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7章

323.出発

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【しかし…シルバは思った通りミヅキ命だな…】

ベイカーがシルバと並んで歩きながら話しかけると

【ベイカーだってそうだろ…あんまり執拗くすると嫌われるぞ】

【なっ!それはお前もそうだろ…】

【俺はこの素晴らしい毛並みのおかげでどれだけミヅキに近づいても嫌がられることは無い!】

シルバが自信満々に言うと

【はっ!俺だってミヅキの親代わりだぞ!嫌がられた事なんか一度も無いね】

【今はな…】

シルバがボソッと言うと…

【……や、やっぱり大きくなると嫌がるのか?】

ベイカーが急に自信をなくすと、シルバを見る…その顔は不安そうにしていた…

【俺が人の事など知るか!…まぁミヅキはそんな事しなさそうだがな…】

【だ、だよなー!あー安心した】

【だがな!お前はいつか子離れしなきゃいけないんだぞ!】

【シ、シルバだって…】

【俺は従魔なんだ…ミヅキが誰と居ようとずっと付いて行けるんだよ…】

勝ち誇ったように笑うと…ベイカーがいきなり膝を着いた…

「やばい…そんな日が来たら…軽く死ねる…」

いきなり倒れたベイカーに周りが警戒すると

「ベイカーさん!どうしました」

セバスが心配そうに近づいて来た…ベイカーはシルバとの会話を伝えると…

「全く…なんの心配をしてるんですか」

セバスが呆れると

「なんだよ!セバスさんはいいのかよ、ミヅキが離れて行っちゃっても…」

セバスをにらみつけると

「いいわけないでしょう…」

セバスが逆にベイカーを睨みつけた。

「行かせなければいいだけの事…」

ボソッと呟くと

「えっ?今なんて?」

ベイカーが聞き返すと…

「いいえ…なんとも…ほらそれよりも早くミヅキさんを連れ戻しに行きますよ、そんな心配よりもこっちをどうにかする方が先でしょうに」

セバスが王宮に向かって歩き出すと

「そ、そうだな…シルバ、行こうぜ」

【ああ…】

シルバは何も言わずにベイカーの後を追った…。



王宮ではもう既に部隊兵達が出国の準備を終えていた…。

「では、これよりサウス国へ向かう。留守の間ウエスト国をよろしく頼むぞ…」

ギルバートがレオンハルトを見る。

「はい、父上もどうかお気をつけて…」

隣ではアルフノーヴァが頷いてセバスを見た。

「セバス…頼まれていたもの出来ましたよ」

アルフノーヴァが微笑み瓶を渡す

「ありがとうございます!やはり師匠なら作れると思っていました」

セバスが喜んで受け取ると

「エヴァさんがほぼ完成させていたので作ることが出来ましたよ。彼女もミヅキさんにとってかけがえのない人なんでしょ?」

「そうだと思います」

「なら、一緒に連れて来てくださいね、私も久しぶりに彼女に会えるのを楽しみにしています」

「必ず」

セバスは頷き薬を受け取った。



「リュカさんとテオさんとイチカさんコレを」

セバスがアルフノーヴァから受け取った薬を三人に渡す。

「これは?」

リュカが薬を眺めると

「これは、ミヅキさんがかかった病気を治す薬です。この病は子供にしかかからないようなので三人に渡しておきます」

「コレでミヅキ様を治すんですね!」

イチカが大切そうに薬を抱きしめると…

「いえ…それはあなた達の分です、もしサウス国に入り少しでも体調に変化があれば飲んで下さい」

「ミヅキ様の分は…」

イチカが心配そうにすると

「それももちろん用意してありますよ」

セバスが笑って頷くと

「助けに行ったあなた達が病気にでもなったら私達がミヅキさんに怒られてしまいますからね、しっかり持っていて下さい」

「「「はい!」」」

三人は大事に収納にしまった。

王都の外に出てサウス国に向けて移動を始めると

【飛んで行けばすぐなのに…】

シルバが大勢の鈍い移動になりそうな雰囲気にうんざりすると

【いきなりドラゴンで乗り付けたら警戒されるだろうが】

ベイカーが言うと…

【じゃなんだ?ずっと走って向かうのか?】

【そうなるな…】

シルバはさらにうんざりすると

【プルシア…どうにかならんのか?】

シルバがプルシアを見ると

【そうだな…適当に誰か呼んでみるか?】

【誰を呼ぶつもりですか?】

セバスがプルシアに聞くと

【知らん、近くにいるやつが来るだろ】

そう言うと、プルシアが空に向かって雄叫びをあげた。

「ギャウー!」

突然の雄叫びに兵士達が驚いていると…

遠くから何かが飛んで来る…

