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6章

294.王

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セバスが部屋に現れると兵士達が反応した。

しかし、無表情でセバスに襲いかかると…

バシンッ!

セバスが鞭で兵士を絡め取る。

「雷撃」

鞭に絡め取られた三人に雷が落ちる…

バチンッ!

音と光が同時に鳴ると…

「ギャ!」

リップル王子か叫んだ…地面を伝って雷がリップルの所にまで伝っていったようだ、セバスは構わずに他の兵士を鞭で引っ掛け同じように雷撃を落とす。

バチンッ!

「ギャァ!や、やめろ!こっちまで痺れる」

「そんな近くにいるからですよ」

セバスは鞭を兵士達から離すと腰にしまう。

「ジョルダン王!リップル王子!無事ですか?」

マリオン大臣が王に駆け寄ると…

「マリオン、止まれ!私に触れるな…」

王が手で制止させる…

「お、王…!?」

マリオンはジョルダン王の姿に愕然とする…

「その姿は…」

リップルが顔を背ける…ジョルダン王は…黒い痣に侵されていた…。

「すみません…私が抵抗したばっかりに…」

リップルが下を向きながら謝罪する。

「子を親が守って何が悪い…お前が無事でよかった…ただ…エリアルは助けたかったが…」

そう言ってベッドに横たわるエリアルの手を持ち上げる…。

セバスがそっと覗き込むと…ベッドに横たわる女性が苦しそうにうなされながら目を瞑っていた…その顔はほとんどが黒い痣に侵食されてしまっていた…

ジョルダンが愛おしそうにエリアルの手を自分の顔に触れさせる。

「久しぶりに君に触れることが出来たのに…」

ジョルダンの顔が悲しみに染まると…

「あの…」

セバスが話しかける…

「あ、ああ…すまない…見ない顔だが助かった…雷魔法を使うなど優秀だな…マリオン新しく入った兵士かな?」

ジョルダンがマリオンを見ると…

「いえ…彼らは陸上から来た方達です…この度のブラハ大臣…ブラハの企みに巻き込んでしまいました…」

「そうか…それはすまなかった…この国の王として謝罪する」

ジョルダン王が佇まいを正すとセバスとレアルに頭を下げた。

「ジョルダン王…」

マリオンが後ろに付き一緒に頭を下げると

「彼らのおかげでここまで来られたのです…彼らは強い魔獣を従えています…」

チラッとセバスを見る…

「巻き込んでいてこんな事を頼むのはあなたがたも納得いかないかもしれないが…どうか力を貸してもらえないだろうか…私が差し出せるものならなんでも渡そう…」

ジョルダン王がセバスを見ると…

「…そうですね…ではこの国を貰っても?」

「セ、セバスさん」

レアルがセバスの発言に面を食らう。

王は少し考えると…

「この国を救って頂けるのならそれもいいかもしれない…英雄が国を継ぐ…きっと民達も納得してくれるだろう…いや…私が必ず説き伏せてみせます」

ジョルダン王が決意を持ってセバスを見つめた…

「父上…」

リップルが悔しそうに声を吐き出す…

「すまないな…お前に継がせたかったが…これが解決した暁にはリップル、お前がこの方を支えるんだ…」

「…はい」

リップルは父親の顔を見つめると、ジョルダンは頷き返した。

「ではこれで力を貸して頂けるんですね」

「…そうですね。ではこれからは私の指示に従っていただきます」

ジョルダン王達が頷く

「まずは皆さんで移動です。広場に向かいましょう、そこで仲間達が戦っているはずですからね」

セバスが動き出すと…

「エリアル…妻もか?」

「そうですね…連れてきて頂けると助かります」

ジョルダンが顔を顰めると…

「大変な状況なのはわかりますが…彼女為にもあなたの為にも絶対に連れてきて下さい」

「…王の命令だ、従おう」

