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好きな人
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次の日から私達は中庭でお昼を食べるのも止めた。
帰りは4人で……みんな気を使って色々と楽しい話をしてくれるが、どうも気分が乗らなかった。
そんな時、渡辺くんから久しぶりにメールが届く。
内容は私の心をさらに締め付けるものだった。
『聖也が今度土曜日に遊びに行かないかって言ってるけど、都合どうですか?』
聖也くん、あの時なら飛んで喜んだが今はそんな気になれない。
しかしみんなは違う出会いもあるよと気晴らしに楽しんでこいと背中を押した。
「そう、だね」
昔憧れていた聖也くんとデートだ。なかなかできるもんじゃない。
それに……また好きになれるかも……
私は自分の気持ちを騙してOKの返事を送った。
当日、朝起きてからも憂鬱だった。
集合は駅前に10時、何を着てこうかと悩みそうだが服は目に付いたものにすぐに決めた。
髪もいつも通りセットして家をでる。
駅までの足取りが重く感じた。
駅には10分前に到着した、携帯をいじりながら待っていると渡辺くんちの子猫の画像が出てきた。
「ふっかわいい……」
でもこれも消さないとかな……
デート前なのに気持ちは暗くなるばかりだった。
そして約束の時間になっても聖也くんは来ない。
遅刻か……渡辺くんは一度も遅刻なんてしなかったな。
思うのは渡辺くんとの思い出ばかりだった。
5分が過ぎた頃こちらに走ってくる人が現れてみんなが慌てて道を開ける。
誰だろうと思っていると……
「渡辺くん……」
はぁはぁと息を切らして渡辺くんが私の目の前で止まった。
「ま、真夜……ごめん。聖也来れなく、なって」
息を切らしながらそう伝えてきた。
「そう……なら帰るね」
私は渡辺くんといるのが辛くて家へと帰ろうとすると……パシッと腕を掴まれた。
「あ、あの……よかったらこのまま一緒に俺と行かない?あっ!そのチケットがあって……勿体なくて……」
渡辺くんは慌ててチケットを取り出した。
「私と?」
他に行きたい人がいるんじ……と思って聞いてみる。
「真夜と……行きたい。ほら記念に……」
渡辺くんの言葉に少し期待した自分が馬鹿みたいに思った。
「うん、そうだね。最後の記念に……」
私達は偽りの恋人ごっこの記念にデートすることになった。
チケットは水族館のもので私達は無言で駅を移動する。
電車に乗ると、相変わらず渡辺くんは私を窓際に寄せて人混みから守ってくれた。
やっぱり……優しいな。
水族館は土曜とあって混雑しており、家族連れやカップルでごった返していた。
少し歩くとすぐ引き離されそうになってしまう。
「あっ、渡辺くん……」
渡辺くんと距離ができてしまった。
するとスルッと手に大きな温もりが掴まる。
「その、逸れたら大変だから」
渡辺くんは前を見たままそういうと私の手をギュッと握りしめた。
「うん……」
私もその大きな手をギュッと握り返す。
そのまま流されるように進んで行くと、暗くなり大きな水槽が目の前に広がった。
開けた場所につくと人混みも少し薄れる。
手を離すべきかと悩んでいたが渡辺くんから手を離すことはなかった。
「あっち……行ってみる?」
「う、うん……」
渡辺くんに促されてメイン展示の巨体水槽の前に行った。
「すごい!」
そこには大きな魚や小さい魚、それにイワシの群れに色とりどりの魚などキラキラと光を浴びて優雅に泳いでいる。
「綺麗……」
戸惑う気持ちも忘れて一時水槽に心を奪われる。
「なんか、美味しそう」
「えー?」
渡辺くんのつぶやきに信じられないと声を出した。
「俺イワシ好きなんだよね」
「だからってこんな綺麗なのに……ぷっ!」
私は久しぶりに声を出して笑った。
「良かった……笑ってくれて」
渡辺くんは私をみて本当に嬉しそうに微笑んだ。
「わ、私そんなに笑ってなかった?」
急に恥ずかしくなり顔を背ける。
「うん、俺でごめんね」
そう言うと渡辺くんの握っていた手が緩みそうになる。
私は思わず離すまいと握り返した。
「真夜?」
すると渡辺くんがじっとこちらを見る。
やっぱり……私は渡辺くんが好きなんだ!
私は覚悟を決めた。
渡辺くんが私を好きで無くてもこれからまつ始める!
