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8章

388.里VS冒険者

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ミヅキ達がほのぼのとじゃれあっている間に商人達と里の人達の間に緊迫が走る…

「おい…俺は左の方から責めるぞ…」

フードの男が一応この作戦のリーダー役の男にボソッと声をかける…

「ん?ああ…わかった…だがそんな事いって逃げるなよ…そんな事しやがったら必ず見つけ出して殺してやるからな…」

顔を見せない男をギロッと睨むと…

「わかっている…」

フードの男は目立たぬようにコハクの方へと移動した…

(ふん…あの横柄な態度で誰からも相手にされずに闇ギルドに落ちてきた奴の癖に…全く懲りて無いな…だから毎回こんな仕事ばかり回されるのに気づいていないのか…)

フードの男がチラッと雇い主の商人達を見ると…

(あいつらも最近は調子に乗り過ぎだな…最近は金蔓だった貴族達もどんどん離れていっている…ここらで切るべきかもな…)

男は冒険者達の影に隠れると…気配遮断の魔法をかけた。

(しかし…今日はいい収穫が期待できそうだ。もう絶滅したと思った天狐にお目にかかれるとは…あれには確か凄い金額で捕獲依頼がきていたはずだ)

男は笑みを抑えきれずにいた…フードから見える口元は不気味に弧を描いていた。


【あっ…あの人なんか魔法使った?】

ミヅキがフードの男から目を離さないようにじっと見ていると…

【気配遮断だな】

【あーだから視認しにくくなったんだ…やっぱりコハクを狙ってるのかな?】

【そうだろな…気味の悪い顔でコハクを見ている】

プルシアが言うと

【見て…コハクが視線を感じたんじゃない?毛が逆立ってるよ】

ミヅキがコハクを見ると確かに嫌がる時に見せるように髪と尻尾の毛が逆立っていた。

【コハク…大丈夫?】

ミヅキが思わず声をかけると…

ぴょん!

コハクの耳がピンと立った!

【ミヅキ!だいじょうぶ、いやなしせんかんじただけ!】

【無理しないでね、あのおじさんコハクから見て右の方から向かってるよ】

【みぎ?】

コハクがキョロキョロと周りを見ると…

【そっか!コハク右が分からないんだね…えっと…人型になった時にスプーンとかフォーク持つ方の手の方だよ!】

コハクが手でスプーンを持つ仕草をすると…

【みぎ!】

右手を高くあげた…

【そうそう…ってコハク目立ってる!】

コハクが慌てて手を降ろすと…それを見ていたベイカーが頭を抱えていた…。

(何しているんだ…?)

フードの男は怪しい動きを繰り返す天狐に少し距離を置いた…


「さぁいい加減にハッキリとさせようや!お前ら田舎モンが冒険者にかなうと思ってんのか?」

冒険者の男が大声で怒鳴ると…

「お前ら小物にやるもんは無い。とっととおかえり願おうか?」

長老がシッシッと手を振ると…

「このクソジジイ…奴隷にして死ぬまでこき使ってやるぞ…」

「なら俺はあの姉ちゃんがいいな…あのツンとした感じがたまらん」

ユキさんを舐めるように見つめると

「なら私はあの顔に傷がある男がいいわ…あの筋肉を…味わってみたい…」

男がポっと頬を赤くしてコジローを熱く見つめた…

「出たよ…この男食いが。まぁ捕まえたらお前の好きにすればいいさ…」

ふふっと笑うと

「こいつに目を付けられるなんてあの男も可哀想に…壊れるまで愛玩具にされるぜ」

「酷い!そんな事しないわよ!壊れないようにちゃんと愛を持って相手にするわ!」

心外だと怒っていると…コジローにウインクをした。

ゾクッ…

コジローがビクッと体に悪寒が走った…

「コジロー様?大丈夫ですか?」

ユキさんが心配そうにコジローに声をかけると…

「あ、ああ…大丈夫だ。なんか今もの凄い寒気がした…ユキも気をつけろよ」

「は、はい!」

ユキさんはコジローに心配をしてもらって嬉しそうに武器を取り出した。

「どうも意見は変わらないようですね…本当はこんな事したくはないんですよ…でも…言う事を聞いてくれないあなた方が悪いんですよ…」

ブーブル商会の商人が冒険者達に合図を送る。

「やれ」

その瞬間狙いを定めていた相手に向かって一直線に走って行った!

