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私は今住んでいる住まいを退去してかぎしっぽへと荷物を送った。
部屋がひとつで狭くなるので必要最低限の物だけ運びあとはネットオークションやリサイクルショップに売った。
そのお金を引っ越し費用にあてた。
「じゃあ明日からよろしくね」
荷物を運び終えると仕事は明日でいいと今日は部屋の片付けをしてていいと言われる。
私は言葉に甘えてなるべくうるさくならないように部屋の片付けに集中した。
「ふー!どうにか終わった」
タンスや収納スペースはついていたのでそれに服や荷物をしまう。
そんなに多くなかったので夜までにはなんとか片付いた。
するとトントンと扉をノックされる。
「結奈さん、終わった?」
美琴ちゃんが扉を開いて顔を覗かせた。
「うん、ちょっど終わったよ。どうかな?」
美琴ちゃんに中に入って見てくれと手招きする。
「お邪魔します……」
美琴ちゃんは部屋に入って中をジロジロと観察する。
「へー、なんか結奈さんの部屋ってもっと女の子らしいかと思ったけど……結構普通」
痛い事を言われてしまった。
そう、私は女性らしい部屋が嫌いだった。
どちらかと言うとスッキリ何もない感じが好きなのだ。
「あっ、ぬいぐるみがある」
唯一飾ってあるぬいぐるみに美琴ちゃんは目を向けた。
「子供の頃から持ってるぬいぐるみなんだ」
それは霊感に気がつく前におばあちゃんに買ってもらった唯一のぬいぐるみだった。
その後、親にもぬいぐるみを買ってもらったがそのぬいぐるみには幽霊がつきやすく私は触るのも嫌がりそれから親は何も買ってくれなくなった。
このぬいぐるみだけは霊が寄り付かないのでお守り代わりに持っていた。
「可愛いね」
美琴ちゃんはもうヨレヨレのぬいぐるみを可愛いと笑ってくれる。
「ありがとう」
「お父さんがご飯作ってくれてるよ、行こ」
美琴ちゃんはぬいぐるみを置くと私の手を引いて部屋をでた。
下に降りるともういい香りがしていた。
お昼もろくに食べないで作業をしていたのでたまらない。
「わー!」
店に行くともう営業は終えていて真ん中のテーブルに料理がたくさん並んでいた。
「今日は結奈ちゃんの転職祝いだからお店は早めに閉めたんだよ」
準一さんは笑顔でそう言ってくれた。
「え、私の為に?」
「もちろん、明日から一緒に住むんだ。よろしくね」
「結奈さんよろしく」
美琴ちゃんはジュースを持ってきてくれた。
「あ、ありがとうございます……」
私は嬉しさのあまり言葉につまり俯いてしまった。
「ゆ、結奈ちゃん?」
「どうしたの!?」
二人は心配して声をかけてくれた。
「お父さんが名前で呼ぶから嫌がったんだよ!」
「え?ほ、本当に、ごめんね高橋さん」
「ち、違います。二人の気持ちが嬉しくて……私家族にもこんなお祝いしてもらった事ない」
私は頑張って笑顔を作り二人にお礼を言った。
「これからは僕らが家族になるよ」
準一さんがそっと私の肩に手を置いてくれる。
「お父さん、それセクハラだよ」
「え!?」
「ふふ、大丈夫です」
慌てて手を退ける準一さんに思わず笑ってしまった。
「さぁ料理が冷めないうちに食べよう」
「はい!」
私はその日が忘れられないほど嬉しい日となった。
部屋がひとつで狭くなるので必要最低限の物だけ運びあとはネットオークションやリサイクルショップに売った。
そのお金を引っ越し費用にあてた。
「じゃあ明日からよろしくね」
荷物を運び終えると仕事は明日でいいと今日は部屋の片付けをしてていいと言われる。
私は言葉に甘えてなるべくうるさくならないように部屋の片付けに集中した。
「ふー!どうにか終わった」
タンスや収納スペースはついていたのでそれに服や荷物をしまう。
そんなに多くなかったので夜までにはなんとか片付いた。
するとトントンと扉をノックされる。
「結奈さん、終わった?」
美琴ちゃんが扉を開いて顔を覗かせた。
「うん、ちょっど終わったよ。どうかな?」
美琴ちゃんに中に入って見てくれと手招きする。
「お邪魔します……」
美琴ちゃんは部屋に入って中をジロジロと観察する。
「へー、なんか結奈さんの部屋ってもっと女の子らしいかと思ったけど……結構普通」
痛い事を言われてしまった。
そう、私は女性らしい部屋が嫌いだった。
どちらかと言うとスッキリ何もない感じが好きなのだ。
「あっ、ぬいぐるみがある」
唯一飾ってあるぬいぐるみに美琴ちゃんは目を向けた。
「子供の頃から持ってるぬいぐるみなんだ」
それは霊感に気がつく前におばあちゃんに買ってもらった唯一のぬいぐるみだった。
その後、親にもぬいぐるみを買ってもらったがそのぬいぐるみには幽霊がつきやすく私は触るのも嫌がりそれから親は何も買ってくれなくなった。
このぬいぐるみだけは霊が寄り付かないのでお守り代わりに持っていた。
「可愛いね」
美琴ちゃんはもうヨレヨレのぬいぐるみを可愛いと笑ってくれる。
「ありがとう」
「お父さんがご飯作ってくれてるよ、行こ」
美琴ちゃんはぬいぐるみを置くと私の手を引いて部屋をでた。
下に降りるともういい香りがしていた。
お昼もろくに食べないで作業をしていたのでたまらない。
「わー!」
店に行くともう営業は終えていて真ん中のテーブルに料理がたくさん並んでいた。
「今日は結奈ちゃんの転職祝いだからお店は早めに閉めたんだよ」
準一さんは笑顔でそう言ってくれた。
「え、私の為に?」
「もちろん、明日から一緒に住むんだ。よろしくね」
「結奈さんよろしく」
美琴ちゃんはジュースを持ってきてくれた。
「あ、ありがとうございます……」
私は嬉しさのあまり言葉につまり俯いてしまった。
「ゆ、結奈ちゃん?」
「どうしたの!?」
二人は心配して声をかけてくれた。
「お父さんが名前で呼ぶから嫌がったんだよ!」
「え?ほ、本当に、ごめんね高橋さん」
「ち、違います。二人の気持ちが嬉しくて……私家族にもこんなお祝いしてもらった事ない」
私は頑張って笑顔を作り二人にお礼を言った。
「これからは僕らが家族になるよ」
準一さんがそっと私の肩に手を置いてくれる。
「お父さん、それセクハラだよ」
「え!?」
「ふふ、大丈夫です」
慌てて手を退ける準一さんに思わず笑ってしまった。
「さぁ料理が冷めないうちに食べよう」
「はい!」
私はその日が忘れられないほど嬉しい日となった。
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