ほっといて下さい 従魔とチートライフ楽しみたい!

三園 七詩

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9章

493.黒猫亭

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セバスさんとディムロスじいちゃんにディアナ以外の姿は極力しないように念を押されると…

「可愛くないから?」

二人の様子に心配になる…

「いえ、逆ですね可愛すぎるので…」

真剣な顔で言われて照れる…

「そ、そうですか…」

私の恥ずかしがっている姿にお構いなしにセバスさんは続ける。

「いずれ成長してその姿になってしまうとは思いますが…今はそのままの姿でいてくださいね」

小さい私を抱き上げると困った様に眉を下げてお願いされる。

そんな顔をされたら…

「わかりました…」

うんと頷くしかなかった。

私の返事にセバスさんは満足そうに頷くと

「では今夜はミヅキさんは何処で休みになりますか?」

「えっ…それはベイカーさんの家へ…」

もうみんなが向かっているはずの家を思い出すと

「今はデボットさんやレアルさん達もいますから手狭になりますよね、よかったら私の家に来ませんか?」

セバスが言うと

「ちょっと待て!セバスは昨日ミヅキといたんだろ?今夜はじいちゃんと一緒に寝ないか?」

ギルマスがニコッと笑いかける。

確かに昨日はセバスさんと寝てドキドキしっぱなしだった…今夜は…私はじいちゃんを見ると

「うん!じいちゃんと寝る!」

私の答えにセバスさんがガックリと肩を落とす…

ごめんなさい…セバスさん家はまた今度で…

じいちゃん達が仕事を片ずけるのを待ってギルドをでると

「ではまた明日…」

セバスさんが寂しそうに手を振る…その姿に私はじいちゃんを見ると…

「ねぇじいちゃん…セバスさんも一緒に帰るのは駄目なの?」

じいちゃんの服をクイッと引っ張って上目遣いに見上げると…

「しょ、しょうがないのぉ…セバス、ミヅキが寝るまで一緒に晩酌しないか?」

ギルマスが仕方なさそうに声をかけると

「いいのですか?」

驚いてギルマスを見ると…

「ついでに黒猫亭に行って賭けの答え合わせしよう」

ギルマスの提案にセバスはニヤリと笑うと

「それはいいですね…では私は心配するだろうからベイカーさん達に知らせて来ます。ギルマスとミヅキさんは先にお店に行ってて下さい」

「黒猫亭?」

「俺とセバスが今贔屓にしてる店なんじゃ、料理も上手いからそこで飯を食って行こうな」

「うん!楽しみ~」

外でご飯を食べるのも楽しみだ!

「わしも楽しみだわい…」

ギルマスはニヤリと笑った。

【シルバ達はどうする?】

ミヅキは当然付いてくると思いながらもシルバ達に聞くと

【ここにいればミヅキの安全は大丈夫そうだからな…俺は少し外に出て狩りでもしてくるかな】

シルバの提案にシンク達が反応する!

