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9章

480.ウエディングケーキ

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「まずは一番下に一番大きなスポンジをおいて、生クリームを塗りまーす!」

ドバっと生クリームを落とすと平らに広げると、ベイカーさんが切ってくれた果物を並べる。

その上からまた生クリームそして果物と、それを五段繰り返すとベイカーさん達の背丈ぐらいの大きさのウエディングケーキが出来た!

「完成!」

クリームが付いた手で鼻先を擦ると顔にクリームがついてしまったがそんな事はお構い無しに出来上がったケーキを満足そうに見上げる。

「すげぇなぁ…しかしなんでこんなデカいケーキ作ったんだ?」

ベイカーさん達もウエディングケーキを見上げると

「えっ…ウエディングケーキってそういうもんじゃないの?」

「だからウエディングケーキってもんを知らねぇよ。なんで結婚するのにケーキ食うんだよ」

「知らない…まぁいいじゃん美味しければ」

「それもそうだな」

アランさんが納得しながら

「俺はこの一番下の部分がいいなぁ…」

じっと一番大きな段のケーキを見つめる。

「そこは俺も狙ってた!」

ベイカーさんが譲らんと声をあげた!

「あのね…切り分けて食べるんだよ!ワンホール一人で食べる人なんていないよ」

【えっ!】

シルバの声に後ろを振り返ると食べれないことにガッカリしていた…

【シルバくらい大きな子ならまぁワンホールくらいいいのかな…いやでも生クリームそんなに食べさせたら良くないかも…】

うーんと悩んでいるとシルバがペロッと私の顔とクリームを舐める。

【ミヅキが食べさせてくれたら何個でも食えそうだ】

ペロリと口元を舐める。

【そ、そんなかっこいい顔したって駄目だよ…シルバがメタボになったらやだもん】

私は思わずシルバから目をそらすとシルバが回り込んで私の顔を見つめる。

【どうしても駄目か?】

コテンと顔を傾げると…

【わ、わかった!シルバ達にはあんまり甘すぎないケーキ作るからそれで我慢して】

私は負けたとばかりにシルバに抱きつくと

【別にこのケーキでいいんだぞ。俺達に食いすぎて悪いもんなんてないんだからな】

【そ、そう?】

そういえば前にそんな事言ってたなぁ…確か毒も平気みたいな…

【でもやっぱり足りなそうだし作るよ】

私は魔法を使って材料を手早く泡立てると

「お前…魔法でやればすぐなんじゃねぇか!」

私があっという間に生地を作ると手で混ぜていたアランさんが信じられんと私を見つめる。

「だってアランさんなら腕の方が早いでしょ?私だと何時間もかかっちゃうもん」

「だからって…」

「アランさんも作る大変さがわかったでしょ?」

私がにんまりと笑うと

「謀ったな!」

「楽して食べるだけなんて駄目だからね~」

私は悔しそうにしているアランさんを無視して生地を鍋に流し込みシンクに仕上げてもらった。

【あとは焼けたら同じようにトッピングすればいいね】

お砂糖控えめの生クリームもあっという間に泡立てて収納に閉まっておくと、イチカ達が用意を終えたのか広場に戻ってきた。

私は急いでウエディングケーキを収納にしまうと

「あれ?今何か大きいものがここにありませんでした?」

イチカ達がウエディングケーキがあった場所を指さすと

「気のせいだよ…ねぇ?」

私は誤魔化して!とベイカーさんを見つめる。

「い、いや…明日の料理をしまってたからだろ…もう作って明日は並べるだけにしておいたから…」

そう言うと首を傾げながらもイチカがみんなの顔をみわました。

「そ、それよりイチカは明日のバージンロードを誰と歩きたい?イチカのお父さん役になるんだけど…」

「おとうさん…?」

「うん…別に親じゃ無くていいんだよ。親代わりやお世話になった人からポルクスさんにバトンを渡す役なの」

イチカは少し考えると…

「私は…その役はデボットさんがいいです。デボットさんは兄みたいなものですから…」

恥ずかしそうにお願いするイチカが可愛すぎる!

「わかった!何がなんでもデボットさんにその役やってもらうからね」

私は急いでデボットさんの元に走っていった!


「て事でデボットさんはイチカとバージンロード歩いてね!だからレアルさん一人で大変なんだけど…」

「大丈夫ですよ。一人暇そうな人を見つけましたからその人に頼んで見ます」

「えっ…暇そうな人?ベイカーさんとアランさんはちょっと…」

頼りにしてるけどそういう事には向いてなさそうな…

「その人達には頼みませんよ」

レアルさんがさすがにそんな事はしないと苦笑する。

「だよね~、いや安心した」

私がホッとすると

「確かにあの二人は戦闘面では頼りになりますが…こういう事には向いてませんからね。人が食べてる姿をみてどっかに行ってしまいそうですから」

レアルさんの言葉に激しく同意する!

「人には向き不向きがありますから」

レアルさんは笑って暇そうな一人に話しかけに向かった。

誰に頼むのか気になった私はレアルさんと一緒に行くと

「すみません、ちょっと仕事を頼みたいのですが」

「俺っすか?」

料理作りも終わり牛を眺めていたネイトさんに話しかけた。

「なるほど、ネイトさんね」

「仕事って…料理ですか?俺まだ見習いであんまり役にたてないですけど…」

「いえ、結婚式の司会進行の補助を頼みたいのです」

「司会進行…って俺結婚式出た事ないんで分かりませんけど」

不安そうにレアルさんを見つめると

「大丈夫です。私も初めてですから知ってるのはこのミヅキだけです」

「えっ…」

ネイトさんが私を驚いた顔で見つめてくる。

「分からないことは私かミヅキに聞いて下さい」

「でも…俺よりあそこの人達の方が…」

余った果物を食べているベイカーさん達をちらっと見ると

「いえ!あなたで!」

「ネイトさんで!」

レアルさんと私がぐいっとネイトさんに近づくと…

「あの人達はいいんです!それよりもどうですか?やって頂けたら報酬は払いますよ」

「い、いえ!そんな事でお金なんて貰えないですよ」

「誰がお金って言いましたか?」

「えっじゃあ何を?」

「これです」

レアルさんが収納から紙の束を取り出すと…

「何それ?」

私がレアルさんの手元を覗き込む、ネイトさんも一緒に見ると

「あっ…それ私のレシピ集じゃん」

テリーさんやネイトさんにあげた最初のレシピのコピーだった。

「ポルクスさん達に頼んで写させてもらいました。どうですか?王都で流行ってる料理のレシピですよ?料理人なら喉から手が出るほど欲しいと思いますが…」

「やります!なんでも言ってください!」

ネイトさんはレアルさんの手をギュッと握りしめた。

「よろしくお願いします」

レアルさんは満足そうに頷くと…

「ではまずはこちらを暗記してください」

そう言ってレシピ集の三倍厚い司会進行についての紙を取り出した…

「それは…」

「先程ミヅキに説明された事をまとめておきました。これを覚えれば完璧ですから」

レアルさんがネイトさんにドサッと書類を渡すと…

「こ、これを覚える…」

ペラッと中を見ると…

ネイトさんは申し訳なさそうに

「すみません…俺今文字を覚え中で、もしかしたら読めないかも」

「それは…わかりました!これを機に覚えてください。私も分からないところはお教えしますから」

「ムツカも覚える!」

二人の話を聞いていたムツカがネイトさんに飛びついた!

「ちょうどいいですね。ムツカの勉強具合も確認しておきましょう」

レアルさんは笑って二人を連れて行った。

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