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6章

296.主役降臨

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「うるさい!お前らだけで何が出来る!こっちはまだまだ戦力を増やせるんだ!行くんだ!お前ら!」

大臣が合図を出すと…もう体がボロボロの兵士達が前に出る…

「酷い…」

ジョルダンが兵士達を見て口に手を当てる。

「あれは…みんな…国の兵士達じゃないか」

「あの黒い痣に侵された最後があの男の操り人形のようですね」

セバスさんが胸糞悪そうに顔を顰めると

「あ、あの化け物は?」

デボットがめちゃくちゃに暴れ回っている熊を指さす。

「あれは…海熊だな」

エヴァさんが答えると

「見てください!あそこに何か囚われています」

レアルが指さす先には海熊の子供がいた…

「全く…人とは愚かだなぁ…」

ククノが呆れて首を振る。

「しかし…どうにもこう多くては…」

セバス達がいる場所にどんどん兵士達が集まり取り囲まれてしまった…

「死なせないように攻撃するのが…一番大変ですね」

シルバ達も頷くと

「もういい…もういいんだ…みんなを楽にしてあげてくれ…」

ジョルダンが力なく声をはき出す…

「彼らと共に私も行こう…あなた方には悪いが…どうか彼らを休ませてあげて欲しい…」

ジョルダンが頭を下げると…

「本当によろしいのですか?」

セバスが確認する。

「構わない…」

ジョルダンが辛そうに答える…

「ふー…」

セバスがため息をつくと…

「そんな顔で言われても説得力がありませんよ…それに私達も殺せない事情がありましてね…」

セバスが他のみんなを見ると…苦笑しながら頷く…。

シルバの耳がピクッと動くと

【全く…遅いぞミヅキ!】

シルバが海に向かって雄叫びをあげると…

【ごめーん!お待たせー!】

ミヅキがリバイアサンに乗ってやって来た…。

【なんでそうなった…】

シルバが項垂れると

【知りません…】

プルシアが苦笑する。

「ミヅキさん…」

セバスさんがやっぱり…と肩を落とすと

「あいつ…何やってんだ…」

デボットさんが呆れる。

「やっぱり何かしでかしますね…」

レアルさんが諦め気味に言うと

「ミヅキ…リバイアサンまで懐かせたのか!」

エヴァさんが笑いながら感心している。

「くっくっく…ミヅキ、楽しそうだなぁ」

ククノが可笑しそうに笑っていた…。


「ベイカー!!!」

セバスさんが怒鳴り声を上げると…空気が震える…

「はい!」

ベイカーさんが急いで現れた。

「なんでこうなったのですか?」

セバスは笑みも忘れて腕を組みベイカーを睨みつけると…

「す、すみません!しかし…目をちょっと離した隙に…」

「目を離すな!」

「はい!」

「それで?契約はしてないでしょうね…」

「それはもう!もちろんです!絶対に駄目だと言い聞かせました!だけど…」

ベイカーが敬礼をしたまま話していると…

「みんなー!」

ミヅキがリバイアサンから飛び降りた!

セバスさんが慌ててミヅキをキャッチすると…

「セバスさん!みた?リバイアサンだよ!海のドラゴン!聞いたらプルシアの友達なんだって!背中に乗せてもらっちゃった!」

ミヅキが嬉しそうに頬を赤くして話し出す。

「しかもセバスさん達の事も知ってるみたいだし!なんか海の国に入ってもいいって言うから連れてきたの!」

凄い?

ミヅキがセバスさんをキラキラした目で見ると…

「クッ!……す…」

「す?」

「…凄いです…」

セバスはミヅキの頭を撫でる…

「セバスさん!それは無いだろ!」

ベイカーが抗議すると…

「うるさいですよ、ベイカーさん…いいからさっさと兵士を蹴散らして来て下さい」

ミヅキを抱き上げセバスがベイカーに命令すると…

「ミ、ミヅキ…降ろしてよ~」

アクアの悲鳴が聞こえる…

「あっ!アクアごめーん!」

ミヅキが上を見上げると…リバイアサンの背中にアクアがしがみついていた。

【しょうがないなぁ…】

シンクが羽ばたくとアクアを掴んで降ろしてくれる。

「「アクア!」」

ジョルダン王とリップル王子がアクアに駆け寄った!