他の人なんて今は考えられない……この気持ちだけは嘘をついてはいけないと思った。
「渡辺くん、聞いて!」
私の真剣な顔に渡辺くんは場所を移そうと移動してくれた。
2人で無言になりながら通路を移動する。
しかしその手は離れることなく繋がれていた。
人気コーナーを過ぎると海底生物の展示室へとやってくる。
中は薄暗く少し座るベンチもあり、そこに腰掛けた。
この薄明かりが助かる……渡辺くんの表情を見なくてすんだ。
彼がどんな顔をしているのか怖かった。
私は今までの事を全て話した。
本当に最初は間違えでラブレターを書いたこと、怖くて断れなかったこと、でも本当の渡辺くんを知っていき気持ちが惹かれたこと……そして好きになってしまったこと……
話終えるが渡辺くんからの反応がない……怖くなり言葉を続けた。
「急にこんな事言われても……困るよね。今日はありがとう、ごめん」
私はいたたまれなくなり立ち上がるとその手を離そうとした。
するとグイッとさらに強く掴まれて引き寄せられる。
私は気がつくと渡辺くんの腕の中にいた……
「良かった……」
そして渡辺くんからは心から安堵するような声が漏れていた。
「わ、渡辺くん?」
「蓮弥……って呼んで」
「蓮弥くん?」
彼の行動に戸惑い顔をあげる。
暗く室内も彼の表情がよく見えるほど近くにいた。
そしてその顔は嬉しそうで今まで見た中で一番かっこよく見えた。
「あの日間違えで俺の下駄箱に来たのも今なら感謝できる。あれがなかったら俺は真夜に出会えなかった」
「それって……」
「俺も真夜が好きだ」
蓮弥くんの顔が近づいてくる……私は思わず目を閉じると……
「あー!チューしてるー」
「こら!見ないのよ」
通りかかった家族連れが私達をみて気まずそうに前を通り抜けた。
「えっと……」
「うん、デートの続きしようか?」
私達は顔を見合わせて笑いあった。
後日この事を報告すると3人は泣きながら喜んでくれた。
「良かったー!良かったよー」
「本当にごめん!私達、2人がもう両思いなのわかってたのに……余計なことを……」
「もう絶対に真夜ちゃんを離さないでね!」
「わかった」
蓮弥くんの答えに満足そうにしていた。
「しかし聖也くんをけしかけて良かった……」
千夏ちゃんのつぶやきに何それ?と私達は顔を向ける。
聞けばあの後聖也くんの元に向かい私達の事を話したらしい、それで2人の誤解を解けるようにとデートを申し込んだそうだ。
「聖也は知ってたんだ……」
「だから当日いきなり行けないことにしてもらったの、そしたら渡辺くんが絶対行くと思ってた」
「真夜だって明らかに未練あったし、チケットもあれば断れずに行くでしょ?」
私達はみんなの策略にまんまとハマっていた。
「んー!なんか悔しいけど……」
私はチラッと蓮弥くんの恥ずかしそうな顔を見つめる。
この顔がまた近くで見れるならまぁいっか!
私はそっと蓮弥くんの手を握りしめた。
……終わり……
帰りは4人で……みんな気を使って色々と楽しい話をしてくれるが、どうも気分が乗らなかった。
そんな時、渡辺くんから久しぶりにメールが届く。
内容は私の心をさらに締め付けるものだった。
『聖也が今度土曜日に遊びに行かないかって言ってるけど、都合どうですか?』
聖也くん、あの時なら飛んで喜んだが今はそんな気になれない。
しかしみんなは違う出会いもあるよと気晴らしに楽しんでこいと背中を押した。
「そう、だね」
昔憧れていた聖也くんとデートだ。なかなかできるもんじゃない。
それに……また好きになれるかも……
私は自分の気持ちを騙してOKの返事を送った。
当日、朝起きてからも憂鬱だった。
集合は駅前に10時、何を着てこうかと悩みそうだが服は目に付いたものにすぐに決めた。
髪もいつも通りセットして家をでる。
駅までの足取りが重く感じた。
駅には10分前に到着した、携帯をいじりながら待っていると渡辺くんちの子猫の画像が出てきた。
「ふっかわいい……」
でもこれも消さないとかな……
デート前なのに気持ちは暗くなるばかりだった。
そして約束の時間になっても聖也くんは来ない。
遅刻か……渡辺くんは一度も遅刻なんてしなかったな。
思うのは渡辺くんとの思い出ばかりだった。
5分が過ぎた頃こちらに走ってくる人が現れてみんなが慌てて道を開ける。
誰だろうと思っていると……
「渡辺くん……」
はぁはぁと息を切らして渡辺くんが私の目の前で止まった。
「ま、真夜……ごめん。聖也来れなく、なって」
息を切らしながらそう伝えてきた。
「そう……なら帰るね」
私は渡辺くんといるのが辛くて家へと帰ろうとすると……パシッと腕を掴まれた。
「あ、あの……よかったらこのまま一緒に俺と行かない?あっ!そのチケットがあって……勿体なくて……」
渡辺くんは慌ててチケットを取り出した。
「私と?」
他に行きたい人がいるんじ……と思って聞いてみる。
「真夜と……行きたい。ほら記念に……」
渡辺くんの言葉に少し期待した自分が馬鹿みたいに思った。
「うん、そうだね。最後の記念に……」
