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1.助ける

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ジャックは仕事帰り、いつもの道を歩いていると子供達の騒ぐ声が聞こえてきた。

子供達は興奮しているのか大きな笑い声をあげる。

その独特な笑い声にジャックは顔をしかめた。
それは近くにする領主のバカ息子の笑い声だったからだ。

ここは小さな田舎の村で領主と言っても村で一番金があったので貴族から立場を買ったようなものだった。

領主の名を貰ってから傲慢になり子供はわがまま放題、村の人達もその態度に困っていたがなかなか逆らうことも出来ずに困っていた。

そこのわがまま息子が何か村の子供達に命令しながら遊んでいたのだ。

ジャックは関わらないようにと気配を消しながらその横を通り過ぎようとした。

しかし気になりチラリとそれを見てしまった。

囲む子供達の隙間から黄金色のふわふわの毛が見えた。

子供達はキツネの子供をいじめていたのだ。

「おい!そっちに行ったぞ、逃がすなよ」

「も、もうやめましょうよ…」

「泣いてて可哀想です」

命令されていじめてる子供達はそんな事をしたくないのか止めようと言っていた。

「うるさい!キツネを捕まえないならお前達を飼ってやるぞ!いいから早く捕まえろ、怪我させれば逃げられないだろ。貸せ!」

バカ息子は子供から棒を奪うとキツネに向かって思いっきり腕を振り上げた。

「危ない!」

ジャックは気がつけば足が走り出しキツネを庇って思いっきり棒に叩かれた。

「うわ!」

「ルルド様が人を殺した!」

「こ、殺してない!こいつが勝手にぶつかって来たんだ!」

バカ息子…ルルドは棒を隣の子供に渡した。

「今のは俺が悪いんじゃないからな!」

「うっ…わかったから帰りな。今日のことは無かったことにしてやる」

ジャックはシッシッと子供達に帰れとあしらった。

「な、なんだその態度は!俺をラクーン士爵の息子ルルド様とわかって言ってるのか!」

「はい、すみませんでした。しかし貴族の仲間になりたいのに弱いものいじめはどうかと思いますよルルド様?」

ジャックはジロっとルルドを睨みつけた。
するとルルドはビクッと肩を揺らして文句を言いながら子分の子供達を連れて帰って行った。

大人しく帰ってくれてジャックはほっとした、子供といえど、領主の息子のルルドを相手にするのは後々何を言われるかわからない。

しかしこちらからは手を出していないし、自分が傷つけられたのだから何かされることはないだろう。

そう思い気が緩むと受けた傷が痛みだした。

体を引きずりながらジャックは家へと帰って行った。

家に帰るなりジャックはベッドに横になった。

一人暮しの独身男には看病してくれる恋人も家族もいない。

ジャックはそのまま気絶するように眠りについた。

コンコン、コンコン!

ジャックは戸を叩く音にようやく目を覚ました。

目を開くと部屋の中は薄暗くかなり寝てしまっていたらしい。

体はまだ痛むがどうにか動けそうだ、ゆっくりと戸に近づいて開くと誰もいなかった。

「あれ、誰か来た気がしたけど…」

戸を閉めようとすると下から声をかけられる。

「こ、こ、こんばんわ!」

「え?」

下をみると小さな子供が目をまん丸に見開いてこちらを見ていた。
ここらでは見たことない子に首を傾げる。

「誰かな?家を間違えてないかい」

「いいえ!お、お兄さんの家にきたの、さっきはありがとう」

ペコと大袈裟に頭を下げて転びそうになる。

「あっと危ない、さっき…てなんだろ?君のこと知らないけどなぁ」

会ったことない子にお礼を言われる覚えはなかった。

「痛いのを助けてもらったの。でもお兄さんが痛いの…」

目に見えてシュンとする姿に可哀想になり慌てる。

「だ、大丈夫だよ。痛いって…」

じっとその子を見つめる。
大きな黒い瞳に金色のふわふわの髪の毛、人懐っこい可愛い顔にやはり見覚えはないが何かを思い出させた。

「あっ、あの時のキツネの子に色が似てるんだ」

口にしてしまい、しまったと口をおおった。

キツネに似てると言われていい気持ちはしないかもしれないと思ったがその子は嬉しそうに頬を紅葉させた。

「そうなの!ぼくは先程のキツネ、すごい…ぼくの正体がすぐにわかるなんて…」

キツネは正体がバレた事を嬉しそうにしていた。

「キツネの子?本当に?」

「うん!ほら!」

その子はその場でキツネに化けた。

ジャックはあまりの衝撃に言葉を無くして立ち尽くした。

「キツネって…人に化けれるんだ…」

「はい!でも内緒なの」

ニコッと笑う姿が可愛くて少し癒される。

「内緒なのに俺に言って大丈夫なのか?」

「あっ!」

キツネの子はどうしようと家の前をウロウロと歩きだした。

「そのままだと目立つからとりあえず家に入るかい?」

「いいの!?」

キツネの子はぴょん!と跳ねると嬉しそうにしっぽをふくらませた。

「ふふ、いいよ。さぁどうぞ」

ジャックは大きく戸を開いてキツネの子を迎え入れた。
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