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廃坑
しおりを挟む中学の頃から仲のいい五人組でよく出かけることがあった。
大学生になってもその関係は変わらずになにかあると声をかけて遊んでいた。
そんな大学生活にも慣れた頃、一人が肝試しに行きたいと言い出した。
「俺は行きたくない」
一人は行きたくないと言ったが他の四人は興味があると賛成したので多数決で行くことになってしまった。
「なんかさ、地元に気になる建物あったよな?」
その一言でみんなどの建物を指しているのかわかった。
それは自分達が小学生の頃からあるマンションで立地の悪い山の方に建っていた。
その先には山を越える道しかなく買い物に行くにも不便な場所で一度も満室になったことなどない四階建てのマンションだった。
駐車場だけはやたらと広いが草がぼうぼうで気がつくと入居者が一人も居なくなりその後売地となったが誰も買うことなくそのまま放置されていた。
別に有名な心霊スポットとかではないが気味が悪いので地元では肝試しで行く人もいた、しかし昼間は地元の子供達の遊び場にもなっている。
隠れ場所も多く広い敷地なのでかくれんぼや鬼ごっこをするのにちょうどいいのだ。
親達はそこに行くなと注意したがそんなこと右から左へ受け流して気にせず遊んでいた。
俺達は久しぶりにその場所に行くことになった。
いつも通り五人乗れる車を持っている友達が運転してその場所に向かう。
久しぶりにそこに行くと夜と言うこともあり、なんだかいつもより不気味に感じた。
「子供の頃は怖いって思ったことなかったけどな」
一人がボソッと言うと、他の四人も同じように思っていたが見栄を張ってしまう。
「なに?ビビってんの?」
「怖がりだなw」
そうやって笑い飛ばしながら建物に近づくと少し怖さも半減した。
「おい、門……開いてる」
一人が建物の前に立つと足を止めた。いつもは閉まっていた入り口が壊されて開いていたのだ。
誰かがガラスを割ったようで板で補強されていたが、それも壊されて人が通るには十分な広さがあった。
みんなは無言で目を合わせる。
誰が止めようと言うのを待つが誰も言わない。
それを言えばしばらくはそのネタでからかわれることになるからだ。
ロープが張られているが気持ち程度、越えられないはずもなく一人がまたぐと他のみんなも後に続いた。
「で?どうする?」
黙っているのに耐えられなくなり一人が声をかけた。
「別れて探索しようぜ」
みんな頷くとグッパーで別れる。
二人と三人に別れて入口から入り偶数階と奇数階を見ることになった。
しかしいざ行ってみると部屋の扉には鍵がかかっており扉は開かない。
他の部屋も見て回るが開いてる部屋はなかった。
「な、なーんだ。見れないんじゃ拍子抜けだな」
奇数階を担当になった三人はあっという間に探索し終えて玄関口へと戻ってきた。
しかしまだ二人組は戻ってなかった。
「まだ見てるのかよ」
後ろを振り返り見ているであろう四階を見上げると階段の踊り場らしき場所に二人の影が見えた。
「おーい!」
声をかけると二人は気がついたようで手を振っている。
「ちょっと来てみろよ」
二人はなにか見つけたのかこっちに来いと手招きしていた。
「えー」
「面倒だな」
正直また四階に登るのはダルかった。
しかし執拗く呼ぶので渋々また入口に向かうと階段からちょっど二人が戻ってきたのだ。
「「「え?」」」
三人は思わず立ち止まった。
二人は迎えに来てくれたのかと三人を見ると近づいて来て声をかける。
「なんにもなかったなー」
「全部の部屋閉まってるのな」
二人があっけらかんと喋って来るが三人は声が出せなかった。
そんな様子に二人も変だと思い怪訝な顔をする。
「なんだよ」
「お、お前らさっき四階の階段の所にいたよな?」
「は?そりゃ四階に行ったから通ったよ」
当たり前だろと二人は頷く。
「じゃなくて!階段のところから俺達に手を振ったよな!」
少し強くいってしまった。
むしろそうであってくれと思いながら……
しかし二人はなんの事だと首を振る。
「俺達四階までいって戻ってきただけだぞ」
その言葉にゾクッと背筋が寒くなる。
それならさっきの影は誰なんだ?
