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「ジャック、おはよぉー」

「んー?もう朝か……」

ココの声に目を覚ますとココは目の前でニコニコと笑っていた。

「どうした?」

「へへ、これいいね」

そう言って首のネックレスを見せた。

「おお、いいな。でもその前に飯にしよう」

「ココごはんよういした!」

そう言ってテーブルの上に置かれたフルーツの山を見せてくる。

「え?あれをココが見つけてきたのか?」

この前の食材といい、ココは見つけるのが上手いのかもしれない。

「うん!」

「ありがとうな、助かるよ」

俺は顔を洗ってくると早速ココとフルーツを食べる。

支度を整えていると珍しく来客が現れた。

「おい!ジャックはいるか!」

「はい」

俺は扉を開けて訪れた人に驚いた。
そこにいたのはこの街の領主の息子だった。

息子は俺と同じ年だが接点などそこしかなくここに訪れる意味もわからなかった。

「おい、お前この間はうちの弟が世話になったようだな」

「は?」

弟と聞いてバカ息子のルルドを思い出した。

「ああ、世話など別に……」

一方的に叩かれただけだったからな。
謝りに来た……という表情ではなかった。

「うちの弟に恥をかかせてくれたようだな」

「恥なんて、動物をいじめていたので注意しただけです」

「それがどうした?弟は狩りをしていただけだと言っていたぞ」

俺はそれは違うと何度も説明したが聞き入れて貰えなかった。

「お前は領主に楯突いた事は許し難い事だぞ」

「そうだ、この責任はどうとるつもりだ」

取り巻き達に囲まれて俺は言葉を失った。

これ以上何か言えば倍でかえってきそうだった。

「責任と言われましても……謝ればいいんですか?」

頭のひとつでも下げて収まるなら安いものだ。

「謝るだけなら動物でもできるだろ、それよりもちゃんと誠意を見せろ」

誠意と言われても……悪いと思ってもいないのに……

「どうしろと言うんですか」

「鈍い奴だな、金だよ金」

「はぁ?」

俺は思わず眉をひそめて怪訝な顔をする。

「なんだその態度は!」

「それで……いくらって言うつもりですか?領主の息子ともあろう人が」

嫌味ったらしく聞いてみる。
これで少しでもプライドが傷ついて考え直してくれるといいが……

しかしそんなのは甘い考えだった。

「50万用意しろ、本来なら足りないがお前ごときならその程度しか払えんだろ」

「50万!?」

俺の2ヶ月分の給金だった。

「そんなに無理ですよ!生活出来なくなる」

「知るか、いいか明日までに用意しろ出来なければこの町で住めると思うなよ」

三下のような捨て台詞を吐いて帰って言った。

「はぁ……」

領主の息子が帰ってから何度目かわからないため息をついた。

「ジャック……大丈夫?」

ココが心配そうに頭を抱える俺の顔を見つめている。

「あぁ、心配ないよ」

そう言って頭を撫でてやるが大丈夫ではなかった。

少しの蓄えはあるが貧乏暮しの俺に2ヶ月分の金を払える程の余裕はない。

「ココ、十分にお礼はしてもらったから今日で自分の家に帰ってくれないか?」

「ココ……じゃま?」

「そうじゃない!俺は……ここには住めなくなるかもしれないからさ」

ココを心配させないように笑って見せた。

ココは眉を下げてなにか我慢するような顔でこくっと頷いてくれた。

「ありがとうな……じゃあ元気でな」

ココを連れて家を出ると森の入り口まで送った。

ココは何度も振り返りながら耳を後ろに下げながら森へと消えていった。
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