上 下
29 / 125

29

しおりを挟む
「今日も赤鬼の旦那の料理は赤一色だな…」

「たまには辛くないもんが食いたい…」

「言うな!聞かれたら3倍辛くされるぞ!」

食堂でいつものメニューを食べながらコソコソと愚痴を言い合っていると…食堂の扉からなかなか見ない人物が顔を出した…。

「あれは?ブラッド様?」

この城の魔王のルシファー様の右腕のブラッド様が食堂に現れた…。

皆が食事を止めて立ち上がろうとすると…

そのままでいいと手で静止される。

不思議に思いながらも席にまた座ると…ブラッド様の後ろから小さい影が顔を出した…。

その容姿は人間に見える…。

しかし…魔族の国に来る人間など数える程しかいない…迷い込むか…契約して奴隷となる人間くらいだろうか…。

その人間もその1人かと皆が思い、ブラッド様に話しかけると…

「美味そうだな…」 

人間好きの1人がヨダレを垂らしそうになった途端に…ブラッド様から殺気が飛んでくる…。

あまりの恐ろしさに直接向けられた奴はすぐ様に気を失った…。

周りにいる奴らもとばっちりで震えがとま無い…

一体何が気に触ったのか…

元々ブラッド様は感情をあまり出さない…笑った顔など見せずにいつも冷淡な顔しているはずが…

走り出そうとした人間に優しい顔を見せる…!

なんだ!あの顔は!

俺達は恐ろしさのあまりに気を失ってしまった…。



あの日もいつもの様に辛い料理を提供して食堂を片付けていりと何やら外がさわざしくなる…背筋が寒くなる殺気が飛んで来たかと思い顔を出すと、ブラッド様が食堂に顔を出していた。

なんの様かと聞くと、

隣にいる人間の小娘が俺を見て鬼だと呼び捨てにしやがる!

カチンと来て睨みつけるると、すぐさまに謝ってきた…またむかっ腹が立っていた…がブラッド様から耳打ちされる言葉にそんな思いが吹き飛ぶ…。

その内容は耳を疑うような話だった…

(この小娘が…ルシファー様の客人?しかもブラッド様も目にかけているような言いようだ…)

信じられんが…このブラッド様から感じるビリビリとした漏れ出ている殺気が嘘では無いと脳に知らせる。

そうとは知らずに先程の態度は…そう考えるとみるみると血の気が引いていく…。

すると当の本人はなんのことやらわかっていない様子で自分の心配をしてくる始末…。

思わず

「い、いえ!大丈夫ですよ!ところでお嬢様は何か御用が?」

人間の小娘をお嬢様呼びなどと癪に障るがそうも言っていられない…

俺が態度を改めるとブラッド様の殺気が和らぐ…

しかし娘はお嬢様呼びなどしなくていいと言う、気になりブラッド様をチラッと見ると…面白く無さそうに顔を歪める。

(あっ…これは逆らわない方がいい顔だな…)

しかし娘はブラッド様を呼び捨てにして…しかも自分の意見を通そうとする…

(ふっ…自分で墓穴を掘りやがった!)

この時は確かにそう思った…この後にブラッド様が冷淡に怒りこの小娘を殺すのだと思ったが…全く真逆の事が起きた…。

「リリアナがそう言うなら…」

ブラッド様が娘の意見を優先したのだ!

こんな事が起きるものか!俺は夢を見ているのか?
あまりの出来事に思わず娘とブラッド様を交互に不躾に見てしまった…。

優しそうな顔で娘を見つめるブラッド様を見ると見てはいけないものを見てしまった気分になり…意識が遠くなる…このまま倒れ込めれば楽だろうと思っていると肩に激痛が走った!

「ぎゃー!」

叫んで肩をさすると…みんな倒れ込みやがってと不満そうな顔をしている…

(そりゃあブラッド様のあんな姿をみりゃ誰だって気絶するわ!笑った顔なんて初めて見た…)

娘は俺達の様子に気分が悪いと思いこみまた今度ゆっくり来るという…

(また…来るのか?)

俺は赤鬼…この魔族の城の料理長だ…だがこの日から俺の平穏な生活は終わりを告げた…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語

瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。 長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH! 途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!

[R18] 18禁ゲームの世界に御招待! 王子とヤらなきゃゲームが進まない。そんなのお断りします。

ピエール
恋愛
R18 がっつりエロです。ご注意下さい えーー!! 転生したら、いきなり推しと リアルセッ○スの真っ最中!!! ここって、もしかしたら??? 18禁PCゲーム ラブキャッスル[愛と欲望の宮廷]の世界 私って悪役令嬢のカトリーヌに転生しちゃってるの??? カトリーヌって•••、あの、淫乱の••• マズイ、非常にマズイ、貞操の危機だ!!! 私、確か、彼氏とドライブ中に事故に遭い•••• 異世界転生って事は、絶対彼氏も転生しているはず! だって[ラノベ]ではそれがお約束! 彼を探して、一緒に こんな世界から逃げ出してやる! カトリーヌの身体に、男達のイヤラシイ魔の手が伸びる。 果たして、主人公は、数々のエロイベントを乗り切る事が出来るのか? ゲームはエンディングを迎える事が出来るのか? そして、彼氏の行方は••• 攻略対象別 オムニバスエロです。 完結しておりますので最後までお楽しみいただけます。 (攻略対象に変態もいます。ご注意下さい)   

【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。

三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。 それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。 頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。 短編恋愛になってます。

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

R18、アブナイ異世界ライフ

くるくる
恋愛
 気が付けば異世界。しかもそこはハードな18禁乙女ゲームソックリなのだ。獣人と魔人ばかりの異世界にハーフとして転生した主人公。覚悟を決め、ここで幸せになってやる!と意気込む。そんな彼女の異世界ライフ。  主人公ご都合主義。主人公は誰にでも優しいイイ子ちゃんではありません。前向きだが少々気が強く、ドライな所もある女です。  もう1つの作品にちょいと行き詰まり、気の向くまま書いているのでおかしな箇所があるかと思いますがご容赦ください。  ※複数プレイ、過激な性描写あり、注意されたし。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。

sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。 気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。 ※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。 !直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。 ※小説家になろうさんでも投稿しています。

処理中です...