助けたキツネが恩返しにきました。もふもふはいるだけで幸せです。

三園 七詩

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3.共同生活

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その日からジャックとココの暮らしが始まった。

ココに一度家に帰った方がいいんじゃないかと言ったが、親はここに居ることを知ってるから大丈夫だと帰る気はないようだった。

「ぼくね、あしたご飯用意するね!」

ココは明日からのお手伝いに胸をワクワクさせていた。

「よろしく頼むよ、でも無理しなくていいからね」

ジャックはベッドを整えてやるとココを抱き上げてベッドに寝かせた。

「ココはここで寝な」

布団をかけてやるとココはベッドの中からじっとジャックを見つめる。

「ジャックはどこに寝るの?」

「俺は床に布でも敷いて寝るから気にするな」

「だめ!それならぼくも床で寝る!」

ココは起き上がってしまった。

「いや、子供を床で寝かせられないよ。気にしないでベッドを使いな」

「でも…そうだ!ジャックも一緒に寝よ」

ココは小さな体を端に寄せてベッドをポンッと叩いた。

「でもな…」

自慢じゃないが俺のベッドはかなり小さい、俺が寝てギリギリぐらいだった。

「気にしなくていいから」

寝ててココを踏んでしまう方が怖かったので大丈夫だと言うがココは納得しなかった。

「ならぼく体小さくするから」

そう言うとココはキツネの姿に戻った。

確かにキツネなら頭の方で寝れば踏む心配もない。

それならと俺も了承した。

「おやすみー」

「ああ、おやすみ」

俺がベッドに横になるとココは顔のすぐ横でその体を丸めて寝だした。

ふわふわの毛が顔に触れてくすぐったいが心地よくもある。

俺は体の痛みや色んな事があったこともあり、すぐに眠りに落ちてしまった。

「おはよー」

そしてココの朝から元気な声に起こされた。

「お、おお?」

一瞬誰かと思ったが目の前で嬉しそうに笑うココの姿に昨日の事をすぐに思い出した。

「おはよう、朝から元気だな」

大きく伸びをすると…

「痛っ!」

背中の痛みに顔をしかめた、昨日の怪我がまだ引きずっていた。

「ジャック!大丈夫?」

ココは元気な顔をシュンとさせて心配そうにする。

元気よく立っていた耳もしっぽも垂れ下がってしまった。

「大丈夫だよ、急に動かしたからびっくりしただけだよ」

ココに大丈夫だと笑って元気になるようにとその頭を撫でてやった。

「本当に?痛くない?」

「まだ少し痛いかな、でも治ったらココは帰るんだろ?そんなすぐに治ってもいいのか?」

「あっ!うーんでも…どうしよう!」

ココはハッとしたり悩んだりと忙しそうだった。

「ごめんごめん、意地悪な質問しちゃったな。そんなに痛くないけどまだ治ってないみたいだからよろしくな」

「うん!」

ココはそれならと少し元気に戻った。

「そうだ!ぼくご飯取ってきた!」

「ご飯…取ってきた?」

なんか少し気になる言い方に頭を捻る。

「きてきて!」

見に来てと引っ張るココについていきこじんまりとしたキッチンに行くとそこには森の鳥が二羽置いてあった。

「鳥捕まえた!食べて!」

「えっ…」

羽がそのままついた鳥を食べろと差し出された。

「えっと…ココはこれをそのまま食べるのか?」

「え?そうだよ」

そう言うとココは鳥にかぶりつこうとする。

「ま、待ってくれ!」

俺はそれを慌てて止めると鳥を取り上げた。

「こ、これはせっかくココが取ってきてくれたから俺が料理してもいいか?」

「料理?ココがしたよ?」

ココはそのままの鳥を見つめて首を傾げた…

「そ、そうだね。これでも美味しそうだけど…もっと美味しくなる方法を教えてやるから」

「もっと美味しくなるの!」

「ああ、手伝ってくれるか?」

「うん!」

納得してくれた様子のココにほっと胸を撫で下ろした。

さすがに生の鳥をそのまま食べる勇気はない。

「じゃあまずは鳥の羽をむしるぞ」

「羽取れるの!?」

ココは羽を取る方法があると聞いて驚いていた。

「ああ、湯につけて羽が取れやすくするんだ。まずはお湯を沸かそうな」

「うん」

ココは素直に俺の言うことを聞いてくれた。

鳥を湯につけたら羽をむしる。

「羽に逆らわないように素早くむしるんだぞ」

「はーい」

ココは怖がる様子もなく楽しそうに羽をむしっていた。

細かな羽は火で炙って鳥を解体する。

「さてと、思わぬ大物だし何にしようかな」

せっかくならココに美味しいものを食べさせたいと思っていた。
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