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渡辺くんとはその後もなんの進展もないが交際は続いていた。
とは言っても帰りに一緒に帰る程度、学校ではクラスも違うしそんなに会うことなんてない。
今日も渡辺くんが私のクラスに迎えにきた。
彼の姿に友達に手を振る
「じゃねー」
「はーい」
「頑張っ!」
「お疲れ様」
3人に見送られ渡辺くんの隣に並ぶ。
「仲良いな」
渡辺くんが友達をみてそんな事を言った。
「まぁ小学校からの仲だからね」
「いいね」
渡辺くんがふっと笑う。
最近私の前で少しだけ緊張が溶けて柔らかい表情を見せてくれることが増えた。
2人で駅に向かいいつものように帰っていると、駅前で声をかけられた。
「あら蓮弥?」
2人で後ろを振り返ると大きな荷物を持った綺麗な婦人が驚いた顔で立っていた。
誰だろうと渡辺くんを見ると……
「母さん!」
お、お母さん?
「今帰り?あら、友達かしら?」
私の方をみてニコニコと笑う。
「あっいや……」
渡辺くんが気まずそうに言葉を選んでいた。
「友達の結城真夜です」
私はペコッと頭を下げた。
「蓮弥に女の子の友達ねー」
何か言いたそうにニヤニヤとしていると渡辺くんがたまらずに荷物をひったくった。
「もういいかほら荷物渡して!」
もうひとつも持つと手を出すが渡辺くんだって学校の荷物で半分手が埋まっている。
「大丈夫よ、蓮弥は友達と遊んで来なさいよ」
渡辺くんのお母さんは荷物を蓮弥くんから取り戻そうとしていた。
でも女性が持つには大変そうな量だった。
「別に予定もないし荷物運ぶの手伝いますよ。渡辺くんの荷物持つからお母さんの持ってあげて」
私は渡辺くんの鞄を引っ張った。
「でも……」
「あら、じゃあお願いするわね!」
すると渡辺くんのお母さんは荷物を全部渡辺くんに渡した。
「じゃあ行きましょ!」
そして私と渡辺くん、渡辺くんのお母さんと奇妙な組み合わせて渡辺くんの家へと向かうことになった。
「え?渡辺くん……家ってこっちなの?」
私は渡辺くんが向かう駅の方角に驚いてしまった。
「う、うん……」
渡辺くんはしられたくなかったのか小さな声で答える。
「私と反対方向じゃない」
渡辺くんは学校の最寄りの駅から全く反対方向に向かう電車だったのだ、今まで渡辺くんは私の家の近くまで送ってくれていた。
帰り道だからと聞いて気にしていなかったがまさか反対方向なのに送ってくれていたとは……知らなかった。
「そんなに遠くないからさ……それに女の子が一人だと危ないだろ」
渡辺くんはなんでもないと顔を逸らす。
そして気がつくと電車の中でも窓際に私を寄せて体で守ってくれていることに気がついた。
なんか……イメージと違ったな。
チラと顔を見あげると、なんかいつもよりかっこよく見えてしまう。
私は慌てて首を振った。
すると渡辺くんがそっと屈んで私の耳元で囁いた。
「さっきはごめん。彼女って言えなくて」
ヒャッ!
