1 / 53
プロローグ 出会い
しおりを挟む
「はぁっ、はぁっ!」
坂口充は息をきらせながら目的地まで全速力で走っていた。
今日はバイトの面接があるのに遅刻しそうになっていたからだ。
「やばい!これを逃したら…」
時計を見るとあと五分で面接の時間になる。
もう限界に近い足をさらにあげて加速すると、チラッと道の反対側に仔猫が二匹いるのが見えた。
なんか嫌な予感にスピードを少しだけ落としてチラッチラッと仔猫たちを見る。
二匹は道路を渡ろうとしているのかウロウロとしながら道を走る車の様子をうかがっていた。
「今は無理、お願いだから引き返せ」
心の中で強く願いながら、もう見るのをやめようと前に集中する。
するとガー!と遠くから大きな車の音がしてきた。
音からして大型の車のようだった。
まさかな…
充はよせばいいのに後ろを振り返ってしまった。
すると案の定、仔猫は寄り添いあいながら道をトコトコと渡っている。
大きなトラックの運転手は小さな仔猫達に気がついていなかった。
スピードを落とすことなく真っ直ぐに仔猫達に向かっている。
「クソ!」
充はUターンして走っていた道をグルっと引き返した。
道路に出てトラックの運転手に大きく手を振る。
「止まれー!」
声をかけながら仔猫に向かい走った。
仔猫達は大きなトラックと音に足が竦んでいるのか身を寄せあい固まっていた。
運転手は充に気が付き慌ててスピードを落とす。
充は最後の力を振り絞って仔猫達を掴み歩道にダイブした!
ブー!!
「危ねぇだろ!」
運転手の怒鳴り声が聞こえてトラックの音が遠ざかる。
歩道の生垣にダイブした充は腕の中をそっと見つめた。
そこには目をつむっている小さな仔猫が二匹いる。
見た感じ大きな怪我などは無いように見えるが、驚きのあまり気を失っていたが息はちゃんとしている。
「よかった…」
充はフーっと自分も大きく息を吐いて空を見上げた。
太陽が真上にあるのを確認して慌てて時間を思い出す。
「やばっ!」
こんなのんびりしてる場合じゃなかった!
立ち上がろうとすると…ガクッと足から崩れ落ちる。
足首に痛みが走った。
見ると足首が赤く腫れている。
折れては無さそうだが、走るのはもう無理そうだった。
「はぁ…」
今度こそ全身の力を抜いて地面に寝そべった。
しばらくそうしてとジロジロと歩行者に見られるので仕方なく立ち上がる。
仔猫達は起きる様子は無かった。
そのままにもしておけず充はタオルを取り出して二匹を包むと家へと戻って行った。
◆◆◆
「やっと着いたー!」
足を引きずりながら帰ったのでいつもの倍時間が経ってしまった。
バイトの面接に連絡はしたものの来れないなら他の人に決まると言われた。
どうにかならないかと食い下がったが遅刻する人を雇う気は無いとはっきりと言われてしまった。
充は家に着くと着の身着のまま倒れ込んだ。
「疲れた…」
身も心も疲れた充はそのまま床で眠ってしまった。
坂口充は息をきらせながら目的地まで全速力で走っていた。
今日はバイトの面接があるのに遅刻しそうになっていたからだ。
「やばい!これを逃したら…」
時計を見るとあと五分で面接の時間になる。
もう限界に近い足をさらにあげて加速すると、チラッと道の反対側に仔猫が二匹いるのが見えた。
なんか嫌な予感にスピードを少しだけ落としてチラッチラッと仔猫たちを見る。
二匹は道路を渡ろうとしているのかウロウロとしながら道を走る車の様子をうかがっていた。
「今は無理、お願いだから引き返せ」
心の中で強く願いながら、もう見るのをやめようと前に集中する。
するとガー!と遠くから大きな車の音がしてきた。
音からして大型の車のようだった。
まさかな…
充はよせばいいのに後ろを振り返ってしまった。
すると案の定、仔猫は寄り添いあいながら道をトコトコと渡っている。
大きなトラックの運転手は小さな仔猫達に気がついていなかった。
スピードを落とすことなく真っ直ぐに仔猫達に向かっている。
「クソ!」
充はUターンして走っていた道をグルっと引き返した。
道路に出てトラックの運転手に大きく手を振る。
「止まれー!」
声をかけながら仔猫に向かい走った。
仔猫達は大きなトラックと音に足が竦んでいるのか身を寄せあい固まっていた。
運転手は充に気が付き慌ててスピードを落とす。
充は最後の力を振り絞って仔猫達を掴み歩道にダイブした!
ブー!!
「危ねぇだろ!」
運転手の怒鳴り声が聞こえてトラックの音が遠ざかる。
歩道の生垣にダイブした充は腕の中をそっと見つめた。
そこには目をつむっている小さな仔猫が二匹いる。
見た感じ大きな怪我などは無いように見えるが、驚きのあまり気を失っていたが息はちゃんとしている。
「よかった…」
充はフーっと自分も大きく息を吐いて空を見上げた。
太陽が真上にあるのを確認して慌てて時間を思い出す。
「やばっ!」
こんなのんびりしてる場合じゃなかった!
立ち上がろうとすると…ガクッと足から崩れ落ちる。
足首に痛みが走った。
見ると足首が赤く腫れている。
折れては無さそうだが、走るのはもう無理そうだった。
「はぁ…」
今度こそ全身の力を抜いて地面に寝そべった。
しばらくそうしてとジロジロと歩行者に見られるので仕方なく立ち上がる。
仔猫達は起きる様子は無かった。
そのままにもしておけず充はタオルを取り出して二匹を包むと家へと戻って行った。
◆◆◆
「やっと着いたー!」
足を引きずりながら帰ったのでいつもの倍時間が経ってしまった。
バイトの面接に連絡はしたものの来れないなら他の人に決まると言われた。
どうにかならないかと食い下がったが遅刻する人を雇う気は無いとはっきりと言われてしまった。
充は家に着くと着の身着のまま倒れ込んだ。
「疲れた…」
身も心も疲れた充はそのまま床で眠ってしまった。
0
お気に入りに追加
166
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
この度めでたく番が現れまして離婚しました。
あかね
恋愛
番の習性がある獣人と契約婚をしていた鈴音(すずね)は、ある日離婚を申し渡される。番が現れたから離婚。予定通りである。しかし、そのまま叩き出されるには問題がある。旦那様、ちゃんと払うもん払ってください! そういったら現れたのは旦那様ではなく、離婚弁護士で。よし、搾れるだけ絞ってやる!と闘志に燃える鈴音と猫の話。
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる