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「な、なんだ!地震か!」

ダミアンは床に座り込み頭を抱えてうずくまった。

「ダミアン様!」

従者達がダミアンを守ろうとそばを固める。

「ダミアン!」

すると門の方からジャックの怒鳴り声が響いた。

「あの声は…ジャックか?まさかこの騒ぎも」

ダミアンは恥をかかされたと立ち上がるとルナールを連れて門へと走った。

「ジャック!性懲りも無くまた来たのか!」

「ダミアン、ルナールさんは返してもらおうか。金なら用意した!好きなだけ持っていけ!」

ジャックはダミアンの前に金を放り投げた。

「な、なんでお前にそんなに金が用意できるんだ。やはりその子供か…」

ダミアンは俺の後ろに隠れるココを睨みつける。

「ココは関係ない、こちらの方からお借りしたんだ」

「誰だ」

ダミアンが見つめる先に人の姿の主様がいた。

白い顔に全てを見透かすような薄い瞳、長い髪は腰まであり見た事もない服をまとっているがその姿は人を何故か惹きつけられる。

「私の妻が世話になっていると聞いてな」

「妻ぁ?」

ダミアンは顔を歪めた。

「あっ!あなた」

ルナールさんがダミアンの後ろから顔を覗かせた。

「良かった、無事だったのだな」

主様の顔が安堵して微笑んだ。
その表情から本当に彼女の事を心配して愛しているのだと思った。

主様がルナールさんに近づいてその手を掴まうとするとダミアンがその手を払った。

「はっ?」

あまりの態度に主様もルナールさんも唖然としていた。

「これは俺の女になった、どこの奴だか知らないが遠慮してもらおうか?」

「俺の…女だと?」

主様の綺麗な顔に青筋が出た。

「そうだ、まぁ返してやらない事もないがな」

「まさかこれ以上金を要求する気なのか?」

「そうだ、金はいくらあってもいいからな。それだけの見た目だ金を作るのも容易いだろ」

主様の顔を嫌味ったらしく見下していた。

「確か…この町を納める者だと聞いていたかここまで落ちたとは」

主様は嘆かわしいと目を伏せて首を振った。

「落ちてなどいない!むしろ俺の代からもっともっと領土を広げてやる!」

「お前には無理だ」

主様がハッキリと答えた。

そう言われてダミアンは頭にきたのか主様を睨みつけている。

「お前だけは許さんぞ!誰かあいつを捕まえろ!」

「「「はい!」」」

ダミアンの従者達が主様に襲いかかろうとするとこれまで笑顔を絶やさなかったルナールさんが動いた。

「私の大切な人になにかするのだけは許さないわよ」

いつの間にかダミアンの後ろから移動して主様の前に立ち塞がった。

「もういい!その女ごと少し痛めつけてやれ!」

「主様下がって、ここは私で十分よ」

「いや、たまには私がやろう。ルナールはあんな奴のそばにいて疲れただろう?」

主様にそっと肩を抱かれてルナールさんは頬を赤らめていた。

「久しぶりで調節が難しいな…こんなもんか?」

主様がサッと腕を動かすとそれに合わせて大地が揺れた。

従者達は驚きバランスを崩してその場に倒れた。

「な、なんだ今のは…」

意味の分からない恐ろしさに従者達の足が止まった。

「さて次は…」

今度はグッと拳を握り前へと出すと大地が波打ちダミアンの屋敷を揺らす。

「や、止めろ!」

屋敷の壁に亀裂が入り屋根が崩れ落ちそうになる。

「ば、化け物だ!」

従者達はダミアンの静止を振り切って散り散りに逃げて行った。
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