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「ダミアンはいるか?」

俺は落ち着いて門番に声をかけた。
前みたいに騒がずに冷静にいこうと決めた。

「またお前か、何度来ても同じだと言うのに」

呆れながらもダミアンを呼んでくれる。

ダミアンは俺の顔を見るなりゲンナリとした顔をするが後ろにたっているルナールさんをみて顔色を変えた。

上から下まで舐め回すように見ている。

気味の悪い視線にもルナールさんは気にした様子もなく涼しい顔をしていた。

「そちらの方はどなたかな?ここら辺では見ない顔だが?」

俺の事は居ない物かのように話をしている。

「私はジャックさんの付き添いです。話なら彼に……」

ルナールさんは俺の肩にしなだれるように寄りかかった。

「ル、ルナールさん?」

彼女は話をしろと顎で合図をする。

「ココの事だ、あの子を返してもらう」

「だから言ってるだろ、あいつは好きでここにいると、それとも金でもできたと言うのか?」

「ああ」

俺はルナールさんから借りた金をダミアンに放り投げた。

「は?昨日の今日で何を言って……」

ダミアンは袋の中の金に言葉を失った。

「それで文句はないだろ、早くココを連れてきてくれ」

「そんなわけない!どこかから盗んできたんだろ!」

「そんなことをしたら騒ぎになってるだろ」

馬鹿な言い訳に呆れてしまう。

「ジャック?」

すると騒ぎにココが姿を現した。

「ココ!」

「ジャック、なんで……」

「ココ、なんだ……その格好は?」

ココは首輪をつけられ昨日見た服ではなく奴隷のような服を着せられていた。

「勝手に出歩くなと言っただろうが!」

ダミアンはいきなり現れたココに向かって手を振りあげた。

「危ない!」

俺はココの元に駆け寄ると抱き寄せた。

するとダミアンの拳が背中に叩き落とされた。

「ぐっ」

「お前が悪いんだぞ、そんなやつを庇うから」

ダミアンは殴った事を悪びれることなく笑っている。

「ふざけんな!俺がいなけりゃココを殴る気だったのか!」

自分が殴られた事よりもココにそれをぶつけようとしていた事が腹立たしかった!

「ジャック!」

ココは顔を歪める俺を心配して抱きついてきた。

「なぁココ、なんでこいつのところにいるんだ?俺は金もないしお前に美味いもんも綺麗な服も着せてやれないかもしれないが、叩いたりなんてしない、幸せにしてやる」

「でも……ココ迷惑じゃない?」

ココは涙を浮かべながら聞いてきた。

「誰がそんなことを言ったんだ!」

「あのおじちゃん……ココがいるからジャックは不幸になるって」

「そんなわけあるか!ココが来てから俺は生きる喜びを知ったんだよ。お願いだからそんな悲しい事を言わないでくれ」

小さなココの体を抱きしめた。

「ジャックぅ……」

ココは溜まっていた涙が一気に溢れ出した。

「あ、あうぅ……」

なにか言いたそうに口を動かすが言葉にならない。

でもココの思いはその腕から伝わってきた。

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