お化けが見えるだけなのに……

三園 七詩

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「それは大変でしたね」

店主さんは聞き上手で時折あいずちを打ちながら話を聞いてくれた。

「いや、自分が悪いんですけどね……それよりも早く仕事と家を見つけないと」

はぁ……と肩でため息をつくと店主さんは何か考える感じでちょっと待って下さいとカウンターに戻ってしまった。

そして紙を一枚持って戻ってくる。

「実はうちも従業員を探してて、お給料はそんなに高くないですが住み込み付きなんです」

そう言って手作りの求人広告を見せてくれた。

店内に合った可愛い広告にほっこりとする。

内容を見ると確かに給料は減るが家賃が格安でどうにか暮らして行ける気がした。

「結構募集が多かったんですが……娘の合格がなかなか貰えなくて、諦めかけていたんですよ」

「え?私で大丈夫ですか?」

「君の美味しそうに食べる姿に僕なら大丈夫って思ったので声をかけました。よかったら面接しますか?」

「お願いします!」

私は店内に似つかわしくない大声を出してしまった。


面接は三日後の三時頃に行われる事となり結奈はお店にお礼を言って後にした。

しかし娘さんの面接があるとはどんなことなんだろう?

しかもなかなか合格を貰えないらしい。

結奈は早速履歴書を買いにコンビニへと向かった。


そして三日後、結奈は店の前まで来た。

この時間はお店が閉まっているがそのまま入ってきて欲しいと言われていた。

「失礼します」

CLOSEと隠れた看板の下がる扉を開いて声をかける。

「いらっしゃいませ」

すると店主さんがカウンターで私が来るのを待っていてくれていたようだ。

「今日はよろしくお願いします」

この前と同じスーツ姿で私は頭を下げた。

「そんなにかしこまらなくて大丈夫だよ。娘の美琴が二階で待ってるよ」

「は、はい!あのこれ履歴書です!」

私は店主さんに履歴書を渡した。

「はい、受け取りました。じゃあここからどうぞ」

カウンターを入り裏に回ると厨房がある。
厨房の横に扉がついておりそこを抜けると奥に部屋と階段があった。

「僕はほとんど一階に住んでるんだ。二階は娘の部屋と結奈さんが住む予定の部屋があるよ」

二階へと行くように言われて私は靴を脱いで部屋に入り二階へと向かう。

二階には扉が三つありその一つがスっと開くと小学生くらいの女の子が顔を出した。

「こんにちわ」

娘さんの妹かな?と私は笑顔で挨拶をした。

「美琴さんはいますか?面接に来た結奈って言います」

妹さんに笑いかけながら聞いてみると……

「私が美琴……」

「え!?」

その小学生が美琴さんだった!

「ご、ごめんね!いや、すみません……」

まさか面接するのが小学生とは思わずに慌ててしまう。

「こっち来て」

美琴ちゃんは慣れているのか私のリアクションに反応せずに中へ入れと言う。

「失礼します……」

まさかドッキリか何かなのかと思い中へ入るがそこには美琴ちゃんしかいなかった。

いや、正確にはもう一人いたが……

私はそちらをチラッと見てから美琴ちゃんに目を合わせた。
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