「お父さん!兄さん!」

アクアがジョルダンに抱きつこうとすると…

「アクア駄目だ!」

リップルがアクアを受け止める…

「なんで?」

アクアが父親を見ると…

「その痣…」

父親にあの痣を見つける。

「お父さんまで…」

「私はもういいんだ、それより…アクア母さんに最後の挨拶をしてやってくれ…」

「お母さん?最後って?」

アクアが地面に横たわっている母親に気がつくと…

「お母さん!」

そばにいき愕然とする…優しくて綺麗な母親は顔のほとんどが痣で黒くなり…険しい顔で苦しんでいた…

「このままではあの兵士達のようになってしまう…その前に楽にしてやろう…」

ジョルダンがエリアルの手を掴むと…

「アクア!」

ミヅキがいつの間にかアクアのそばに立っていた…

「ミヅキさん!」

セバスが止めるまもなく…

「アクア!お母さんを助けるよ!」

ミヅキはアクアと手を繋ぐとそのままエリアルの手を掴んだ!

「何をしている!」

「馬鹿が!移ってしまうぞ!」

ジョルダンとリップルが止めようとしたが、二人は構わずに手を握っていた。

するとミヅキを中心にエリアルとアクアを優しい光が包んだ…

あまりの眩しさにみんなが目を瞑っていると…

「お母さん!」

アクアの嬉しそうな声にジョルダンが目を開く…徐々に光に目が慣れると、そこには泣きそうになりながらもホッとしているアクアがエリアルに抱きついていた…。

「エリアル…」

ジョルダンが恐る恐る近づくと…その顔からは痣が消え…少しやつれていたがいつもの美しいエリアルが穏やかに眠っていた…。

思わず触ろうとして躊躇すると…

「アクア…」

ミヅキがアクアに合図する…

「お父さん…手を…」

アクアが父親の手を握りしめると…ミヅキがアクアの手を握る…そのまま光に包まれると…ジョルダンの痣も消えていた。

「一体…」

「詳しい説明は後だよ、お父さん!お母さんを…」

「えっ?ああ…」

ジョルダンはエリアルを抱き上げると…

「大丈夫…体力が消耗してしまっているのだろう…ただ眠っているだけのようだ…」

「よかった…」

アクアは父親と母親に駆け寄ると我慢していた涙か溢れる。

「よがっだぁ~!よがっだよ~」

「アクア様…その泣き方はちょっと…」

後ろから声がすると…

「ジュウト!シード!?」

リップルが二人に驚くと

「何故二人が?」

「私も彼らに助けられまして…」

シードが戻った腕をさすってミヅキを見ると…

ミヅキがシーっと口に指を当てる…

シードは苦笑すると…

「アクア様は…女神の力を借りて…あの痣を消す事が出来るようになったのです…」

シードが棒読みで喋る。

「どう言う事だ?」

ジョルダンがアクアを見ると…

「海の女神に頼んで力を貸してもらったの!それにはこの子の助けも必要なんだけど…」

そう言ってミヅキを紹介する…

「私だけの力だと足りないらしくて…二人で力を合わせると…あの痣を消す事が出来るの…」

アクアがチラッとミヅキを見ると…

グッ!

ミヅキが親指を立てる!

その様子にホッとすると…

「海の女神だと…」

リップルが不審な顔でアクアとミヅキを見比べる…

「そうだよ!女神様!その証拠に…リバイアサンが私達を乗せてくれたんだよ、ねー!」

ミヅキがリバイアサンを見るとコクンと頷く。

「あのリバイアサンに乗ってしかも従えるとは…エリアルにも出来なかった事だ…」

ジョルダンがリバイアサンを見つめると

「それをアクアが?」

リップルが驚きアクアをみた…

アクアは複雑な気持ちで笑って誤魔化した…。
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