内容よりも耳元で囁かれてその辺が熱くなる。
「だ、大丈夫だよ。家族にそう言うの知られるの恥ずかしもんね、私だって最初は学校で内緒にしようとしてたし……」
気にしないと早口でまくし立ててしまった。
「そっか……」
渡辺くんはそれっきり口を閉ざすと窓の景色を見ていた。
降りる駅に近づくと次に降りることを伝えられる。
みんなで渡辺くんの家に向かう途中にお母さんがケーキ屋に寄り道した。
「ちょっと選んで来るわ、真夜ちゃんもきて」
「え?」
「蓮弥は荷物もって待ってなさい」
渡辺くんの返事も聞かずにお母さんは私を連れて店へと入った。
「ここはイチゴのショートが美味しいわよ、あとチーズケーキもおすすめ」
「で、でも……」
「ここまで荷物もってきてくれたお礼だから気にしないで選んで」
「ありがとうございます。じゃあチーズケーキで」
「OK!チーズケーキ2つにショート1つね」
お母さんは注文すると私をみてニコッと笑う。
「真夜ちゃん、蓮弥と仲良くしてくれてありがとうね。あの子あんな見た目だから友達がなかなか出来なくてね……でも最近学校楽しそうで、真夜ちゃんのおかげかな?」
「そ、そんな事は……渡辺くん……蓮弥くんは優しいですから、それがみんなに分かればすぐに人気者になりますよ」
「蓮弥の良さをわかってくれてありがとう」
お母さんはケーキを受け取るとソワソワと待つ渡辺くんの元に戻った。
ここからは近いとお母さんの先導で歩く。
「なんか変なこと言われた?」
渡辺くんはコソッと心配そうに聞いてくる。
「ううん、渡辺くんと仲良くしてくれてありがとうって言われただけだよ」
「もう、母さん何言ってるんだよ」
渡辺くんは恥ずかしそうにため息をつく。
「素敵なお母さんだね」
私の言葉に渡辺くんは嫌そうだけどコクっと頷いた。
「じゃあどうぞー」
お母さんに促されて渡辺くんのお家にお邪魔する。
「お邪魔します」
部屋に入ると「にゃあ~ん」と可愛い声が出迎えてくれた。
「か、かわいい!」
下を見ると小さな子猫が足元に擦り寄って来ていた。
「ミーコ、ただいま」
渡辺くんは子猫を大きな手で撫でようとするとサッと逃げられる。
「お、おいー」
その様子に渡辺くんは悲しそうな声を出した。
「ぷッ……おいでー」
私は屈むと子猫に小さな声で話しかけて手を出した。
猫が近づくまで辛抱強く待つと子猫は興味深そうに手の先に近づき匂いを嗅ぐ。
「なんで初めて会った真夜に懐いて俺は逃げるんだよ」
渡辺くんは面白くないと寂しそうにする。
「渡辺くんは体が大きいから怖いんじゃない?もう少ししゃがむとか小さくなってあげなよ」
私がそういうと渡辺くんはなるほどと屈んでじっとする。
すると子猫は首を傾げながらそっと近づいてきて渡辺くんの足をクンクンと嗅いだ。
「ミーコが初めて自分から来た!」
「良かったね」
本当に嬉しそうな様子に子供みたいだと笑ってしまった。
聞けば子猫は高校入学初日に道の途中で拾ったらしい。
泥だらけで今にも死にそうになってた子を保護したせいで入学式から休むことになってしまったのだと教えてくれた。
「しかも捕まえる時に引っかかれたり暴れたりして顔とか手が傷だらけで……それでなんか怖いって言われたんだ」
「それで……」
渡辺くんの問題児という噂の原因が今わかった。
考えれば渡辺くんは穏やかで付き合ってからも喧嘩もしないし私に怒ることも怒鳴ることも一度もない。
どちらかと言うと優しいのになんでそんな噂を信じてしまったのだろうと後悔した。
「もっと……渡辺くんの良さがみんなにわかるといいね」
「知ってる人がわかっててくれるならそれでいいよ」
渡辺くんはもう今更気にしないと笑った。
次の日私はお昼に友達と庭のベンチで食べないかと誘う。
「いいよー」
みんな快く了承してくれた。
「あとさ……渡辺くんも呼んでいい?」
「「「え!?」」」
3人は戸惑いに顔を見合わせた。
「あのね!渡辺くんて噂のような問題児じゃないの、だからみんなにも仲良くなって欲しくて……」
私は必死にみんなを説得しようと言葉を選ぶが上手く説得できない。
でも渡辺くんを知ればみんな誤解だとわかってくれると思っていた。
「んー、真夜がそういうならいいよ」
「うん、私もー」
「そうね、その後の展開も聞きたいしね」
3人は最初こそ戸惑ったがすぐに笑顔を見せた。
「ありがとう、私渡辺くん呼んで来るね!」
渡辺くんのクラスに走ると途中でちょうど行き合った。
「渡辺くん!一緒にご飯たべよ!」
私の勢いに渡辺くんは引きながら頷いた。
「えっと……初めまして」
渡辺くんは居心地悪そうにベンチの端に座った。
「よろしくー私は橋本美紀です」
「私、牧優子」
「香取千夏でーす。渡辺蓮弥くんだよね」
3人はいつも通りの様子で渡辺くんに声をかけた。
「あっ……はい」
女の子4人に囲まれて居心地悪そうにする。
「そんなビビらなくてもいいのに、なんかイメージと違うね」
