上 下
501 / 687
11章

602.変な人間達

しおりを挟む
「ベイカーさんが死んじゃう!」

ミヅキがオロオロとベイカーさんの周りをうろつくと…

「火魔法で溶かすんだ」

コジローさんが声をかける!

「わ、わかった!火炎放射!」

慌てて炎をイメージしたせいで凄い威力の炎がベイカーさんを包んだ…

「ぎゃー!」

ミヅキはパニックになると

【ミヅキ、落ち着け】

シルバが氷の足場を軽々と砕くと土魔法でベイカーの上から土砂を降らせる。

ベイカーさんが生き埋めになると慌てて手で掘り返す。

シルバやコハク達が手伝ってくれるとベイカーさんの赤い髪が顔を出した!

「ベイカーさん!」

頭を引っ張ると…

「いででで!」

ベイカーさんが真っ黒になりながら土から這い出てきた。

「ベイカーさん!ごめん!」

ミヅキはベイカーに抱きつくと必死に謝る。

「ああ、まぁわざとじゃないのはわかるけど…次は気をつけてくれ、本気で死ぬかと思ったぞ」

ベイカーが苦笑してミヅキの頭にぽんと手を置くと

「本当にごめん…」

無事を確認してもう一度ギュッと抱きしめた。

「あいつ…生きてるぞ…」

事の顛末を間近で見ていた獣人達はベイカーのタフさに驚いていた…

ベイカーさんにしっかりと回復魔法をかけると今度は落ち着いてお湯を出しながら氷を溶かす。

獣人達の足が自由になると…

「ね…落ち着かないと大切な人を失うことになるからね…」

ミヅキはしょんぼりとしながら獣人達に声をかけた。

「あ、ああ…そのようだな。まぁあいつ生きてるみたいだし…よかったな」

あまりのミヅキの落ち込み具合に獣人達も思わず気を使う。

「うん、ベイカーさん丈夫でよかった…」

ほっとしているミヅキの様子に獣人達も肩の力が抜けてしまった。

「すまんが話はちょっと待ってくれ、先に子供らに怪我がないか確認だけさせてくれ…そのあとはお前達の好きなようにしてくれて構わないから…」

「えっ!好きなように!」

落ち込んでいたミヅキが顔を輝かせる!

「あ、ああ…」

恐ろしい魔法を使う子供の喜ぶ様子に獣人達はこの後何をされるのかと恐怖した…

「じゃあ私も子供達の怪我見るの手伝うよー」

ミヅキが子供らに近づこうとすると

「ま、まってくれ!子供達は…」

獣人達が膝を着いて謝ると

「ん?回復魔法をかけるだけだよ?」

怯える子供達に近づくと

「ちょっと見せてね」

見るがみんな大した怪我はしていなかった、慌てて走り膝など擦りむいた程度のようだ。

「よかった、凄い怪我の子はいなそうだね」

ミヅキは安心させるように笑うと軽く回復魔法をかけて傷を治す。

「はい、もう大丈夫だよ」

綺麗に傷が消えると子供達は嬉しそうにお礼を言った。

「ありがとう」

「どういたしまして、さてあとは獣人さん達かな?」

ミヅキが様子を伺うとシルバに噛まれた獣人達の腕から血が流れている。

【シルバ!血が出てるじゃない!】

ミヅキがシルバを見ると

【知らん!ベイカーじゃないのか?】

シルバが顔を逸らした。

【ベイカーさん牙無いでしょ!】

「うちの子がすみませんでした…その傷治しますので見せて貰えますか?」

ミヅキが声をかけると、ゴリラの獣人が行けと怪我した獣人を顎で動かす…

恐る恐るミヅキの前に来ると…

「じゃあちょっとだけ…」

腕に触れて回復魔法をかけた。

「えっ…本当に回復魔法?」

傷が治った獣人が驚いて傷があった所を見ると

「は?さっきからそう言ってるよね?」

ミヅキが怪訝な顔をする。

「いや…すまん…でも治療費を払える金がないからもういい…あとはあいつだけ頼む」

後ろで隠れていた獣人を指さすと腕が変な方向に曲がっていた…

「ちょっと!早く見せて!」

ミヅキが駆け寄ると

「いや!いい!大丈夫だ!このまま抑えとけばくっ付くから」

治さなくていいと拒否される。

「人間に回復魔法をかけられるなんて…どんな高額な治療費を要求されるんだ…奴隷落ちはしたくない…」

やめてくれと顔を青くするので

「治療費なんて取らないよ!怪我させたのはこっちでしょ?」

ミヅキは面倒だと勝手に回復魔法をかけると

「はい!終わり!」

ぽんと怪我した腕を叩いた。

「いった!…くない」

獣人が自分の腕をさすると元のように動かせる。

「凄い…骨まで治ったぞ…」

手を開いたり閉じたりして確認すると…

「本当に金はいいんだな…」

再度確認する。

「いらないって!」

ミヅキがぷいっと顔を背けると

「あ、ありがとう…」

獣人は戸惑いながらお礼を言った。

その言葉にミヅキは振り返って

「その言葉だけで嬉しいです」

嬉しいそうに微笑んだ。


獣人達の怪我も大したことが無かったようでミヅキ達は改めて話をする事になった。

ゴリラの獣人がリーダーで名前をロバートさんと言うらしい。

「じゃあ改めてよろしくね、ロバートさん」

「あ、ああ…」

ロバートは戸惑いながら机に座る小さなミヅキを見つめると…後ろに立つベイカーとコジローをみた。

「なぁ…なんでこの子が座ってるんだ?話すのはお前達じゃないのか?」

ロバートが聞くと

「いや…まぁ気にするな。ここに来たのもその子のわがままなんだ、だからその子の好きなようにさせる」

「獣人の国に来たかったのか?」

ロバートがミヅキに聞くと

「そうなの、でもなかなか上手く進まないんだよね~私達はとりあえずギルドにいってあの人達を捕まえて貰って、あとは獣人の国を楽しみたいんだけど…」

「ギルドに?なら獣人のギルドが…」

ロバートがミヅキ達が来た道を指さそうとすると

「獣人のギルドには行ってきたんだよ。同じ猿さんのギルマスでしょ?」

「ああ、会ったのか?」

「うん、でもねこの人達を裁けないって言うから人のギルドに連れててキチンと処罰してもらうの」

「そいつら何をしたんだ?」

「獣人の子供達を誘拐したんだよ」

「なに!」

ロバートが机と椅子を倒しながら立ち上がった!

「そんな奴はここに置いてけ!俺が直々に処罰してやる!」

「ねぇ…誘拐された子達はどうしたの?」

話を聞いていた女性の獣人が声をかけてきた。

「大丈夫、みんな無事にここに帰ってきてるよ。みんなとはさっき別れたんだよね」

「そう…よかった」

ほっと胸を撫で下ろすと女性達に笑顔が戻る。

「そうか…お前達が獣人の子供を助けてくれたんだな…それなのに襲って悪かった!」

ロバートが頭を下げると後ろでは獣人達が同じように頭を下げていた。

「子供を助けるなんて当たり前でしょ?そんな事でお礼言われてもねぇ」

ミヅキがベイカーさんとコジローさんを見ると

「まぁそうだな、最近は俺達の周りは普通のやつがいないからなぁ…もう獣人とか関係ないよな」

「そうですね、俺も分類で言えば獣人よりですからね」

コジローが笑うと

「なんか…来た時から思ってたが、変わった奴らだな」

ロバートは目の前の変な人間達を見つめた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

継母の心得 〜 番外編 〜

トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。 【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです 無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す! 無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。