ジョルダンが頭を下げると

「助かります」

セバスは困った様に笑った。


セバスとレアルが先に歩き、少し後ろからジョルダンがエリアルを抱きかかえ、マリオンとリップルが触らないように付き従って付いて来ていた。

「セバスさん…ここの王になるつもりですか?」

レアルがコソッとセバスに話しかけると

「えっ…そんな訳ないですよ。今のは私の言う事を聞いてもらう為と何処までの覚悟があるか見極める為ですよ」

セバスが笑って言うと、レアルがホッと息をはいた…

「そうですよね、セバスさんがミヅキをおいて行くなんて…」

「ふふふ…ミヅキさんがここに残りたがるなら…王になるのも悪くないかも知れませんね」

レアルはギョッとしてセバスを見つめるが…その表情からは冗談か本気かは…わからなかった…。


その頃広場に着いたシルバとプルシアはところ構わず広場を破壊していた。

【久しぶりに暴れるのは楽しいな!】

【シルバ、真面目にやらないと人を傷つけるぞ!】

プルシアが向かってくる黒い痣の兵士に軽く魔法を当てて気絶させて行く…

【ちょっと交代してくれないか?】

プルシアが言うと…

【いや!俺はそういうちょこまかとした制御は苦手だ!見ただろ?さっきの向かってきた男がどうなったか…】

【確かに…辛うじて生きてる様ですけどね…】

【あれがベイカー達ならもう少し耐えるんだがなぁ…】

【彼らと一緒にするのは可哀想ですよ…】

余裕を持って対応していた二人だったが…



【一体…何処まで湧いてくるんだ…】

やってもやっても向かってくる奴らに嫌気が指してくる…

【殺せば一発で終わるが…気絶させても直ぐに起き上がってくるな…】

【どこかで指揮をとり操ってる人がいるはずです…】

プルシアが注意深く周りを見ると…

【あそこが怪しいですね…】

プルシアが兵士達が守っている一角を見つめる。

シルバが斬撃を飛ばすと建物が崩れ、中から兵士達が現れた。

【なんだ?何をしてるんだ?】

シルバが遠くから見つめると

「治ったぞ!さっさといけ!」

どうやら治癒士が軽く治して兵士をどんどん送り出しているようだった。

【あいつなんて…足が曲がって着いてるぞ…】

【うわぁ…気持ち悪いな…腕が逆向いてる】

【酷いもんですね…使い捨て感覚なんでしょうか?】

【うーん…やりすぎると…後でミヅキが怒りそうだな…】

シルバが唸ると…

【そうですね。あんなの見たら…ミヅキはさすがに治しませんよね?】

プルシアがシルバを見ると…

フルフルと顔を振る…

【ミヅキは治す…駄目だって言っても勝手に治す…】

【それは困りました…これ以上やるとミヅキの負担が増えるばかりです。あの人達はまだですかね…】

【こんだけ引き付けてるんだ…少し様子を見ていよう…】

シルバが高い建物の上に飛び乗ると

【賛成です】

プルシアもシルバの隣に座った。


それを見ていた男達は…

「ようやく諦めたか…」

攻撃が止んだ事にホッ胸を撫で下ろす…

「これ以上はこっちが持たん…全くあの男無理を言ってくれる…」

「あの男とは私の事ですか?」

治癒士が後ろを振り返ると、ブラハが男を睨みつける…

「あっ!いや!その…」

「やれ…」

ブラハが兵士に合図をすると…

「まっ!待ってください!二度と歯向かいませんから!」

男達に捕まれ必死に抵抗すると…

「もう遅いですよ、ほら触れられたし」

男の顔がサーっと血の気が引く…

「遅かれ早かれ感染するんです…なら早い方がいいでしょう?」

そう言うと黒い塊を口にほおり込む…

治癒士の男がのたうち回る様を見ていると…

「しかし厄介だな…あの魔獣達があんなに強いとは…だが、こちらにもあれがいる…」

ブラハはくっくっくと笑いが止まらなかった…。
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