駐車場にはもちろん他の車は無いしみんなで建物を回った感じ他に人がある気配は無かった。
俺達はそっと階段の先を見つめた。
すると……トン、トン、トン。
階段を降りてくるような足音が聞こえてきた。
「ぎゃあ!」
一人が叫ぶと金縛りが解けたかのようにみんな叫びながら車に向かった。
「早く早く!」
車に飛び乗ると早く出すように言うが運転手の友達は手が震えるのか上手くエンジンをつけられない。
やっとの思いでその場を飛び出し近くのコンビニに駆け込み他の人を見てようやく気持ちも落ち着いてきた。
俺達はあったかい飲み物を買うと車に戻り帰ることになった。
帰りの車ではしばし無言が続いた。
俺達はその後二度と肝試しに行くことはなかった。
大学生になってもその関係は変わらずになにかあると声をかけて遊んでいた。
そんな大学生活にも慣れた頃、一人が肝試しに行きたいと言い出した。
「俺は行きたくない」
一人は行きたくないと言ったが他の四人は興味があると賛成したので多数決で行くことになってしまった。
「なんかさ、地元に気になる建物あったよな?」
その一言でみんなどの建物を指しているのかわかった。
それは自分達が小学生の頃からあるマンションで立地の悪い山の方に建っていた。
その先には山を越える道しかなく買い物に行くにも不便な場所で一度も満室になったことなどない四階建てのマンションだった。
駐車場だけはやたらと広いが草がぼうぼうで気がつくと入居者が一人も居なくなりその後売地となったが誰も買うことなくそのまま放置されていた。
別に有名な心霊スポットとかではないが気味が悪いので地元では肝試しで行く人もいた、しかし昼間は地元の子供達の遊び場にもなっている。
隠れ場所も多く広い敷地なのでかくれんぼや鬼ごっこをするのにちょうどいいのだ。
親達はそこに行くなと注意したがそんなこと右から左へ受け流して気にせず遊んでいた。
俺達は久しぶりにその場所に行くことになった。
いつも通り五人乗れる車を持っている友達が運転してその場所に向かう。
久しぶりにそこに行くと夜と言うこともあり、なんだかいつもより不気味に感じた。
「子供の頃は怖いって思ったことなかったけどな」
一人がボソッと言うと、他の四人も同じように思っていたが見栄を張ってしまう。
「なに?ビビってんの?」
「怖がりだなw」
そうやって笑い飛ばしながら建物に近づくと少し怖さも半減した。
「おい、門……開いてる」
一人が建物の前に立つと足を止めた。いつもは閉まっていた入り口が壊されて開いていたのだ。
誰かがガラスを割ったようで板で補強されていたが、それも壊されて人が通るには十分な広さがあった。
みんなは無言で目を合わせる。
誰が止めようと言うのを待つが誰も言わない。
それを言えばしばらくはそのネタでからかわれることになるからだ。
ロープが張られているが気持ち程度、越えられないはずもなく一人がまたぐと他のみんなも後に続いた。
「で?どうする?」
黙っているのに耐えられなくなり一人が声をかけた。
「別れて探索しようぜ」
みんな頷くとグッパーで別れる。
二人と三人に別れて入口から入り偶数階と奇数階を見ることになった。
しかしいざ行ってみると部屋の扉には鍵がかかっており扉は開かない。
他の部屋も見て回るが開いてる部屋はなかった。
「な、なーんだ。見れないんじゃ拍子抜けだな」
奇数階を担当になった三人はあっという間に探索し終えて玄関口へと戻ってきた。
しかしまだ二人組は戻ってなかった。
「まだ見てるのかよ」
後ろを振り返り見ているであろう四階を見上げると階段の踊り場らしき場所に二人の影が見えた。
「おーい!」
声をかけると二人は気がついたようで手を振っている。
「ちょっと来てみろよ」
二人はなにか見つけたのかこっちに来いと手招きしていた。
「えー」
「面倒だな」
正直また四階に登るのはダルかった。
しかし執拗く呼ぶので渋々また入口に向かうと階段からちょっど二人が戻ってきたのだ。
「「「え?」」」
三人は思わず立ち止まった。
二人は迎えに来てくれたのかと三人を見ると近づいて来て声をかける。
「なんにもなかったなー」
「全部の部屋閉まってるのな」
二人があっけらかんと喋って来るが三人は声が出せなかった。
そんな様子に二人も変だと思い怪訝な顔をする。
「なんだよ」
「お、お前らさっき四階の階段の所にいたよな?」
「は?そりゃ四階に行ったから通ったよ」
当たり前だろと二人は頷く。
「じゃなくて!階段のところから俺達に手を振ったよな!」
少し強くいってしまった。
むしろそうであってくれと思いながら……
しかし二人はなんの事だと首を振る。
「俺達四階までいって戻ってきただけだぞ」
その言葉にゾクッと背筋が寒くなる。
それならさっきの影は誰なんだ?
駐車場にはもちろん他の車は無いしみんなで建物を回った感じ他に人がある気配は無かった。
俺達はそっと階段の先を見つめた。
すると……トン、トン、トン。
階段を降りてくるような足音が聞こえてきた。
「ぎゃあ!」
一人が叫ぶと金縛りが解けたかのようにみんな叫びながら車に向かった。
「早く早く!」
車に飛び乗ると早く出すように言うが運転手の友達は手が震えるのか上手くエンジンをつけられない。
やっとの思いでその場を飛び出し近くのコンビニに駆け込み他の人を見てようやく気持ちも落ち着いてきた。
俺達はあったかい飲み物を買うと車に戻り帰ることになった。
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