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カランッ!
「いらっしゃいませ」
私はお店の扉の音に笑顔で挨拶をする。
「あれ?準ちゃん奥さん迎えたの?」
すると来る常連さん達みんなに驚いた顔をされた。
「違うよ、従業員の高橋 結奈ちゃんだよ。僕とは七つも年が離れてるんだよ。失礼でしょ」
準一さんは今日何度目かの説明をする。
「なんだ、七つしか違わないなら十分大丈夫だろ」
「美琴だっているんだから……」
準一さんはそれよりもメニューは?と水をおいた。
「にしてもなんで急に従業員を?」
常連さんが聞く。
「前から募集してたんだけど美琴が雇う人雇う人嫌だと言ってね。最初に雇った人と少し揉めたからそれで嫌になったみたいで……」
「あー、あのケバい姉ちゃんか」
常連さんは思い出したように苦笑いする。
「私の前にいた人ですか?」
「ちょっと前だけどね、あの子準ちゃん目当てだったもんね。どんどん服とか派手になって露骨だったよ」
「え?そうなんですか?」
肝心の準一さんは気が付かなかったのか事実に驚いていた。
「あんなにあからさまにアピールされてたのにね」
常連さん達が笑いあっている。
「トラブルって何かあったんですか?」
「いや……僕が留守の間に美琴と喧嘩したらしくて、美琴があの人やだと言ったから申し訳ないけどやめてもらったんだよ。それから美琴がいいと言う人に働いてもらおうと思ったけどなかなかうんと言ってくれなくて」
「へー、じゃあ結奈ちゃんはそんな美琴ちゃんからいいと言われたんだ」
早速常連さん達からも下の名前でちゃん付けされた。
常連さんは私を上から下まで見ると納得したようにうんと頷く。
まぁ地味ですよ……
でもこんな落ち着いた素敵な店で派手な格好なんて似合わないししたくなかった。
「ちょっと、うちの従業員さんをそんなに見ないでくれますか?結奈ちゃん、サンドイッチの用意してくれる?」
準一さんは常連さんに厳しく声をかけたあと私に優しく声をかけた。
普通逆じゃ、とも思ったが嬉しくないと言えば嘘になる。
「はい」
私はカウンターを通って厨房に向かった。
「なんだ、なんだ?準ちゃん満更でもない感じか?」
「小林さんいい加減にしてくれる?」
父の頃からの常連の小林さんにニヤニヤと見つめられて居心地悪くなるが平気な振りをした。
ようやく働いてくれた結奈ちゃんが嫌な思いをして辞められるのが困るだけだ。
あの視線が嫌なわけじゃない。
それにこんなおじさんに若い子なんていい迷惑なだけだ。
自分で自分に言い聞かせた。
店に出るあの日、結奈ちゃんは白いシンプルなブラウスに黒いスカートをはいて見せてきた。
「これでどうですか?」
シンプルな服を着こなして見せて貰う。
「うん、すごく似合うよ」
「ち、違います。お店に出る服としていいですか……と」
結奈ちゃんは恥ずかしそうに頬を赤くしてしまった。
「あぁ、すごくいいね。でも結奈ちゃんの好きな服でいいんだよ」
「あの店ではこういう方が合ってますよね。私の服でイメージを壊したくないですから」
結奈ちゃんは満足そうに店のエプロンと合わせて鏡を見ていた。
そんな風に思ってくれてたのか……
今までの従業員は自分を着飾る子が多かったので結奈ちゃんのような子は新鮮だった。
コーヒーの香りを消すような香水に二倍に盛り上がった髪からは甘ったるい匂いを放つ女性。
どうもこの店に面接に来る子はそういう人が多かったのだ。
「サンドイッチ用意出来ました」
そう言ってサンドイッチを持ってくる結奈ちゃんは香水は一切付けずに髪もシンプルに後ろに一本に縛っている。
初日なのにテーブルが空けばすぐに片付けいき、テキパキと動いてくれていた。
いい子が来てくれた。
このまま長くいてくれるといいな……
準一は楽しそうに働いてくれる結奈に好感しか持てなかった。
