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プロローグ 出会い

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「はぁっ、はぁっ!」

坂口充は息をきらせながら目的地まで全速力で走っていた。

今日はバイトの面接があるのに遅刻しそうになっていたからだ。

「やばい!これを逃したら…」

時計を見るとあと五分で面接の時間になる。

もう限界に近い足をさらにあげて加速すると、チラッと道の反対側に仔猫が二匹いるのが見えた。

なんか嫌な予感にスピードを少しだけ落としてチラッチラッと仔猫たちを見る。

二匹は道路を渡ろうとしているのかウロウロとしながら道を走る車の様子をうかがっていた。

「今は無理、お願いだから引き返せ」

心の中で強く願いながら、もう見るのをやめようと前に集中する。

するとガー!と遠くから大きな車の音がしてきた。

音からして大型の車のようだった。

まさかな…

充はよせばいいのに後ろを振り返ってしまった。

すると案の定、仔猫は寄り添いあいながら道をトコトコと渡っている。

大きなトラックの運転手は小さな仔猫達に気がついていなかった。

スピードを落とすことなく真っ直ぐに仔猫達に向かっている。

「クソ!」

充はUターンして走っていた道をグルっと引き返した。

道路に出てトラックの運転手に大きく手を振る。

「止まれー!」

声をかけながら仔猫に向かい走った。

仔猫達は大きなトラックと音に足が竦んでいるのか身を寄せあい固まっていた。

運転手は充に気が付き慌ててスピードを落とす。

充は最後の力を振り絞って仔猫達を掴み歩道にダイブした!

ブー!!

「危ねぇだろ!」

運転手の怒鳴り声が聞こえてトラックの音が遠ざかる。

歩道の生垣にダイブした充は腕の中をそっと見つめた。

そこには目をつむっている小さな仔猫が二匹いる。
見た感じ大きな怪我などは無いように見えるが、驚きのあまり気を失っていたが息はちゃんとしている。

「よかった…」

充はフーっと自分も大きく息を吐いて空を見上げた。

太陽が真上にあるのを確認して慌てて時間を思い出す。

「やばっ!」

こんなのんびりしてる場合じゃなかった!

立ち上がろうとすると…ガクッと足から崩れ落ちる。

足首に痛みが走った。

見ると足首が赤く腫れている。

折れては無さそうだが、走るのはもう無理そうだった。

「はぁ…」

今度こそ全身の力を抜いて地面に寝そべった。


しばらくそうしてとジロジロと歩行者に見られるので仕方なく立ち上がる。

仔猫達は起きる様子は無かった。

そのままにもしておけず充はタオルを取り出して二匹を包むと家へと戻って行った。


◆◆◆


「やっと着いたー!」

足を引きずりながら帰ったのでいつもの倍時間が経ってしまった。

バイトの面接に連絡はしたものの来れないなら他の人に決まると言われた。
どうにかならないかと食い下がったが遅刻する人を雇う気は無いとはっきりと言われてしまった。

充は家に着くと着の身着のまま倒れ込んだ。

「疲れた…」

身も心も疲れた充はそのまま床で眠ってしまった。


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