「そうなんだよ!渡辺くん全然問題児なんかじゃなくて優しくていい人なの!入学式の日来なかったのも子猫を拾ったからなんだよ!」
私が必死に説明すると3人は驚いた顔で私を見たあと吹き出した。
「真夜、必死ー!」
「別に何も言ってないじゃん」
「何?真夜、渡辺くんのこと……」
千夏にニヤニヤと視線を向けられ違うと慌てる。
「はいはい、わかったからご飯食べよ」
美紀が話を落ち着かせてくれるとみんなとりあえず食事に集中した。
みんなお弁当やら、おにぎり、パンなど広げる。渡辺くんは大きなお弁当に菓子パンを2つ持ってきていた。
「お弁当デカ!」
みんな渡辺くんのお弁当の大きさに驚いている。
「そのお弁当食べてパンも食べるの?」
「あ、ああ」
「それにしても渡辺くんのお弁当美味しそうね!」
確かに……
彩りも良くて大きな唐揚げなんか美味しそうだ。
私があまりにも見すぎていたのか渡辺くんが1つどうぞとおかずを譲ってくれた。
「いいの?」
コクっと渡辺くんが頷く。
「いいなー!」
「私もたべてみたーい」
「ならみんなも……」
渡辺くんは3人にも好きなおかずをどうぞと差し出す。
「「「ありがとう」」」
3人は遠慮することなくおかずをもらっていた。
「ちょっと、そんなにとったら渡辺くんの食べるもの無くなっちゃうじゃん……渡辺くん私のおかずあげる」
「いや、悪いよ」
「交換だよ!それならいいでしょ」
私は無理やりハンバーグのおかずを渡辺くんのお弁当に置いた。
「私もあげる」
「私はパン食べちゃったから明日なにか持ってくるわ」
「私はおにぎりあげるーちょっと量多いからちょうど良かった」
みんな渡辺くんにおかずを渡した。
「あ、ありがとう」
渡辺くんは驚きながらおかずを受け取る。
「なんか……友達みたいだ」
「おかず交換したからもう友達よね」
「そうね、他人にこんなことしないわよ」
渡辺くんの言葉にみんな笑っている。
「そうそう、親友の彼氏は必然的に友人になるのよー」
「か、彼氏……」
改めて言われて渡辺くんを見ると、彼もこちらを向いて顔を赤くしていた。
「あら、結構いい感じなのね?」
「本当に……」
友達の会話も聞こえないほどに私は見を小さくしてお弁当をかきこんでしまった。
とは言っても帰りに一緒に帰る程度、学校ではクラスも違うしそんなに会うことなんてない。
今日も渡辺くんが私のクラスに迎えにきた。
彼の姿に友達に手を振る
「じゃねー」
「はーい」
「頑張っ!」
「お疲れ様」
3人に見送られ渡辺くんの隣に並ぶ。
「仲良いな」
渡辺くんが友達をみてそんな事を言った。
「まぁ小学校からの仲だからね」
「いいね」
渡辺くんがふっと笑う。
最近私の前で少しだけ緊張が溶けて柔らかい表情を見せてくれることが増えた。
2人で駅に向かいいつものように帰っていると、駅前で声をかけられた。
「あら蓮弥?」
2人で後ろを振り返ると大きな荷物を持った綺麗な婦人が驚いた顔で立っていた。
誰だろうと渡辺くんを見ると……
「母さん!」
お、お母さん?
「今帰り?あら、友達かしら?」
私の方をみてニコニコと笑う。
「あっいや……」
渡辺くんが気まずそうに言葉を選んでいた。
「友達の結城真夜です」
私はペコッと頭を下げた。
「蓮弥に女の子の友達ねー」
何か言いたそうにニヤニヤとしていると渡辺くんがたまらずに荷物をひったくった。
「もういいかほら荷物渡して!」
もうひとつも持つと手を出すが渡辺くんだって学校の荷物で半分手が埋まっている。
「大丈夫よ、蓮弥は友達と遊んで来なさいよ」
渡辺くんのお母さんは荷物を蓮弥くんから取り戻そうとしていた。
でも女性が持つには大変そうな量だった。
「別に予定もないし荷物運ぶの手伝いますよ。渡辺くんの荷物持つからお母さんの持ってあげて」
私は渡辺くんの鞄を引っ張った。
「でも……」
「あら、じゃあお願いするわね!」
すると渡辺くんのお母さんは荷物を全部渡辺くんに渡した。
「じゃあ行きましょ!」
そして私と渡辺くん、渡辺くんのお母さんと奇妙な組み合わせて渡辺くんの家へと向かうことになった。
「え?渡辺くん……家ってこっちなの?」
私は渡辺くんが向かう駅の方角に驚いてしまった。
「う、うん……」
渡辺くんはしられたくなかったのか小さな声で答える。
「私と反対方向じゃない」
渡辺くんは学校の最寄りの駅から全く反対方向に向かう電車だったのだ、今まで渡辺くんは私の家の近くまで送ってくれていた。
帰り道だからと聞いて気にしていなかったがまさか反対方向なのに送ってくれていたとは……知らなかった。
「そんなに遠くないからさ……それに女の子が一人だと危ないだろ」
渡辺くんはなんでもないと顔を逸らす。
そして気がつくと電車の中でも窓際に私を寄せて体で守ってくれていることに気がついた。
なんか……イメージと違ったな。
チラと顔を見あげると、なんかいつもよりかっこよく見えてしまう。
私は慌てて首を振った。
すると渡辺くんがそっと屈んで私の耳元で囁いた。
「さっきはごめん。彼女って言えなくて」
ヒャッ!