「あ、あれは…」

「何頭いるんだ…」

ドンドン近づくソレは…

「ひ、飛竜?」

数十頭の飛竜が列をなして飛んできた

【こいつらに近くまで運んでもらおう】

プルシアが飛竜の方に飛んでいくと何やら話し込んでいる…

ギルバートがセバスの方に来ると…

「一体なんなんだ?」

アラン隊長やミシェル隊長も集まると…

「プルシアさんが呼んだみたいです…近くまで運んでもらうと言ってました…」

セバスが説明すると、プルシアが戻ってきた。

【交渉成立だサウス国手前まで運んでもらう】

セバスが伝えると…

「ありがたいが…どうやって…」

【ミヅキみたいに籠でも作ればいいだろう。そのくらい自分達で何とかしろ、あのでかい馬車は私が運んでやる】

ギルバートは隊長達を呼び出し急いで魔法部隊を集めると、セバス達に聞きながら乗る籠を作らせた…

「ミヅキちゃんみたいに…って言ったそうだけど…これ作るの難しいぞ…」

プルシアが持っていた籠を見本に作るが…なかなか上手く編み込めない…

どうにか兵士達が全員乗れる分の籠を作ると、皆が乗り込んだ。

【防壁は自分達で張るんだぞ】

プルシアはセバス達は背に乗せて馬車を掴むと空に飛びたった…

「しかし…飛竜を従えれるならサウス国の飛竜部隊はどうにかなりそうだな」

ベイカーが言うと

【あいつらは野生ではなく卵から育てられた奴らだろう…私の言う事を聞くとは思えん】

プルシアの言葉を伝えると…

「じゃ…流石のミヅキも懐かせるのは難しいそうだな…」

ベイカーが言うと

【いや…ミヅキなら…どうかな…】

プルシアはミヅキの優しく撫でる温かいあの手を思い出しながらサウス国を目指した…。




パチッ…

ミヅキが目を覚ますと…やっぱり見た事が無い先程の部屋…しかも扉が木で固定されている。

【これ…コハクが?】

ミヅキが不安そうに扉を示すと、コハクがコクコクと頷く。

【どうして?ベイカーさん達が入れないよ?】

コハクとムーしか居ない部屋に寂しさを覚える…

すると…カツカツ…人が近づいて来る音がしてきた。

コハクが直ぐにミヅキと扉の前に立つと威嚇する…ミヅキがコハクを抱きしめると…

ガチャ!ガチャ!

「クソ!まだ開かない…おい、聞こえてるか?お前達を傷つける気は無い…飯を持ってきたんだ…病気の具合も気になるし…出て来てくれ…」

聞いた事の無い男の人の声が扉の向こうから聞こえる…

ミヅキはどうしよう…何か言った方が…と声を出そうとすると…コハクが首を振る。

その様子にミヅキは口を抑えた。

何も返事がないと男はまだ起きていないと思ったようで…

「起きてないのか…まさか…また熱が上がって…」

そう言うと慌てたように部屋から遠ざかって行った…。

「なに…あの人?ベイカーさんは?シルバは?セバスさんは?病気って…」

ミヅキがギュッとコハクを抱きしめる。

「ここ何処…」

【シルバ…シンク…プルシア…】

【クーン…】

コハクからの心配そうな返事しか来ない…

「コハク…私…みんなの言うこと守らない悪い子だから…病気だから置いてかれちゃったの…かな?」

ミヅキが不安そうにコハクを見つめる…コハクは違う違う!と言いたいが、ミヅキは顔を埋めてしまった。

「駄目だ…って言われてるのに魔法使ったり…勝手に従魔増やしたり…ベイカーさん達呆れちゃった?ずっとそばにいたのに…なんで急にみんないなくなっちゃったの?ここは何処?病院?」

ミヅキの小さい膝が涙で濡れる

【コハクとムーはそばにいてくれる?】

コハクがミヅキの体にピタッとくっつくと…ムーはちょっと戸惑い…ミヅキの頭に乗った。

【ありがとう…ちょっと元気でた…】

ふたりを抱きしめると

「とりあえず…外の様子見た方がいいかな?さっきの人慌てて出てったみたいだもんね…」

ミヅキが立ち上がろうとベッドから降りようとすると…フラッと倒れ込む。

「あ…力が…」

やはり足に力が入らない…

「なんで?」

ミヅキが自分の足をさする、別に痛くも感覚も無いわけじゃなく…力だけが入らない。

するとコハクがミヅキを自分の背に乗せようとする。

【コハク!無理だよコハクの方が小さいんだよ】

コハクは大丈夫とばかりにミヅキを見つめる…ミヅキはそっとベッドから落ちるようにコハクに乗ると…腕でしっかりと捕まる。

コハクはミヅキが乗るのを確認すると、力強く歩き出した!

【コハク!力持ちだね!】

コハクは扉の木を退かせると…ムーが体当たりして扉を壊した!

三人は小屋から逃げるように飛び出して行った!


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