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再会
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ぺろぺろ
充は頬を舐められる感覚に目を覚ます。
またあいつらか…
そう思い目を開くと目の前は真っ青な空だった。
「あっ…」
そうか俺はもう家なしだった。
外だというのに疲れからグッスリと眠りこけてしまっていたようだ。
「にゃ~ん!」
「え!?」
いつもの鳴き声に驚いて声の方を見るとあの二匹の仔猫が俺の手から落ちたかつお節を食べていた。
「なんでお前ら…」
この公園は初めて来た公園だ、たまたまたどり着いた場所だからこいつらがいるのはおかしい。
不思議に思っていると少し離れてあのトラ猫が二匹を見守る保護者のように座っていた。
そして目が合うと立ち上がって歩き出す。
チラッと振り返っては歩く…まるで着いてこいと言うように…
「「にゃー!」」
仔猫達は俺のズボンの裾を噛んで引っ張った。
「なんだ?着いて来いってか?」
冗談でそう言うと…「「「にゃー!」」」三匹が同時に鳴いた。
「はは、頭までおかしくなったかな。でももう失うものは何んにもないもんな…」
俺はトラ猫の後をついて行こうと足を前に出すと仔猫達が引っ張るのをやめた。
そしてトラ猫と並びながら俺の前を歩く…ついて行くと見覚えのあるあの土手へとやってきた。
「あれ?この場所…」
案の定あの墓らしき場所まで行った。
「ここは墓じゃないのか、お前らトラ猫の親がいるもんな」
墓の前に座る仔猫に声をかける。
仔猫は悲しそうに振り返って頭を下げた。
そのあまりに悲しげな様子にたじろいでしまった。
「それはこの子らの母親の墓じゃ」
「え?」
突然の声に驚き振り返るとあのトラ猫と同じような柄の着物を着た、白いあごひげの小さいおじいさんが立っていた。
そしてトラ猫の姿は何処にも無い。
「え?あ、あなたは?」
いつの間にこんな近くにいたのだろう?
充は話しかけるとそのおじいさんが近づいてくる。
「わしは寅吉じゃ、この子らの祖父じゃ」
そう言って仔猫を見つめた。
「あ…ああ!この仔猫達の飼い主さんですね」
「違う、祖父だ」
なるほど猫達を本当の孫のように可愛がっているのか…
充はわかったと頷いた。
「あんた見たところ住む場所も何も無いようだな」
荷物を見つめて寅吉さんが問いかける。
「は、はい…」
恥ずかしくて下を向くと、寅吉さんが続けた。
「ならあんたに仕事を頼みたい」
「え!?」
充は今一番欲しい言葉に目を見開いた。
「その子らの世話を頼みたいんじゃ」
「この仔猫達の?」
そうだと寅吉さんが頷いた。
「やります!なんでもやります!」
充は話の内容を聞く前に勢いよく頷いた。
「世話は朝から晩までずっとじゃ、わしらの家に住んでもらうぞ」
「願ってもない!」
希望が見えて充は声が大きくなる。
「では屋敷にきて、契約をしてもらう」
「はい!」
「着いてこい」
「はい!」
寅吉さんが歩き出すと充は仔猫達を抱き上げた。
「お前らありがとう!」
二匹にお礼を言って足取り軽く寅吉さんの後を追いかけた!
充は頬を舐められる感覚に目を覚ます。
またあいつらか…
そう思い目を開くと目の前は真っ青な空だった。
「あっ…」
そうか俺はもう家なしだった。
外だというのに疲れからグッスリと眠りこけてしまっていたようだ。
「にゃ~ん!」
「え!?」
いつもの鳴き声に驚いて声の方を見るとあの二匹の仔猫が俺の手から落ちたかつお節を食べていた。
「なんでお前ら…」
この公園は初めて来た公園だ、たまたまたどり着いた場所だからこいつらがいるのはおかしい。
不思議に思っていると少し離れてあのトラ猫が二匹を見守る保護者のように座っていた。
そして目が合うと立ち上がって歩き出す。
チラッと振り返っては歩く…まるで着いてこいと言うように…
「「にゃー!」」
仔猫達は俺のズボンの裾を噛んで引っ張った。
「なんだ?着いて来いってか?」
冗談でそう言うと…「「「にゃー!」」」三匹が同時に鳴いた。
「はは、頭までおかしくなったかな。でももう失うものは何んにもないもんな…」
俺はトラ猫の後をついて行こうと足を前に出すと仔猫達が引っ張るのをやめた。
そしてトラ猫と並びながら俺の前を歩く…ついて行くと見覚えのあるあの土手へとやってきた。
「あれ?この場所…」
案の定あの墓らしき場所まで行った。
「ここは墓じゃないのか、お前らトラ猫の親がいるもんな」
墓の前に座る仔猫に声をかける。
仔猫は悲しそうに振り返って頭を下げた。
そのあまりに悲しげな様子にたじろいでしまった。
「それはこの子らの母親の墓じゃ」
「え?」
突然の声に驚き振り返るとあのトラ猫と同じような柄の着物を着た、白いあごひげの小さいおじいさんが立っていた。
そしてトラ猫の姿は何処にも無い。
「え?あ、あなたは?」
いつの間にこんな近くにいたのだろう?
充は話しかけるとそのおじいさんが近づいてくる。
「わしは寅吉じゃ、この子らの祖父じゃ」
そう言って仔猫を見つめた。
「あ…ああ!この仔猫達の飼い主さんですね」
「違う、祖父だ」
なるほど猫達を本当の孫のように可愛がっているのか…
充はわかったと頷いた。
「あんた見たところ住む場所も何も無いようだな」
荷物を見つめて寅吉さんが問いかける。
「は、はい…」
恥ずかしくて下を向くと、寅吉さんが続けた。
「ならあんたに仕事を頼みたい」
「え!?」
充は今一番欲しい言葉に目を見開いた。
「その子らの世話を頼みたいんじゃ」
「この仔猫達の?」
そうだと寅吉さんが頷いた。
「やります!なんでもやります!」
充は話の内容を聞く前に勢いよく頷いた。
「世話は朝から晩までずっとじゃ、わしらの家に住んでもらうぞ」
「願ってもない!」
希望が見えて充は声が大きくなる。
「では屋敷にきて、契約をしてもらう」
「はい!」
「着いてこい」
「はい!」
寅吉さんが歩き出すと充は仔猫達を抱き上げた。
「お前らありがとう!」
二匹にお礼を言って足取り軽く寅吉さんの後を追いかけた!
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