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変わらない態度
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皆のお昼ご飯の用意をしているとゼンさんがじっとこちらを見つめて声をかけてきた。
「充もここにだいぶ慣れてきたな」
「え?そう…ですかね?」
テキパキと厨房の中を動き回りながら返事をする。
一度自分の好きなように置き場を変えてからさらに料理を作るのが楽しくなっていた。
「でもさー猫又と暮らすなんて抵抗ないのかよ」
今更ながらゼンさんが聞いてくる。
少し考えて充は答えた。
「そうですね、最初は悩みましたけど…皆さんいつもは人の姿だし、今は気にならないって言うか…っていうかゼンさんの猫の姿見たこと無いですね」
そういえばとゼンさんを見た。
「俺か?俺は寅吉さんと一緒の茶トラだよ」
「へー!」
充は手を止めてゼンさんに視線を向ける。
「え、何?」
ゼンさんが充の視線に顔を引き攣る。
「え、何って変化してくれないんですか?」
「見たいの?俺の?猫の姿を?」
「見たいです」
充はコクコクと頷いた。
充の期待のこもった瞳にゼンは仕方ないと席を立った。
「じゃあいくぞ」
ふく達と同じようにくるっと一回転して着地すると同時にそこには1匹の茶トラ猫がいた。
寅吉さんも茶トラ猫だったがもっと毛足が長くて尻尾もふわふわで太かった気がする。
ゼンさんは寅吉さんよりは毛足が短くピンとした髭から若々しさを感じる。
尻尾まで縞模様が入っていてクリクリの瞳で充を見上げて「にゃ~ん」とふく達より太い声で鳴いた。
「ゼンさん、可愛いですね…ちょっと触ってもいいですか?」
充が恐る恐る手を伸ばすとペシっと前足ではたかれた。
「痛っ!」
残念と肩を落としてはぁ…とため息をつくとゼンさんはウロウロと周りを歩いて仕方なさそうに頭を出した。
「え!いいんですか!ありがとうございます!」
ゼンさんの気が変わらないうちに充は急いで頭を撫でた。
ふく達の柔らかい毛よりはしっかりとしているがそれでも十分にふわふわで艶々だった。
「やっぱり猫は可愛いな」
充に撫でられてゼンはゴロゴロと喉を鳴らしてしまう。
こんな風に撫でられたのはいつぶりだろう…
目を閉じてゴロゴロ言っていると充の手が喉元に伸びてきた。
優しく心地いい強さで撫でる充の手は気持ちよく抗えない。
「ゼンさんも毛艶いいですね」
「にゃ…ぁ」
お前のおかげだよと言ったが猫の言葉で伝わらない。
このまましりの方まで撫でるのに許しそうになると…
「「にゃー!」」
ふくとまるが自分達もとゼンの体に飛びかかってきた。
充の手の間に入り込み撫でてもらっている。
気持ちよさそうな二人にゼンは正気を取り戻した。
すぐに変化を解いて人の姿に戻ると、服を正した。
「ゼンさんありがとうございました、たまには触らせて下さいね」
充はそんな狼狽えるゼンに気がついた様子もなく触れと騒ぐ二人を膝に抱きながら撫でていた。
「ま、まぁたまにならいいぞ」
トロンと気持ちよさそうにとろけるふく達に充に慣れる理由が少しわかった気がした。
猫の姿になった自分になんの嫌悪感も感じなかった。
まぁ日頃ふく達の変化を見ているからかもしれないが…
でもそんなちょっとした事が猫又達にとって嬉しい事だと充は気がついていなかった。
「さぁ変化も見せたからな、今日の昼飯はサービスしてくれるんだろ!」
昼飯と聞いてふく達もばっと立ち上がる。
「はいはいわかりましたよ。ゼンさんの分は多めにしておきます」
「ふくもー」
「まるもー」
「わかったよ」
充は三人の為に昼飯を準備する事にした。
「充もここにだいぶ慣れてきたな」
「え?そう…ですかね?」
テキパキと厨房の中を動き回りながら返事をする。
一度自分の好きなように置き場を変えてからさらに料理を作るのが楽しくなっていた。
「でもさー猫又と暮らすなんて抵抗ないのかよ」
今更ながらゼンさんが聞いてくる。
少し考えて充は答えた。
「そうですね、最初は悩みましたけど…皆さんいつもは人の姿だし、今は気にならないって言うか…っていうかゼンさんの猫の姿見たこと無いですね」
そういえばとゼンさんを見た。
「俺か?俺は寅吉さんと一緒の茶トラだよ」
「へー!」
充は手を止めてゼンさんに視線を向ける。
「え、何?」
ゼンさんが充の視線に顔を引き攣る。
「え、何って変化してくれないんですか?」
「見たいの?俺の?猫の姿を?」
「見たいです」
充はコクコクと頷いた。
充の期待のこもった瞳にゼンは仕方ないと席を立った。
「じゃあいくぞ」
ふく達と同じようにくるっと一回転して着地すると同時にそこには1匹の茶トラ猫がいた。
寅吉さんも茶トラ猫だったがもっと毛足が長くて尻尾もふわふわで太かった気がする。
ゼンさんは寅吉さんよりは毛足が短くピンとした髭から若々しさを感じる。
尻尾まで縞模様が入っていてクリクリの瞳で充を見上げて「にゃ~ん」とふく達より太い声で鳴いた。
「ゼンさん、可愛いですね…ちょっと触ってもいいですか?」
充が恐る恐る手を伸ばすとペシっと前足ではたかれた。
「痛っ!」
残念と肩を落としてはぁ…とため息をつくとゼンさんはウロウロと周りを歩いて仕方なさそうに頭を出した。
「え!いいんですか!ありがとうございます!」
ゼンさんの気が変わらないうちに充は急いで頭を撫でた。
ふく達の柔らかい毛よりはしっかりとしているがそれでも十分にふわふわで艶々だった。
「やっぱり猫は可愛いな」
充に撫でられてゼンはゴロゴロと喉を鳴らしてしまう。
こんな風に撫でられたのはいつぶりだろう…
目を閉じてゴロゴロ言っていると充の手が喉元に伸びてきた。
優しく心地いい強さで撫でる充の手は気持ちよく抗えない。
「ゼンさんも毛艶いいですね」
「にゃ…ぁ」
お前のおかげだよと言ったが猫の言葉で伝わらない。
このまましりの方まで撫でるのに許しそうになると…
「「にゃー!」」
ふくとまるが自分達もとゼンの体に飛びかかってきた。
充の手の間に入り込み撫でてもらっている。
気持ちよさそうな二人にゼンは正気を取り戻した。
すぐに変化を解いて人の姿に戻ると、服を正した。
「ゼンさんありがとうございました、たまには触らせて下さいね」
充はそんな狼狽えるゼンに気がついた様子もなく触れと騒ぐ二人を膝に抱きながら撫でていた。
「ま、まぁたまにならいいぞ」
トロンと気持ちよさそうにとろけるふく達に充に慣れる理由が少しわかった気がした。
猫の姿になった自分になんの嫌悪感も感じなかった。
まぁ日頃ふく達の変化を見ているからかもしれないが…
でもそんなちょっとした事が猫又達にとって嬉しい事だと充は気がついていなかった。
「さぁ変化も見せたからな、今日の昼飯はサービスしてくれるんだろ!」
昼飯と聞いてふく達もばっと立ち上がる。
「はいはいわかりましたよ。ゼンさんの分は多めにしておきます」
「ふくもー」
「まるもー」
「わかったよ」
充は三人の為に昼飯を準備する事にした。
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