「やっほぉ~姉ちゃん相手をしてくれよ~」

ユキさん目掛けて行った男は…

「お姉ちゃんのその美味しそうな体に傷がつくのは嫌だなぁ~降伏してくれない?そしたら目一杯可愛がってやるぜぇ~」

ニタニタと笑うと

「お断りします」

ユキさんは短剣を構えると一瞬で男の背後を取った。

「私にはもう決めた方がいますので…あなたみたいな男には地面と抱き合っているのがお似合いよ…」

「なっ!」

男が驚いて振り向くと…そのタイミングに合わせて短剣の柄の部分を思いっきり男の顎に叩きつけた。

ゴキッ…

鈍い音がすると、男はストンッと地面に落ちていった…

「さてと…コジロー様は大丈夫かな?」

ユキさんがコジローの方を見ると、コジローは大男に迫られていた。

「あんなやつならコジロー様ならすぐね」

ユキは他の手こずって居そうな仲間はいないか見て回った。

「ふふふ…追い詰めたわ…」

コジローに迫っていた男が手をワキワキと動かしながらコジローににじり寄ると…

(なんだ…凄くこいつに触れる事に体が拒否する…)

コジローはこの男に睨まれてから鳥肌が止まらなかった。

「お前は武器は持たないのか?」

コジローが剣を構えながら聞くと

「あらぁ~声まで好みだわ…ふふっ私はこの体が武器なのこの体で相手を捕まえてギュッと抱きしめてあげるのよ」

「そうか…」

コジローは剣をしまうと…

「あら!降伏?それでもいいわよ~来て…可愛がってあげるから…」

男が手を広げてコジローを迎え入れようとすると、コジローは男の懐目掛けてダッシュした。

「キャ!」

男が嬉しそうに待っていると…コジローは一瞬で加速して肘を男の鳩尾目掛けてくりだした。

「グッフ…」

男は泡を吹いて後ろに倒れ込むと…

「お前に抱かれるなんて死んでもごめんだ」

コジローは男の腕を掴むと後ろに束ねて縛り付けた。

他の里のみんなも難なく冒険者達を叩きのめしていた。

「長老は…?」

コジローが長老を探すと…リーダー役の相手をしていた…。

「この!ジジイ!ちょこまかと!」

男が剣を振り回しているが長老はそれを涼しい顔で避けていた…

「ほっ!ほっ!ほいっ!そらどうした?腰が入ってないぞ」

長老が避けながら男の腰を軽く蹴ると

「グッ!」

バランスを崩して男が膝をつく…

「全く基礎がなってないな、足腰も弱いし…よくそれで冒険者になれたもんだ…」

長老は嘆かわしいと顔を振ると

「うるせぇぞ!ジジイ!」

男は地面に手をついたすきに土を掴んで長老目掛けて投げつけた!

「何するんじゃ!」

土が長老の顔を直撃すると…

「ぺっ!ぺっ!」

土がモロに目と口に入ってしまう。

「はっ!油断してるからだ!」

男は長老が目をつぶった隙に剣を振り返ると…

「こんな事をしないと勝てないのか…」

長老は目を瞑ったまま男の剣を紙一重で交わした。

「クソ!運の良い奴め!半分死に損ないの老いぼれジジイが!少し早めにくたばりやがれ!」

今度は避けられないように剣を横に振りかぶると…

スンッ…

衝撃も無く剣が空を切った…

「えっ?」

男が驚いていると…

「別に目が見えなくても心眼で見ればよいだけだ…なんて事は無い」

「心眼?」

男が唖然としていると…

「確かに…わしも年を取ったな。全盛期の半分の力も出せん…」

長老がふんっ!と気合いを入れた瞬間…

パラパラパラ…

男の服だけが切られて地面に落ちた…

「な…」

男が何をされたのかわからずにいると…

「うむ…やはりちと遅くなったの…」

長老が寂しそうに言うと…

「キャー!長老!何してるのよー」

里のおばちゃん達が男の裸を見て叫び声をあげた!

「ちょっと!そんな姿で!」

おばちゃん達は顔を手で覆いながらしっかりと隙間から覗いていると…

「うん、うちの旦那の方が立派ね」

「意外と筋肉はないのねぇ…もう少しお肉を食べた方がいいわよ」

「息子の小さい頃を思い出すわぁ~」

男は遠巻きにおばちゃん達に囲まれると…

「う、うわぁ~!」

前を隠しながら遠くの方へと逃げて行った…

「あら、おしりは可愛いわね!」

最後の言葉に男は二度とこの里に近づくことは無かった…。
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