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4.アイザック視点
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「見ろよ、アイザック。あそこで女が泣いてるぜ!」
友人の言葉に目を向けると確かに路地の影でドレスを着た女性がうずくまっていた。
顔を埋めてしゃくりあげる様子から泣いていると何となくわかった。
「傷ついてるなら慰めて仲良くなろうぜ!きっとあの格好なら良いとこのお嬢様だぞ」
友人が近づこうとするのを俺は止めた。
「馬鹿、それよりも仲良くなって信頼を勝ち取ってなんか甘い汁を吸う方がいいだろ?」
俺がニヤッと悪うと友人は呆れたように笑った。
「全くお前は悪知恵が働くよな。まぁいいぜ行こう」
俺はさらに友人を止める。
「こういうのは一人の方がいいんだよ、女の前に大の男が二人も居てみろ、怯えられるのがオチだ。だからここは俺に任せておけ、何かいいもん貰えたらお前にも分けてやるから」
友人は怪訝な顔をするがすぐに納得する。
「確かに顔がいいお前が行った方がいいな、よろしく頼むぜ」
友人に肩を叩かれて俺は泣いている女の元に向かった。
近づくがこちらの気配に気がつく様子はない。
もう少し近づいて影を落とすと女が顔をあげた。
その泣き顔をみて一瞬ハッとする…ここら辺では見ない綺麗な瞳が涙て赤くなっていた。
そして目の周りは赤く腫れて痛々しい…
彼女は俺に気がついてすぐに立ち去ろうとするのをやんわりと引き止めた。
優しく声をかけてやれば立ち止まって話を聞く、女なんてちょろいもんだと甘い顔で話を聞いてやる。
すると思った通り男に振られたところだった。
これはやり易いと俺は心の中でほくそ笑んだ…傷心の女ほど扱いやすいものはない。
話を聞くとどうも婚約者から振られたようだ、もう諦めたようとする彼女に味方になると励ました。
彼女の気持ちを慰めて仲良くなり信頼してもらおうと考えていた。
次の日に会う約束をしっかりととりつけてその場は別れた。
俺は早速行きつけの店へと向かうと友人が先に待っていた。
「おう、アイザック!首尾はどうだ?」
友人は酒を飲んでいるのか赤い顔で大声で聞いてくる。
俺は声を落として隣に座った。
「まぁまぁだな」
「そいつはいいな!」
「明日また会う約束があるから今日はこのまま帰るよ。しばらくここには来ないと思う」
「わかった、まぁ頑張ってくれ!」
友人に笑って手を上げて俺は店を出た。
しばらくはいい青年を演じないと行けないからこんなガラの悪い場所は避けないといけない。
俺は誰に見られてるわけでもないがそっとその場を去った。
次の日、早速昨日の場所で待っていると声をかけられる。
なんだと顔をあげると昨日の彼女のアイラだった。
急いで顔を作って笑いかけると挨拶をしてくる。
まずは協力するフリをしないとと話を始めようとするとアイラが食事を一緒にしないかと言ってきた。
俺は驚いて一瞬素の顔をしてしまう…こういう貴族は庶民とは食事をしないもんだと思っていた。
しかも昨日何気に貸した汚いハンカチを綺麗に洗って持ってきてくれたのだ。
広場に行き、ベンチに座るとカゴからパンを取り出した。
そしてそれをまずは俺にも渡してくれる。
美味そうな食事に大きな口でかぶりついた。
ふわふわなパンはなかなか食べられない高級なものだった。
一瞬で平らげると、アイラはまだ半分も食べていない。
俺はこれからの話をするとアイラは慌てた様子で早く食べようとしていた。
そして慌てすぎたのか口にパンをつけてしまう。
なんかほっとけない雰囲気に彼女に笑ってパンくずを取ってやった。
すると彼女は恥ずかしそうに頬を赤くしている。
ドキッ…
アイラの長いまつ毛が微かに揺れている。
下を向きながらモグモグと食べる様子はなんだか小動物のようだった。
なんか可愛いな…
自分の考えにハッとして慌ててかき消した。
彼女は婚約破棄された相手が好きなのだ…俺はそれを手助けする。
馬鹿な考えは捨てて俺はこれからのことに頭を回すことにした。
