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6章

291.混沌

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部屋でウロウロとアクアが戻るのを待っていると…

ドンドン!

扉を強くノックされる。

やっと戻って来たか!

リップルが扉を開けると…

「リップル王子!大変です!ブラハ大臣が陸上の者達を牢屋に連れて行きました!」

陸上の者達を見張っていた兵士が慌てた様子で駆け込んで来た。

「な、なんでそんな事に?私が行くまで待たせていたはずだぞ!」

「それが…止める間もなく無理やり…」

兵士が頭を項垂れると…

「クソ…アクアもいない、ジュウトもいない、シードもいない…父上は!?」

「それが…姿を誰も見ていません…」

「なんだって…?いったい何がどうなってるんだ…」

兵士が不安そうにリップル王子を見ていると…

「とりあえずブラハ大臣の元に向かう!陸上の者達にこれ以上無礼な態度を取るのは…不味い…」

兵士にブラハの元に案内させると

「ブラハ大臣!何故勝手に陸上の者を牢屋に入れた!」

扉を開けるなり開口一番にそう言うと…

「リップル王子…あなたこそ何故陸上の者を勝手に城に招き入れた!」

「そうだ!」

「元凶を入れるなんて!」

大臣の取り巻き達が声をあげる。

「まだ決まった訳では無い!それに父上からは明後日まで手出し無用と言われているだろう!」

「ええ…勿論です!ですから明後日の答えが出るまで牢屋で待っていてもらうだけです!」

「父上…王はなんと言ってる?」

「王もご納得いただけました」

大臣が胸を張って答えると…

「王に直接聞く!何処にいる?」

「王妃様の所じゃないですか?最近はずっとそこにいらっしゃる…国よりも一人の女の方が気になる様子ですよ…」

大臣が馬鹿にする様に鼻で笑う。

「ブラハ…態度がすぎるぞ…」

リップルが大臣を睨むと…

「ふん…申し訳ございません…」

王子に頭を下げた…

「王の元に案内しろ!」

近くの兵士に声をかけると…

「…こちらです…」

兵士が地下へと続く階段へと案内した…

リップルが兵士達と階段を降りていくと…

「忌々しい王子だ…まだ青二才の癖に…」

大臣は地下への階段を睨みつける。

「お前達…後は頼むぞ」

『はい…』

黒いフードの男達音もなく現れるとリップル王子の後を追って階段を降りて行った…

「か、彼らはなんだ?」

他の大臣達がフードの男達を不審に思い聞くと…

「最近手に入れた兵士です…なぁに大丈夫ちょっと大人しく用事が住むまで親子で地下に入っていてもらうだけですから…」

ブラハ大臣の不敵な笑みに…

「ブラハ大臣?」

大臣達が後ずさりすると…

「おっと…ここまで一緒にやってきてその態度はないんじゃないですか?」

「いや…私は陸上に不満があるだけだ…王にそれをわかって貰いたいだけだ!」

「そ、そうです」

「ブラハ大臣やりすぎでは…」

他の大臣達が窘めると…

「はぁ…やはり君たちじゃ力不足か…おい」

ブラハ大臣が声をかけると…フードの男達がさらに現れ大臣達を羽交い締めにする…

「な、何をする!ブラハ大臣これはどういう事だ!」

「どうもこうも最初からこのつもりですよ?私はこの海の国を支配し操って陸上に攻め込む…そして陸上の国も我らの手に…いや…あの方に差し出す為に…」

「ブラハ…」

「貴様…騙したな」

「王…我らはなんて事を…」

大臣達がブラハを睨みつけると…

「勝手に勘違いしたのはあなた達でしょう?私は自分で見た事聞いた事した事を話しただけですから…」

「何!では…あの黒魚は…」

「ええ、私が連れてきて海の国に離し暴れさせました…王妃と兵士だけで食い止められるとは誤算でしたが…ちゃんと感染が広がったようで安心しましたよ」

