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10章

525.魔物の謎

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「あ、あれ?おい!閉じ込めておいた魔物達はどうしたんだ」

エルフ達が慌て出す…セバス達の町に行く前に防壁で大量の魔物を閉じ込めておいたはずなのにそれがきれいさっぱり消えていた…

「こいつらに力の差を見せる為に用意しておいたのに…」

エルフ達は場所を間違えたのかと首を傾げると…

「いや…ここで間違いない。微かだが魔力が残っている」

オリビア様が外に出て地面に触る。

「私の防壁を壊した奴がいたようだな…」

オリビアの言葉にエルフ達がどよめく!

「まさか!オリビア様の防壁を壊せる者などエルフのなかにも数える程しかおりませんよ!」

「まぁ力を合わせたのかもしれないな、数名の魔力の形跡を感じるから」

「そ、それでもやはり信じられません」

「信じられなくともここにあれが無いのは事実だ。誰かがまたは何かが破壊したのだろう」

オリビア様が言うと…

「一体何があったのですか?」

セバスが狼狽えるエルフ達に声をかけた。

「ここに巨大な防壁を張ってその中に様々な大量の魔物を閉じ込めておいたのだ。それを目の前で全て破壊するのを見せてやろうと思ってな」

オリビア様が可笑しそうにクックッと笑うと

「それは…」

(くだらない…)

セバスが言葉を飲み込む。

「んんんー!んんんん」

(ベイカー!聞いたか)

(ああ!)

ベイカーが頷く。

エルフ達の話を聞いて、ベイカー達はあの閉じ込められていた魔物達の謎がわかった。

(あの防壁を破壊したのはミヅキなんだよな…しかも中の魔物もシルバ達がほぼ殲滅させちまったし…)

ベイカーは大人しくしながら話をしているオリビアとセバスを見ていると…セバスがふとこちらを見た。

思わず目をそらすと…

「まさか…」

セバスがボソッとつぶやく

「何か言ったか?」

オリビアがセバスを見ると

「いえ…そういえば最近ここは魔力の高い魔物も現れますから、それが大群で襲ってきたのかもしれませんね…」

セバスが適当に説明すると

「ふーん…ここにはそんな強い魔物がいるのか?少し興味深いな…」

オリビアが周りを確認して来ると少し離れると…セバスがベイカー達の馬車へとそっと近づく。

「もしかして…これはミヅキさん達が?」

コソッと声をかけるとベイカーがコクンと頷く。

「はぁ…まぁエルフ達からミヅキさんを隠せて良かったのか…」

セバスさんはエルフ達に見えないようにため息をついた。

オリビア様が一通り周りを確認をして満足するともうここにはようは無いと馬車を走らせる。

「それで…アルフノーヴァさんに会いに王都にでも向かうのでしょうか?」

少し走り出したところで聞いてみると

「いや、お前達にはエルフの国に来てもらう」

オリビアがニコッと笑うと

「エルフの国に…それは困ります」

セバスはてっきり王都にでも向かうと思っていた。

「アルフノーヴァ様にはどうしてもエルフの国に戻ってきて欲しい…ならアルフノーヴァ様の大切な者を連れていけばきっときてくださる」

「そんな事をすればアルフノーヴァさんが困るのでは…彼はそういう行為は嫌うと思いますが?」

セバスが言うとオリビアはキッと睨みつける。

「アルフノーヴァ様の何を知っている!人間がアルフノーヴァ様を語るな!それにエルフの国に来てくださればきっと私のした事を理解してくださる」

セバスは何を言っても無駄そうなエルフの少女を見つめ…口を噤んだ。

セバス達を乗せた馬車は森の中を突き進む…

「凄い…森の木が避けながら進んでいく…」

セバスが驚き外を眺めると

「エルフなら森の木々を操るなど容易い、さぁこのまま国に帰るぞ」

「森の中にあるのですか?」

「誰が人間にエルフの国の秘密を話すものか!どうせ見ても分からないだろうがな」

しばらく走ると大きな滝が見えてきた…

「まさかあの滝の中…なんて安直なことはありませんよね」

セバスが笑うと…

「な、なぜわかった!」

「えっ…本当に滝の中がエルフの国と繋がっているのですか…」

思わず呆れる。

「別にそこが繋がっているわけでは無いし、常に開いているわけでも無い!場所がわかったとしても国に入れるものではないからな!」

オリビアは滝に向かって手をかざすと滝の水が左右に別れた…水面を馬車が走っていくと…滝の奥へと進んでいく。

滝の裏側は洞窟になっていて真っ暗な中を進むと…

「ついた」

急に明るくなり思わず目を閉じてしまう、徐々に光に慣れて目を開くとそこは見渡す限り緑が生い茂る広大な森の中の高台にいた…

「これがエルフの国…美しい所ですね」

セバスが素直に感想を言うと

「ふふ!そうだろう、我らは森と共に育ち森の中で過ごす…それこそが本来のエルフの姿だ」

「しかし、人の国にもエルフの方はいますよ」

「あやつらは少し旅に出ているだけ…いつかは必ずここに戻ってくる…」

「なら、アルフノーヴァさんも待っていれば戻ってくるのでは?」

「うるさい!」

いちいち痛いところをついてくるセバスにオリビアはイラつく!

「こいつも閉じ込めておけ!すぐに城に戻るぞ!」

『はい!』

セバスもとうとう口を塞がれ、三人はエルフの城へと連れていかれた。

城に着くと三人は地下牢へと連れていかれる。

「ほら!ここで大人しくしておけ!」

猿ぐつわと足枷は外されるが腕は拘束されたまま牢屋へと放り投げられた!

「いた!」

「ふご!」

「全く手荒いなぁ」

ベイカーとアランは頭から地面に放り投げられ、セバスは上手く着地した…

「セバス…なんでお前だけ…」

アランが恨めしそうにセバスを睨みつける。

「それよりも困りましたね…大人しくしておけば王都にでもいって師匠と合流出来ると思っていましたが、当てが外れました」

セバスが顔を顰めると

「どうする?」

アランも困ったと腕を組もうとしてガチッと手が縛られていたことに気がつく。

「こいつも切れねぇしなぁ…」

アランがグッと腕に力を込める。するとベイカーが言いにくそうに口を開いた…

「実は…アルフノーヴァさんなんだが…」

複雑な気持ちで二人を見ると…ミヅキがアルフノーヴァを呼びに王都に向かった事を伝える。

「師匠は…きっと来ますね…あのエルフの王女様もどうにかこの国に連れてきたい様子でした、しかし師匠が来るとなると…」

「ミヅキも来るよな…」

「止めても来るだろ」

「ですよね…」

「「「何もしでかさなきゃいいが…」」」

三人は声を合わせてため息をついた。
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