内容よりも耳元で囁かれてその辺が熱くなる。
「だ、大丈夫だよ。家族にそう言うの知られるの恥ずかしもんね、私だって最初は学校で内緒にしようとしてたし……」
気にしないと早口でまくし立ててしまった。
「そっか……」
渡辺くんはそれっきり口を閉ざすと窓の景色を見ていた。
降りる駅に近づくと次に降りることを伝えられる。
みんなで渡辺くんの家に向かう途中にお母さんがケーキ屋に寄り道した。
「ちょっと選んで来るわ、真夜ちゃんもきて」
「え?」
「蓮弥は荷物もって待ってなさい」
渡辺くんの返事も聞かずにお母さんは私を連れて店へと入った。
「ここはイチゴのショートが美味しいわよ、あとチーズケーキもおすすめ」
「で、でも……」
「ここまで荷物もってきてくれたお礼だから気にしないで選んで」
「ありがとうございます。じゃあチーズケーキで」
「OK!チーズケーキ2つにショート1つね」
お母さんは注文すると私をみてニコッと笑う。
「真夜ちゃん、蓮弥と仲良くしてくれてありがとうね。あの子あんな見た目だから友達がなかなか出来なくてね……でも最近学校楽しそうで、真夜ちゃんのおかげかな?」
「そ、そんな事は……渡辺くん……蓮弥くんは優しいですから、それがみんなに分かればすぐに人気者になりますよ」
「蓮弥の良さをわかってくれてありがとう」
お母さんはケーキを受け取るとソワソワと待つ渡辺くんの元に戻った。
ここからは近いとお母さんの先導で歩く。
「なんか変なこと言われた?」
渡辺くんはコソッと心配そうに聞いてくる。
「ううん、渡辺くんと仲良くしてくれてありがとうって言われただけだよ」
「もう、母さん何言ってるんだよ」
渡辺くんは恥ずかしそうにため息をつく。
「素敵なお母さんだね」
私の言葉に渡辺くんは嫌そうだけどコクっと頷いた。
「じゃあどうぞー」
お母さんに促されて渡辺くんのお家にお邪魔する。
「お邪魔します」
部屋に入ると「にゃあ~ん」と可愛い声が出迎えてくれた。
「か、かわいい!」
下を見ると小さな子猫が足元に擦り寄って来ていた。
「ミーコ、ただいま」
渡辺くんは子猫を大きな手で撫でようとするとサッと逃げられる。
「お、おいー」
その様子に渡辺くんは悲しそうな声を出した。
「ぷッ……おいでー」
私は屈むと子猫に小さな声で話しかけて手を出した。
猫が近づくまで辛抱強く待つと子猫は興味深そうに手の先に近づき匂いを嗅ぐ。
「なんで初めて会った真夜に懐いて俺は逃げるんだよ」
渡辺くんは面白くないと寂しそうにする。
「渡辺くんは体が大きいから怖いんじゃない?もう少ししゃがむとか小さくなってあげなよ」
私がそういうと渡辺くんはなるほどと屈んでじっとする。
すると子猫は首を傾げながらそっと近づいてきて渡辺くんの足をクンクンと嗅いだ。
「ミーコが初めて自分から来た!」
「良かったね」
本当に嬉しそうな様子に子供みたいだと笑ってしまった。
聞けば子猫は高校入学初日に道の途中で拾ったらしい。
泥だらけで今にも死にそうになってた子を保護したせいで入学式から休むことになってしまったのだと教えてくれた。
「しかも捕まえる時に引っかかれたり暴れたりして顔とか手が傷だらけで……それでなんか怖いって言われたんだ」
「それで……」
渡辺くんの問題児という噂の原因が今わかった。
考えれば渡辺くんは穏やかで付き合ってからも喧嘩もしないし私に怒ることも怒鳴ることも一度もない。
どちらかと言うと優しいのになんでそんな噂を信じてしまったのだろうと後悔した。
「もっと……渡辺くんの良さがみんなにわかるといいね」
「知ってる人がわかっててくれるならそれでいいよ」