「王妃…」

大臣達が悔しそうに下を向く…

「それをあなた達は疑いもせずに私の言葉を信じて…まぁ…ちゃんと芝居は打ちましたが…」

「では…あの黒魚を放ったのは陸上の者達では無かったのか…我らは…なんと…」

「放ったのは陸上の者で間違いありませんよ…まぁ…こちらで用意した偽物ですけどね…」

ブラハがニヤリと笑う。

「苦労しましたよ…何人もの奴らに不審な陸上の者達を見せなければなりませんでしたからね…しかし…リップル王子に見せた事で皆が一気に信じてくれました…」

「……」

大臣達は言葉もなく膝を着く…

「ではネタばらしはこの辺にして…事が終わるまであなた達も牢屋で休んでいて下さい、全部終われば仲間にして差し上げますからね…」

「だ、誰が仲間になるものか!」

「そうだ!どこまで我らを馬鹿にする!」

大臣達が声を荒らげると…

「ふふふ…その態度、何時まで持ちますかね?」

ブラハがフードの男達に合図をすると…男達がフードを取る。

その顔を見た大臣達は…

「お前達…」

「生きていたのか?」

そこには黒い痣に侵され動けなくなっていた兵士達の姿だった…

兵士達は大臣達に触れると…

「グッァ!」

兵士に凄い力で腕を掴まれる…

「な、何をする!」

腕を掴まれた大臣が暴れるがびくともしない…固定され腕をナイフで傷つけられると…そこに黒い何かを入れられる…

「やめろ!やめてくれー!」

大臣が暴れるがなすすべもなく押さえつけられる…

「何を入れた!」

「黒魚の一部ですよ…それでそこの兵士達と同じようになれますよ…」

「なんだって…」

傷つけられた大臣が愕然とすると…傷口がみるみるうちに黒くなる…

「やはり直接入れた方が感染が早いですね…」

「どう…いう…事…だ…」

傷口が痛みだし、声も絶え絶えに聞くと…

「勿論感染者に触れれば黒い痣が移りますが…それでは遅い、直接入れる方が手っ取り早いんですよ!後で兵士達の皆さんも海の民も残らず感染させてあげますから…」

「く…そや…ろう…」

大臣がバタッ…と倒れた…

「一緒に詰め込んでおけ…残りの方はまた後で…」

ブラハ大臣は高らかに笑うと部屋を出ていった…

元兵士達は愕然とする大臣達を牢屋へと連れて行った…。



【おっ…誰か来るな?】

シルバが足音に気がつくと…

「まだ誰か入れるつもりですかね?」

セバスも足音に気が付き牢屋の外を覗き込む、そこには兵士に連れられて先程まで息巻いてた大臣達がいた。

「これは…」

大臣達はセバス達の隣の牢屋に入れられた。

兵士達は大臣達を牢屋にぶち込むと無言で元来た道を戻って行った…。

「…陸上の者達よ…」

大臣の一人が声をかける…セバス達は何も答えずにいると…

「すまなかった…我々海の事情に巻き込んでしまって…この様な謝罪で許される事では無いが…どうか国からとして謝らせて欲しい…」

姿は見えず声だけだが…大臣達が動く音がすると

「申し訳なかった…」

『申し訳ありません…』

ゴンッ!

何が一斉に床に付く音が響く…

「何があったのですか?」

セバスが口を開くと、大臣がブラハの企みを話した…

「我らはまんまと騙された…」

「元から陸にいい印象を持っていなかったから…いや…言い訳だな…すまない」

大臣達の話を聞いて…

「それで?その何か埋め込まれた方はどうなってますか?」

「今は…気を失っているが…苦しそうだ…まぁ我らもあと少しでこうなるが…」

「そうですか…それで王と王子は地下へいるんですね?」

「王妃様が人目に触れない様にと地下の部屋に篭っていて…多分そこに閉じ込められていると思います」

「では…とりあえず王に会いますか?」

セバスが散歩にでも行くように声をかけた…
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