?」

ミヅキが首を傾げる。

「今からこのギルドの連中潰すからな、そしたらこのギルドが機能しなくなるだろ?さすがに俺もギルドの事は全てわかるわけじゃ無いからな」

「で…じいちゃん?ギルマスだから?」

「まぁそんなところだ」

ベイカーが笑うと

【じゃあプルシアお願い出来るかな?】

ミヅキが聞くと

【わかった…なるべく急ごう】

そう言うとプルシアは空に飛び立った。

【よろしく~】

ミヅキが手を振ると

「あっ…」

ミヅキはしまったと口を覆った!

【どうした?】

慌てるミヅキにシルバが聞くと

【プルシア喋れないのに一人で行かせちゃった…どうやってじいちゃん連れてくるんだろ…】

【【あー…】】

シルバとシンクがなるほどと声を出すが…

【まぁプルシアなら上手いこと連れてくるだろ】

【そうそう、何とかなるよ!】

そ、そうかな?まぁプルシアならお利口さんだし大丈夫かな

「じゃあじじいが来るまでにこのギルドのてっぺんに行っとくか!」

ベイカーさんはギルマスを待つことなくギルドの中に入って行く。

「べ、ベイカーさんから行くの?」

ミヅキ達が慌ててついて行くと

「ここにいてもしょうがないだろほら行くぞ」

ベイカーさんに来い来いと手招きされて戸惑うロバートさんに声をかける。

「ロバートさんはここら辺で帰った方がいいかも…ごめんね付き合わせちゃって」

「お前ら…こんな事して大丈夫なのか?」

ロバートが心配そうにする。

「んー…まぁ何とかなると思うよ!」

ミヅキはあっけらかんと笑う。

ミヅキの笑顔にロバートは…

「ここまで来たからな、俺も最後まで付き合うぞ」

ロバートさんは行く気満々…ミヅキはコジローさんを見ると苦笑していいんじゃないかと笑っている。

まぁ…もしこの国で生けて行けなくなったら責任は取ってあげよう。

「わかった、じゃあ一緒に行こうか」

ミヅキはロバートさんに両手を差し出した。

ロバートさんはえっ…と固まった。

「そ、その手はなんだ?」

ロバートは何となくわかっていたが、恐る恐る聞いてみる。

「何って抱っこです。一緒に行くんでしょ?」

「い、いや…」

「はい!」

ロバートさんの言葉を遮り笑顔でもう一度手を出した。



ミヅキはニコニコしながら高いところからギルドを見渡す。

「へー綺麗だね!」

「初めて入ったが…やはり臭いな」

ロバートさんは片手で私を支えて片手で鼻を押さえている。

【これはたまらん…ミヅキ悪いが俺は外で待機だ、コジローミヅキを頼むぞ】

シルバは建物の中に入るのを拒否する。

【僕もむりー】

コハクも臭いと鼻を押さえるとシルバと一緒にお留守番…二人に闇商人の荷車を見ててもらいミヅキ達はベイカーの後をついて行った。

「ロバートさんもきついならいいんだよ、コジローさんも大丈夫?」

二人とも鼻がいい方だからきついだろう、時折顔を顰めている。

「シルバさんよりは大丈夫だ…が確かに臭いな…」

コジローは口元の布をぐっと上にあげた。

「俺は他の鼻がいい獣人達に比べればまだマシだからな…」

「そっか…コジローさんはマスクしてるからいいかもね」

ミヅキは収納から布を取り出すと風魔法で適当な大きさに切ると

「ロバートさんこれを鼻と口に巻いといて」

布を手渡そうとするがロバートさんの手は塞がっている。

「無理そうだから私が巻いてあげるね!」

ミヅキはロバートさんの頭の後ろで布の端ををギュッと結ぶ。

「どうかな?」

顔を覗き込むと

「おお、全然違うぞ」

鼻を押さえるのに塞がっていた片手をミヅキを支えるのにかえた。

三人で喋りながら進む中ベイカーさんは羨ましそうにこちらを見つめていた。
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