「いらっしゃいませ」
私はお店の扉の音に笑顔で挨拶をする。
「あれ?準ちゃん奥さん迎えたの?」
すると来る常連さん達みんなに驚いた顔をされた。
「違うよ、従業員の高橋 結奈ちゃんだよ。僕とは七つも年が離れてるんだよ。失礼でしょ」
準一さんは今日何度目かの説明をする。
「なんだ、七つしか違わないなら十分大丈夫だろ」
「美琴だっているんだから……」
準一さんはそれよりもメニューは?と水をおいた。
「にしてもなんで急に従業員を?」
常連さんが聞く。
「前から募集してたんだけど美琴が雇う人雇う人嫌だと言ってね。最初に雇った人と少し揉めたからそれで嫌になったみたいで……」
「あー、あのケバい姉ちゃんか」
常連さんは思い出したように苦笑いする。
「私の前にいた人ですか?」
「ちょっと前だけどね、あの子準ちゃん目当てだったもんね。どんどん服とか派手になって露骨だったよ」
「え?そうなんですか?」
肝心の準一さんは気が付かなかったのか事実に驚いていた。
「あんなにあからさまにアピールされてたのにね」
常連さん達が笑いあっている。
「トラブルって何かあったんですか?」
「いや……僕が留守の間に美琴と喧嘩したらしくて、美琴があの人やだと言ったから申し訳ないけどやめてもらったんだよ。それから美琴がいいと言う人に働いてもらおうと思ったけどなかなかうんと言ってくれなくて」
「へー、じゃあ結奈ちゃんはそんな美琴ちゃんからいいと言われたんだ」
早速常連さん達からも下の名前でちゃん付けされた。
常連さんは私を上から下まで見ると納得したようにうんと頷く。
まぁ地味ですよ……
でもこんな落ち着いた素敵な店で派手な格好なんて似合わないししたくなかった。
「ちょっと、うちの従業員さんをそんなに見ないでくれますか?結奈ちゃん、サンドイッチの用意してくれる?」
準一さんは常連さんに厳しく声をかけたあと私に優しく声をかけた。
普通逆じゃ、とも思ったが嬉しくないと言えば嘘になる。
「はい」
私はカウンターを通って厨房に向かった。
「なんだ、なんだ?準ちゃん満更でもない感じか?」
「小林さんいい加減にしてくれる?」
父の頃からの常連の小林さんにニヤニヤと見つめられて居心地悪くなるが平気な振りをした。
ようやく働いてくれた結奈ちゃんが嫌な思いをして辞められるのが困るだけだ。
あの視線が嫌なわけじゃない。
それにこんなおじさんに若い子なんていい迷惑なだけだ。
自分で自分に言い聞かせた。
店に出るあの日、結奈ちゃんは白いシンプルなブラウスに黒いスカートをはいて見せてきた。
「これでどうですか?」
シンプルな服を着こなして見せて貰う。
「うん、すごく似合うよ」
「ち、違います。お店に出る服としていいですか……と」
結奈ちゃんは恥ずかしそうに頬を赤くしてしまった。
「あぁ、すごくいいね。でも結奈ちゃんの好きな服でいいんだよ」
「あの店ではこういう方が合ってますよね。私の服でイメージを壊したくないですから」
結奈ちゃんは満足そうに店のエプロンと合わせて鏡を見ていた。
そんな風に思ってくれてたのか……
今までの従業員は自分を着飾る子が多かったので結奈ちゃんのような子は新鮮だった。
コーヒーの香りを消すような香水に二倍に盛り上がった髪からは甘ったるい匂いを放つ女性。
どうもこの店に面接に来る子はそういう人が多かったのだ。
「サンドイッチ用意出来ました」
そう言ってサンドイッチを持ってくる結奈ちゃんは香水は一切付けずに髪もシンプルに後ろに一本に縛っている。
初日なのにテーブルが空けばすぐに片付けいき、テキパキと動いてくれていた。
いい子が来てくれた。
このまま長くいてくれるといいな……
準一は楽しそうに働いてくれる結奈に好感しか持てなかった。
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