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俺はその日の夜はまともに眠れなかった。

少ない荷物をまとめていつでも家を出れるように準備する。

ココがいない今、ここの家に未練もない。
俺は領主の息子が来るのを待っていた。

「おい、金は用意出来たか?」

扉をノックする事なく領主は家に不躾に入ってきた。

「出来るわけないだろ、いいよ俺は家を出ていく」

立ち上がって家を出ようとすると領主の息子に肩を掴まれた。

「待て!あるだけの金を置いていけ」

「は!?何言ってだあんた!」

「うるさい!金がいるんだ……早く出せ」

まるで追い剥ぎのような姿に嫌悪感しかなかった。

「払えないって言ってるだろ、だから俺は町を出るよ」

「ダメだ!金を置いてけ!」

「あんた……領主の息子だろ?金なら俺よりあるだろ」

「うるさい!」

焦った様子に違和感を感じる。

「あんた……なんか金に困ってるのか?」

「お、お前に言う必要は無い。さっさとある金を置いていけ、それで許してやる」

「だからないって言ってるだろ!」

「貸せ!」

領主の息子ともみ合ってしまう。

「やめてー!ジャックをいじめないで!」

「その声は……ココ!?」

もみ合っている俺たちを止めようとココが足元にしがみついた。

「離せ!」

領主の息子は足元にしがみついたココを蹴り飛ばした!

「何をする!」

慌ててココの元に駆け寄って様子を見るが怪我をした様子はなくて安心する。

「大丈夫か!なんで来たんだ」

「ココ……お金?用意した、だからジャックここにいて」

「金だと?」

お金と聞いて領主の息子が目の色を変える。

「はい、お金……これでしょ?」

ココはボロボロの袋を差し出した。

「汚いな…本当に金が入っているのか?」

乱暴にそれを受け取ると中を覗きんで目を見開いた。

「わかった……これで許してやろう。子供これはどこで手に入れた?」

「ココの山にあった」

「山……だと?」

領主の息子はココをじっと見つめてから袋を持って立ち去った。

「なんだったんだ……ココ、金なんかあったのか?」

「うん、まずまこれでジャックここにいれるでしょ?」

「そ、そうだな…」

あの男があれで諦めてくれればいいが…

嫌な予感に俺はココの笑顔に笑って答える事が出来なかった。

しかし予想に反して領主の息子は何もしてこなかった。

「心配しすぎかな?」

「そうだよ!ちゃんと返してもん」

ココの笑顔に俺の心が汚すぎたと反省した。

「じゃあ仕事に行ってくるな。お金はいつかちゃんと返すからな」

ココにしっかりと戸締りをするように言って家を出ていった。

人が待っていると帰りも楽しい、お土産を買って家へと帰った。

「ただいま!」

いつもなら扉を開けると飛びついてくるココの姿がなかった。

いつも飛びつくなと言った事をようやく覚えてのかも。

俺は褒めてやろうとココが居そうな場所を探す。

しかし部屋の何処にもココの姿がなかった。

「あれ?森にでもいってるかな」

家を出て森の中を声をかけながら探してみるが、反応がない。

声をかければすぐにでも駆けつけてくるのに……

まさか……

家に帰ってもう一度家の中の様子をうかがう。

すると扉をこじ開けたような後があった。

「あの野郎!」

俺は領主の屋敷まで走り出した!
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