私達は偽りの恋人ごっこの記念にデートすることになった。
チケットは水族館のもので私達は無言で駅を移動する。
電車に乗ると、相変わらず渡辺くんは私を窓際に寄せて人混みから守ってくれた。
やっぱり……優しいな。
水族館は土曜とあって混雑しており、家族連れやカップルでごった返していた。
少し歩くとすぐ引き離されそうになってしまう。
「あっ、渡辺くん……」
渡辺くんと距離ができてしまった。
するとスルッと手に大きな温もりが掴まる。
「その、逸れたら大変だから」
渡辺くんは前を見たままそういうと私の手をギュッと握りしめた。
「うん……」
私もその大きな手をギュッと握り返す。
そのまま流されるように進んで行くと、暗くなり大きな水槽が目の前に広がった。
開けた場所につくと人混みも少し薄れる。
手を離すべきかと悩んでいたが渡辺くんから手を離すことはなかった。
「あっち……行ってみる?」
「う、うん……」
渡辺くんに促されてメイン展示の巨体水槽の前に行った。
「すごい!」
そこには大きな魚や小さい魚、それにイワシの群れに色とりどりの魚などキラキラと光を浴びて優雅に泳いでいる。
「綺麗……」
戸惑う気持ちも忘れて一時水槽に心を奪われる。
「なんか、美味しそう」
「えー?」
渡辺くんのつぶやきに信じられないと声を出した。
「俺イワシ好きなんだよね」
「だからってこんな綺麗なのに……ぷっ!」
私は久しぶりに声を出して笑った。
「良かった……笑ってくれて」
渡辺くんは私をみて本当に嬉しそうに微笑んだ。
「わ、私そんなに笑ってなかった?」
急に恥ずかしくなり顔を背ける。
「うん、俺でごめんね」
そう言うと渡辺くんの握っていた手が緩みそうになる。
私は思わず離すまいと握り返した。
「真夜?」
すると渡辺くんがじっとこちらを見る。
やっぱり……私は渡辺くんが好きなんだ!
私は覚悟を決めた。
渡辺くんが私を好きで無くてもこれからまつ始める!
他の人なんて今は考えられない……この気持ちだけは嘘をついてはいけないと思った。
「渡辺くん、聞いて!」
私の真剣な顔に渡辺くんは場所を移そうと移動してくれた。
2人で無言になりながら通路を移動する。
しかしその手は離れることなく繋がれていた。
人気コーナーを過ぎると海底生物の展示室へとやってくる。
中は薄暗く少し座るベンチもあり、そこに腰掛けた。
この薄明かりが助かる……渡辺くんの表情を見なくてすんだ。
彼がどんな顔をしているのか怖かった。
私は今までの事を全て話した。
本当に最初は間違えでラブレターを書いたこと、怖くて断れなかったこと、でも本当の渡辺くんを知っていき気持ちが惹かれたこと……そして好きになってしまったこと……
話終えるが渡辺くんからの反応がない……怖くなり言葉を続けた。
「急にこんな事言われても……困るよね。今日はありがとう、ごめん」
私はいたたまれなくなり立ち上がるとその手を離そうとした。
するとグイッとさらに強く掴まれて引き寄せられる。
私は気がつくと渡辺くんの腕の中にいた……
「良かった……」
そして渡辺くんからは心から安堵するような声が漏れていた。
「わ、渡辺くん?」
「蓮弥……って呼んで」
「蓮弥くん?」
彼の行動に戸惑い顔をあげる。
暗く室内も彼の表情がよく見えるほど近くにいた。
そしてその顔は嬉しそうで今まで見た中で一番かっこよく見えた。
「あの日間違えで俺の下駄箱に来たのも今なら感謝できる。あれがなかったら俺は真夜に出会えなかった」
「それって……」
「俺も真夜が好きだ」
蓮弥くんの顔が近づいてくる……私は思わず目を閉じると……
「あー!チューしてるー」
「こら!見ないのよ」
通りかかった家族連れが私達をみて気まずそうに前を通り抜けた。
「えっと……」
「うん、デートの続きしようか?」
私達は顔を見合わせて笑いあった。
後日この事を報告すると3人は泣きながら喜んでくれた。
「良かったー!良かったよー」
「本当にごめん!私達、2人がもう両思いなのわかってたのに……余計なことを……」
「もう絶対に真夜ちゃんを離さないでね!」
「わかった」
蓮弥くんの答えに満足そうにしていた。
「しかし聖也くんをけしかけて良かった……」
千夏ちゃんのつぶやきに何それ?と私達は顔を向ける。
聞けばあの後聖也くんの元に向かい私達の事を話したらしい、それで2人の誤解を解けるようにとデートを申し込んだそうだ。
「聖也は知ってたんだ……」
「だから当日いきなり行けないことにしてもらったの、そしたら渡辺くんが絶対行くと思ってた」
「真夜だって明らかに未練あったし、チケットもあれば断れずに行くでしょ?」
私達はみんなの策略にまんまとハマっていた。
「んー!なんか悔しいけど……」
私はチラッと蓮弥くんの恥ずかしそうな顔を見つめる。
この顔がまた近くで見れるならまぁいっか!
私はそっと蓮弥くんの手を握りしめた。
……終わり……
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