【僕も行きたい!ついでにここの周りの魔物の掃除もしておこうよ!】

【いいですね。寝る前のいい運動になりそうです】

【……!】

【ムー達も行くの?】

ソワソワとしているムーに話しかけると

【そのようです。私も…行ってみてもいいでしょうか?】

レムがモジモジとしながら聞いてくる。

可愛い仕草にすぐに了承してしまった。

【じゃあ気をつけてね!】

じいちゃんにシルバ達の事を言うと快く行ってこいと送り出してくれる。

私はシルバ達を見送ってじいちゃんとお店に向かうことにした。


セバスはベイカーの家に着いて扉をノックする。

「おー!開いてるぞ」

中からベイカーの声を確認して扉を開くと

「あれ?セバスさんだけか?ミヅキは?」

セバス一人の姿に顔をしかめると…

「まさか…」

「はい、ミヅキさんは今夜はギルマスの家でお休みになるそうです」

「そうなるかと思ってたよ…」

「その前に町の店でご飯食べますがベイカーさん達はどうしますか?」

「行く!」

ベイカーは直ぐに答えると

「俺は遠慮しておきます。セバスさん達で楽しんできてください」

デボットが断わると

「私も今夜はここの掃除に精を出しますので」

レアルも首を振ると

「なら家は好きに使ってくれ!じゃあよろしくな!」

ベイカーはデボット達に声をかけるとセバスと家を出て行った。二人を見送ると…

「あの人達と食べるなんて…恐れ多い」

「今までミヅキのそばにいさせてもらったからなぁ…ここにいる間は俺達は遠慮しておこう」

デボットの提案にレアルはそれがいいと頷いた。


ベイカーはセバスの案内する店に向かいながらセバスから賭けの話を聞く。

「へぇーそりゃミヅキが好きそうな店だな」

「そうでしょう?いかつい見た目に反して性格も穏やかです。しかも料理も得意で美味しいのですよ」

「そりゃ楽しみだな!」

ベイカーが空腹の腹を撫でると

「セバスさーん!ベイカーさーん!」

ギルマスに抱かれたミヅキが店の前で手を振って二人を待っていた。

「先に入らなかったのですか?」

セバスが聞くと

「どうせなら反応を見たいだろうと思ってな」

「それは…ありがとうございます」

ミヅキを下ろしてそんな話をしている二人に気づかずにミヅキは店の扉を押しながら

「じいちゃんもセバスさんも早く入ろうよ~」

さっさと店に入ってしまった。

ベイカーもミヅキの押す扉を支えて中に入ると…

「い…、ら…、しゃ…い…」

(確かに…こりゃ怖がるかもな)

スキンヘッドの男が緊張からかこちらを見ながらごにょごにょと何かを言っている。

どうやらいらっしゃいと言いたいようだった。

小さい瞳の中にさらに小さい黒目が鋭く、ただ見ているだけなのかもしれないが睨みつけているように見える…ベイカーはチラッとミヅキを見下ろすと

「わぁ~雰囲気ある店だね!」

店主に気づいてないのか反応がない…

おかしいなと思いセバス達を見ると二人もミヅキの反応に肩透かしを食らっているようだった。

「あー…ファル奥の席に行くな」

ギルマスが声をかけると…

「はい、ではあちらに…」

二人ならいつも座るカウンターでわなくテーブルに案内すると…

「の、飲み物はどうしますか?」

チラッチラッと小さいミヅキを怖がらせないように気を使って喋るマスターに苦笑しながら適当に酒とつまみを頼むと

「ミヅキはどうする?」

メニューに夢中のミヅキはメニュー表から顔をあげると

「フルーツジュース!あとこの揚げポテト食べたいです!」

他にはどうしようかなと悩んでいた…

「と、とりあえずそれで…」

ギルマスが声をかけるとファルは頷いて奥へと下がって行った…

「なんか…予定と違いましたね…」

セバスがコソッとギルマスに耳打ちすると

「怖がる様子もないが、気にする様子も無いな…まさか見えてないのか?メニューに夢中で…」

「うーん…有り得るかもしれませんね…」

セバスとギルマスはミヅキに声をかけてみることにした。

「ミヅキさん…ここの店はどう思います?」

セバスが聞くと

「凄く素敵です!ここは酒場?って言うの?」

「そうですね、お酒とつまみなど置いてます」

「ふーん…お昼は?お昼もお酒飲むの?」

ミヅキが聞くと

「当たり前だろ?酒場なんだから」

「そっか…昼からもお酒飲むとか凄いなぁ…」

ブツブツとつぶやいていると

「お昼は喫茶店とかしてくれるといいのにね!そしたら女の人とか子供も入りやすいのに」

「…なるほど…それもいいですね」

「後でファルに言ってみるか?」

セバスさんが頷くと

「それはそうとあのマスターはどうだ?ミヅキ?」

「えっ?マスター?」

ミヅキがちょうど飲み物を持ってきたマスターを見つめる。

すると蛇に睨まれた蛙のようにファルさんが固まった。

「マスターが何かあるの?」

じっと見つめるがミヅキには何も感じないようだった…

「いや…怖いとか…目付き悪いとか…可愛いとか…」

ギルマスが嫌に酷いことを言うと

「えー?別にマスター普通の人ですよね?何も変わったところないけど…あっ!そうだ!もし喫茶店するならサングラスかけて欲しいなぁ~」

わけがわからないリクエストを言っている…

「こんな見た目で喫茶店しながらサングラスだと…そんなの誰も寄り付かないだろ?」

「そうかなぁ~わかる人にはたまらないと思うけど…」

ミヅキが不満そうにしていると

「君は…私の事は普通だと思うのかい?」

ファルは勇気を出して子供に声をかけてみると

「あっ!す、すみません!えっと…素敵だと思います!お店もかっこいいし店の雰囲気に合ってますね~」

気を使って答える様子に、本当に気にならないのだと思い気が抜ける…

「ふふ…確かに変わった子ですね」

ファルはセバスとディムロスに笑いかけると

「我々が思うより上をいってました…」

「まさか…なんとも思わないとは、しかも普通って…」

三人は笑いが込み上げてくる。

「いやぁ…私は自分の見た目に過敏になりすぎてたみたいです。まさか普通だと言われるとは…」

三人の交わす言葉にミヅキはわけがわからずに戸惑っていた。
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