【完結】悪役令嬢の真実

三園 七詩

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始まりは…突然に

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「皆さんこんにちは!私わからない事ばかりで不安ですが……仲良くしてくださると嬉しいです!特に……ライト王子様」

その子はキラキラの笑顔を王子に振りまいて挨拶をする。

その様子を私達生徒は唖然と見つめていた……




ここはアオイライト王国の第一学園、この国の15歳までの子供達が勉強や礼儀作法などを学ぶ場だ。

貴族はもちろん庶民も奨学金制度を使って通うことができる。

この下の第二学園はもう少し学費も安く国の子供達が平等に学べる場を作ってある。

そんな国の侯爵令嬢のマリンは第一学園に通っていた。

マリンは幼い頃からこの国の第一王子のライト様の婚約者として学園に入る前から家庭教師をつけられこの国の王妃となるべく教育を受けてきた。

ライト王子は金髪に碧眼…まさに王子と言う美貌だがそれに負けず劣らずマリンもこの国を象徴する蒼い髪に翡翠色の瞳と王子と並んでも見劣りする事ない美しさだった。

二人が並んで歩いていると誰もが羨み、ため息をつく。

あの二人ならお似合いだと……思っていた……

彼女が来るまでは……

その子はこの学園に突然編入してきた。

ピンクの髪に金色の瞳。
名前は珍しいくヒカル様…と言うらしい。

光の魔法の持ち主で頭もまぁまぁだったらしくギリギリで編入出来たらしい。

そして編入したその日……壇上で自己紹介をしながらあの挨拶をしたのだ。

「ライト様、お知り合いですか?」

私はびっくりしてライト様に声をかけた。

「いや、編入する事は父上から聞いていたが会うのははじめてだ」

ライト様も突然の事に戸惑っている。
しかし新入したてという事もあり、優しいライト様は引き攣った笑顔を返してよろしくと声をかけた。

するとヒカル様は頬を染めて嬉しそうに笑った。

「先生!私この学園は初めてで不安なんです…ライト様のお隣の席でもいいですか?」

ヒカル様は隣に座る私の席を指さした。

「ここは!」

ライト様が何か言おうとするのを机の下で手を握って制止させる。

「私なら大丈夫です」

ライト様に微笑んで席を立った。

「ヒカル様どうぞ…でも一つだけ言わせていただきます。ライト様は私の婚約者です、気軽に名を呼ぶのは不敬に当たりますのでご注意下さい」

「えー!マリン様怖ーい!ライト様助けて!」

ヒカル様は真似をしてライト様の腕にしがみついた。

ライト様はあまりの事に唖然として注意する事も忘れる。

「ヒカル様、少し静かに出来ますか?」

先生からも呆れて注意されてヒカル様はごめんなさーい!と舌を出して謝罪した。

あれを謝罪と言うのなら……

その日からヒカル様はライト様に付きまとい私との時間が一気に減ってしまった。

私はため息を付き時にはヒカル様に注意をする。

しかしその度に怖いだの、酷いだの、時には泣いて周りに迷惑をかけるので注意するのも億劫になってきた。

「マリン様!あの人の行動は目に余ります!私先生に抗議してきますわ!」

友人達もヒカル様の態度には心底うんざりしていたようだ。

ヒカル様はライト様だけでは満足できないのか他の男性生徒達にも体を引っつけては愛想を振りましているらしく。

それは婚約者がいてもいなくてもお構い無しだった。

週末の休日に私は屋敷に戻るとようやくほっとする。
久しぶりの一人の時間に身も心も休めたかった。

お茶を飲んでゆっくりしているとお客様が来たとメイドさんが部屋へと通してくる。

「マリン!」

それは疲れきったライト様だった。

「ライト様、何だかおつかれですね」

私は眉を下げてライト様に笑いかけた。

「全くたまったもんじゃない、なんなんだよあのヒカルって子は!俺とマリンの間に割って入って…先生にすぐに席を戻すように言っといたよ」

ライト様は私の髪をひと房掴んでキスをしながら甘い瞳で見つめる。

「はぁ…マリンの匂いは落ち着くな…」

ひとしきり匂いを嗅ぐと今度は腰を掴んで引き寄せられる。

「君に会えなくて寂しかった…」

「ふふ、学園でいつも会ってるではありませんか?」

「あんなの会ったうちに入らないよ!こうしてマリンを触らないと安心できないし心配だ。君は美しくて優しいから他の奴らがみんな狙ってる…まぁ渡す気はないけどね」

そう言ってクシャっと顔を崩して笑った。

私の一番好きな顔だった……

私達は幼い頃から苦楽を共にしてお互いの事を一番わかっている。

王子の辛い時そばにいたのは私だし、私が辛い時そばにいてくれたのはライト様だった。

だからヒカル様のあんなちょっかいに今更心動かされる事はない。

どちらかと言うとライト様の方が私にご執心なのだから……

ライト様はひとしきりヒカル様の愚痴をこぼして私に甘えて生気を養っていった。

帰りの時間になって従者が迎えに来ても離れたくないと駄々をこねる。

いつもは完璧な王子をこなしているが私の前だけでは本当の甘えた姿を見せてくれるのだ。

「ライト様、また学園で…そしてお休みにはこうしてお茶を飲みましょう」

ライト様の頬に別れの軽いキスの挨拶をすると満足そうにして馬車に乗る。

「マリン様いつもありがとうございます!」

従者は私に感謝して王宮へと帰っていった。
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