助けたキツネが恩返しにきました。もふもふはいるだけで幸せです。

三園 七詩

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「わぁきれー」

ココは店内に入ると瞳をキラキラさせてアクセサリーを見ていた。

俺はなるべくココから離れないようにピッタリとくっついて歩いた。
 
ココを心配と言うよりも自分が一人になるのが怖かったからだ。

「なにか欲しいものあるのか?」

ひと通り見た後にそっと耳打ちして聞いてみる。

別に声を出してもいいのだろうが何となくこれ以上目立ちたくなかった。

「んーいらないー」

ココは首を横に振っていた。

「せっかく入ったんだから好きなものがあったら教えてくれ。あっそんなに高くないのにしてくれよ…」

「高い?」

あっ値段なんて分からないか……

しかしココはおもちゃのような首にかけるアクセサリーをじっと見つめて「これは?」とうかがうように聞いてきた。

「ん?それなら俺にも買えるな」

俺はそれを手に取ると店の人に言って包んで貰う。

「お嬢ちゃん良かったわね、お父さん…にしては若いからお兄ちゃんかな?」

ココと俺を見比べてお店の人が笑っている。

「ジャックはお兄ちゃんじゃないくてジャックなの」

「ん?そ、そう。良かったね」

「うん」

お店の人はココの言う意味が分からないみたいで笑って合わせてくれていた。

「はい、どうぞ。ジャックさんにつけてもらってね」

「ありがとー」

ココは嬉しそうにそれを受け取るとニコッとお店のお姉さんに笑いかけた。

「か、可愛いー!また来てね!」

お姉さんはココの頭を可愛い可愛いと言いながら何度も撫でていた。

ココも褒められたと思ったのか嬉しそうにそれを受け止めている。

「じゃありがとうございます」

俺は何となく面白くなくてココの手を引いてお店を出てしまった。

「あー」

お店のお姉さんは残念そうにまた来てねとココに手を振っている。

「なんか気に入られたな」

「ねー」

ココは気にした様子もなく買った袋を嬉しそうに何度も見ては笑っていた。

「それ、付けないのか?」

俺は袋を見てばかりいるココに聞いてみた。

「付ける?」

ココは意味が分からないのか首を傾げている。

「首に付けるんだよ、貸してみな」

手を差し出すとココは素直に袋を渡してくれた、中身を出してかがみ込み頭を出してもらう。

「えっと、こうかな?」

何とか金具をつけて首につけてやると、ココは何度もネックレスを触っている。

「ついてる?かわいい?」

そして少し歩いてはどうかと聞いてきた。

「可愛いぞー似合ってるぞー」

その都度答えてやっていたが数回ともなるといい加減にして欲しい。

「大丈夫だ!ちゃんとずっとあるしずっと可愛い!それに無くなったらまた買ってやる」

ココはいっぺんに言われてポケーっとした後にわかったと頷いた。

本当にわかってくれたのか不安だったがそれから聞くのをやめてくれたのでよかった。

その後は町をぶらぶらと歩き気になるお店に入ったりして一日があっという間に過ぎた。

「さてと、そろそろ帰るか?」

ココに声をかけると頭をこっくりこっくりと動かして今にも眠りそうになっていた。

「ココ!大丈夫か?」

「んーだーじょぶ」

舌の回っていない様子に大丈夫そうではなさそうだ。

ピョコ!ピョコ!

そのうちに耳がでてしっぽが飛び出してきた。

「ちょ、ちょっと待て!」

俺はココを抱き上げると人のいない方へと走った!

「ふー疲れた」

家に帰ってくるとバタンと倒れ込みそうになるのをグッと堪えてココをベッドへと寝かせた。

ココは爆睡してキツネの姿に戻っていた。

あの後どうにか人を避けながら家へと戻りいつもの倍疲れた気がする。

俺はご飯を食べるのも後回しにココの隣ですぐに寝てしまった。

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