渡辺くんはもう今更気にしないと笑った。
次の日私はお昼に友達と庭のベンチで食べないかと誘う。
「いいよー」
みんな快く了承してくれた。
「あとさ……渡辺くんも呼んでいい?」
「「「え!?」」」
3人は戸惑いに顔を見合わせた。
「あのね!渡辺くんて噂のような問題児じゃないの、だからみんなにも仲良くなって欲しくて……」
私は必死にみんなを説得しようと言葉を選ぶが上手く説得できない。
でも渡辺くんを知ればみんな誤解だとわかってくれると思っていた。
「んー、真夜がそういうならいいよ」
「うん、私もー」
「そうね、その後の展開も聞きたいしね」
3人は最初こそ戸惑ったがすぐに笑顔を見せた。
「ありがとう、私渡辺くん呼んで来るね!」
渡辺くんのクラスに走ると途中でちょうど行き合った。
「渡辺くん!一緒にご飯たべよ!」
私の勢いに渡辺くんは引きながら頷いた。
「えっと……初めまして」
渡辺くんは居心地悪そうにベンチの端に座った。
「よろしくー私は橋本美紀です」
「私、牧優子」
「香取千夏でーす。渡辺蓮弥くんだよね」
3人はいつも通りの様子で渡辺くんに声をかけた。
「あっ……はい」
女の子4人に囲まれて居心地悪そうにする。
「そんなビビらなくてもいいのに、なんかイメージと違うね」
「そうなんだよ!渡辺くん全然問題児なんかじゃなくて優しくていい人なの!入学式の日来なかったのも子猫を拾ったからなんだよ!」
私が必死に説明すると3人は驚いた顔で私を見たあと吹き出した。
「真夜、必死ー!」
「別に何も言ってないじゃん」
「何?真夜、渡辺くんのこと……」
千夏にニヤニヤと視線を向けられ違うと慌てる。
「はいはい、わかったからご飯食べよ」
美紀が話を落ち着かせてくれるとみんなとりあえず食事に集中した。
みんなお弁当やら、おにぎり、パンなど広げる。渡辺くんは大きなお弁当に菓子パンを2つ持ってきていた。
「お弁当デカ!」
みんな渡辺くんのお弁当の大きさに驚いている。
「そのお弁当食べてパンも食べるの?」
「あ、ああ」
「それにしても渡辺くんのお弁当美味しそうね!」
確かに……
彩りも良くて大きな唐揚げなんか美味しそうだ。
私があまりにも見すぎていたのか渡辺くんが1つどうぞとおかずを譲ってくれた。
「いいの?」
コクっと渡辺くんが頷く。
「いいなー!」
「私もたべてみたーい」
「ならみんなも……」
渡辺くんは3人にも好きなおかずをどうぞと差し出す。
「「「ありがとう」」」
3人は遠慮することなくおかずをもらっていた。
「ちょっと、そんなにとったら渡辺くんの食べるもの無くなっちゃうじゃん……渡辺くん私のおかずあげる」
「いや、悪いよ」
「交換だよ!それならいいでしょ」
私は無理やりハンバーグのおかずを渡辺くんのお弁当に置いた。
「私もあげる」
「私はパン食べちゃったから明日なにか持ってくるわ」
「私はおにぎりあげるーちょっと量多いからちょうど良かった」
みんな渡辺くんにおかずを渡した。
「あ、ありがとう」
渡辺くんは驚きながらおかずを受け取る。
「なんか……友達みたいだ」
「おかず交換したからもう友達よね」
「そうね、他人にこんなことしないわよ」
渡辺くんの言葉にみんな笑っている。
「そうそう、親友の彼氏は必然的に友人になるのよー」
「か、彼氏……」
改めて言われて渡辺くんを見ると、彼もこちらを向いて顔を赤くしていた。
「あら、結構いい感じなのね?」
「本当に……」
友達の会話も聞こえないほどに私は見を小さくしてお弁当をかきこんでしまった。
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