友人の言葉に目を向けると確かに路地の影でドレスを着た女性がうずくまっていた。
顔を埋めてしゃくりあげる様子から泣いていると何となくわかった。
「傷ついてるなら慰めて仲良くなろうぜ!きっとあの格好なら良いとこのお嬢様だぞ」
友人が近づこうとするのを俺は止めた。
「馬鹿、それよりも仲良くなって信頼を勝ち取ってなんか甘い汁を吸う方がいいだろ?」
俺がニヤッと悪うと友人は呆れたように笑った。
「全くお前は悪知恵が働くよな。まぁいいぜ行こう」
俺はさらに友人を止める。
「こういうのは一人の方がいいんだよ、女の前に大の男が二人も居てみろ、怯えられるのがオチだ。だからここは俺に任せておけ、何かいいもん貰えたらお前にも分けてやるから」
友人は怪訝な顔をするがすぐに納得する。
「確かに顔がいいお前が行った方がいいな、よろしく頼むぜ」
友人に肩を叩かれて俺は泣いている女の元に向かった。
近づくがこちらの気配に気がつく様子はない。
もう少し近づいて影を落とすと女が顔をあげた。
その泣き顔をみて一瞬ハッとする…ここら辺では見ない綺麗な瞳が涙て赤くなっていた。
そして目の周りは赤く腫れて痛々しい…
彼女は俺に気がついてすぐに立ち去ろうとするのをやんわりと引き止めた。
優しく声をかけてやれば立ち止まって話を聞く、女なんてちょろいもんだと甘い顔で話を聞いてやる。
すると思った通り男に振られたところだった。
これはやり易いと俺は心の中でほくそ笑んだ…傷心の女ほど扱いやすいものはない。
話を聞くとどうも婚約者から振られたようだ、もう諦めたようとする彼女に味方になると励ました。
彼女の気持ちを慰めて仲良くなり信頼してもらおうと考えていた。
次の日に会う約束をしっかりととりつけてその場は別れた。
俺は早速行きつけの店へと向かうと友人が先に待っていた。
「おう、アイザック!首尾はどうだ?」
友人は酒を飲んでいるのか赤い顔で大声で聞いてくる。
俺は声を落として隣に座った。
「まぁまぁだな」
「そいつはいいな!」
「明日また会う約束があるから今日はこのまま帰るよ。しばらくここには来ないと思う」
「わかった、まぁ頑張ってくれ!」
友人に笑って手を上げて俺は店を出た。
しばらくはいい青年を演じないと行けないからこんなガラの悪い場所は避けないといけない。
俺は誰に見られてるわけでもないがそっとその場を去った。
次の日、早速昨日の場所で待っていると声をかけられる。
なんだと顔をあげると昨日の彼女のアイラだった。
急いで顔を作って笑いかけると挨拶をしてくる。
まずは協力するフリをしないとと話を始めようとするとアイラが食事を一緒にしないかと言ってきた。
俺は驚いて一瞬素の顔をしてしまう…こういう貴族は庶民とは食事をしないもんだと思っていた。
しかも昨日何気に貸した汚いハンカチを綺麗に洗って持ってきてくれたのだ。
広場に行き、ベンチに座るとカゴからパンを取り出した。
そしてそれをまずは俺にも渡してくれる。
美味そうな食事に大きな口でかぶりついた。
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一瞬で平らげると、アイラはまだ半分も食べていない。
俺はこれからの話をするとアイラは慌てた様子で早く食べようとしていた。
そして慌てすぎたのか口にパンをつけてしまう。
なんかほっとけない雰囲気に彼女に笑ってパンくずを取ってやった。
すると彼女は恥ずかしそうに頬を赤くしている。
ドキッ…
アイラの長いまつ毛が微かに揺れている。
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なんか可愛いな…
自分の考えにハッとして慌ててかき消した。
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馬鹿な考えは捨てて俺はこれからのことに頭を回すことにした。
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