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10章

560.朝

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オリビアが部屋に戻ってしまい、唖然と扉を見つめる。

「なんだありゃ?」

眉をひそめて首を傾げるがよくわからずに思考を放棄した。

「まぁいいや、ミヅキの様子を確認したら俺も休もう…」

そっと部屋に入ると大きなベッドにはもう既にシルバが横になっていた…

どうやったのかミヅキを起こすことなく隣を陣取って、シンクもミヅキの頭の近くに…プルシアも小さくなって足元に寝っ転がっていた。

ベッドに近づくと…

「なっ!…」

ミヅキの気持ちよさそうに寝る隣には険しい顔を隠して眠るコジローとその二人を包み込む様にエヴァさんがいた…

「そういやここに寝かせたんだっけ」

コジローをどかそうと思うがミヅキがそばにいて起こさずに退かせる自信がない…

どうしようかと迷っていると…

「うん…」

エヴァさんが目を覚ました。

「ああ…おかえり。大丈夫だったか?」

ベイカーの姿にエヴァが声をかける。

エヴァさんが起き上がるとその姿にベイカーが焦った様子で目を逸らした。

「エ、エヴァさん!ふ、服をちゃんと着てくれ!」

なるべく小さい声で言うと

「おお?すまん…」

薄い服を被るだけの姿のエヴァさんに困惑する。

「エヴァさんの部屋は向こうに用意してあるから移動してくれていいぞ。シルバ達が帰ってきたし狭いだろ」

「そうだな、そうさせて貰う」

エヴァさんは眠そうに欠伸をすると…ミヅキの髪をサラッと撫でておやすみと挨拶をして部屋を出ていった。

ベイカーはほっとしてコジローを見るが騒ぎにもコジロー達が目覚める気配はない。

ベイカーは諦めてコジローをそのままにする事にした。

「シルバ達もいるし、コジローに限って何かするなんてないもんな」

ベイカーは肌蹴た毛布をミヅキとコジローにかけてやると笑って部屋を出ていった。


(うぅぅ…頭が…)

コジローは猛烈な頭の痛みで朝を迎えた。

頭を抑えて目をぎゅっと握るとふっと体に柔らかい感触が触れる…

自分の家にこんなふわふわの感触の物があった記憶がない…

コジローは痛みに耐えながら目を開くと目の前にはふわふわの黒髪が目に入った。

いい香りがするそれはずっと触れていたくなる様な触り心地だった、視線を下にずらしていくと…

「なっ!」

ミヅキ…

目の前には気持ちよさそうに眠っているミヅキが自分の服をギュッと掴んでいた。

えっ?はっ…いや…えっ?

慌てて周りを確認する。

ここは、昨日見せてもらったミヅキの部屋?

「えっ…なんで…」

【小僧うるさいぞ、ミヅキが起きてしまう】

コジローの呟きにシルバが声をかけた。

コジローが横を見ると…

【シルバさん!】

あろう事かシルバを枕にして寝ていたようだった…

【す、すみません!俺なんでここに?】

【なんか知らんが昨日潰れてここに寝かされていたぞ、まぁミヅキが嬉しそうだからな特別許してやる】

【ありがとう…ございます…】

コジローはそっとベッドから降りようとするが…

「うーん…」

ミヅキがモゾモゾと動いてさらに近づいてくる。

【シ、シルバさん!ミヅキが!】

コジローが触ってませんと手を上にあげると

【じっとしてろ、ミヅキが寝てる】

シルバはクカァ~と欠伸をすると目を閉じてしまった…

コジローは手を上げて固まったまま、ミヅキが起きるまで息を止めていた…



「コジローさん大丈夫?」

苦しそうに息をしているコジローをミヅキが心配そうに背中をさする。

朝、目が覚めると目の前でコジローさんが真っ青な顔をして死にそうになっていた…一気に目が覚めてコジローさんを揺すると

「ミ…ヅキ、お…はよ…」

かろうじておはようと挨拶をするとバタンと倒れてしまった!

急いで回復魔法をかけてやり、今の状況になっていた。

「なんで息止めてたの?」

「いや、何となくな…でもおかげで30分は息が止められる様になったよ」

「すごいね!それなら水遁の術とかできそう」

「ミヅキが見たいなら取得してみる。どんな技なんだ?」

「えっと、水の上を走ったり、水の中で身を潜めたり、水を操って敵を倒したりかな!」

「うん…まぁ出来そうだな」

コジローさんが頷くと

「本当に!出来たらこんど見せてね!」

ミヅキのキラキラした期待する笑顔にコジローは嬉しそうに頷いた。

ミヅキの支度を手伝って部屋を出るとちょうどベイカーとオリビアも部屋から出てきた。

「みんなおはよぉー!」

ミヅキが挨拶をすると

「おお、おはよう。朝から元気だな」

ベイカーさんが眠そうに笑って挨拶をかえす。

「ミヅキ、おはよう」

オリビアが恥ずかしそうに挨拶をすると

「オリビアよく寝れた?」

ミヅキが笑いながら近づくと

「はい、凄く寝心地良くて…いい夢が見れました」

ニコッと微笑んだ。

「なら良かった」

「コジローはどうだ?大丈夫か?」

ベイカーがニヤッと笑ってコジローに話しかけると

「すみません、なんかご迷惑おかけして…」

申し訳なさそうに謝ると

「お前、酒は程々にしておけよ」

いつもの素直なコジローにベイカーは苦笑して肩を叩いた。

「えっ?なんですか?酒?」

コジローが聞き返すと

「昨晩の事なんか覚えているか?」

「昨晩…えっと確かみんなでご飯食べて…あれ?」

コジローが頭を押さえる。

「記憶が…」

「そうか…まぁ大丈夫、そんなに悪い事はしてないから。でも他の人のところでするのはやめとけよ」

「はい、だからミヅキのベッドで寝てたんだな…悪かったな」

コジローがミヅキに謝ると

「大丈夫だよ!また潰れちゃっていつでもベッド貸してあげるよ」

ミヅキが笑顔で答えると

「また…」

コジローが先程の事を思い出す。

「俺…お酒は控えます…」

コジローはしっかりと頷いた…


二日酔い気味のコジローさんの為に朝は軽めにお粥を作ることにした。

「ミヅキ…私も何か手伝える?」

オリビアが伺うように聞くと

「オリビアはお客さんだからゆっくりしてていいんだよ?」

「でも、ミヅキの昨日のご飯とっても美味しかったから私も近くで見ていたい」

オリビアの可愛いお願いにミヅキはすぐに了承した。

「じゃあまずはお米を洗うよ」

「おこめ…」

ミヅキがサラサラのお米を取り出すと

「稲から取れる穀物だよ。炊くと美味しいの」

「ああ、稲ですね」

オリビアが頷く。

「まずはこれを水で洗います」

「こうですか?」

オリビアが不器用にバシャバシャと零しながら洗うと…

「オリビア!もっと優しくね。こぼれてるよ」

笑って零れた米を拾って戻していく。

「優しく…」

「そうだよ~これを食べて欲しい人を思い浮かべながら、食べたらどんな笑顔見せてくれるかなぁって考えながらね」

ニコッとオリビアの顔を覗き込むと…

「やってみます」

オリビアは優しくお米を研ぎ出した。

「うわ!すごい上手!オリビアはセンスあるかもね!」

ミヅキに褒められてオリビアは頬を染めた。

「料理、楽しいです」

オリビアがミヅキをみると

「うん、料理好きになってくれて嬉しいけど…まだ洗っただけだからね。料理はこれからだよ」

ミヅキは笑って鍋の用意をした。
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