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時はたち…

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ディーンが屋敷にきて数年が経った。

ディーンはその後もメリルやメリルの両親に可愛がられていつしか本当の姉弟のように仲のいい関係になっていた。

しかもメリルはあのお茶会後、王子の婚約者となってしまったのだ。

これは陛下から両親にずっと話がきていたそうで、メリルの反応を見てから決める事になっていた。

お茶会で楽しかった様子のメリルに両親はこの話を泣く泣く承諾した。






「姉さん待って」

ディーンに呼ばれてメリルはドタドタと足音を立てながら先を走る。

数年経ってもメリルは相変わらずふくよかな体をしていた。

「ディーン早くー!」

メリルは急いで厨房へと向かっていた。

いつもならディーンの方が動きも足も早いのに厨房に向かう時だけはメリルの方が早いのだ。

「やっと追いついた」

ディーンが息を切らして見ればメリルは優雅に椅子に腰掛けて料理が来るのを待っている。

「ほら、ディーンも座って」

メリルはポンポンと隣の椅子を優しく叩いて指し示す。

「はい」

ディーンは笑って隣に腰掛けた。

そして二人で仲良くおやつを食べる。

二人にとってこの時間が何よりも楽しく好きな時間だった。

「今日も美味しいおやつをどうもありがとう」

メリルはあっという間におやつを平らげて二杯目のお茶を飲み干す。

そしてちらっとディーンのお皿に残っているドーナツを見つめた。

「姉さんよかったら一つどうぞ」

「え!」

メリルは顔を輝かせるがハッとして首をふる。

「いえ!駄目よ、これはディーンの分なんだから」

「僕はもうお腹いっぱいですから、姉さんが美味しそうに食べる方がドーナツも喜びます」

「そ、そう?」

メリルはなら…とディーンのドーナツを一つ貰った。

「んー!幸せ…」

メリルは貰ったドーナツを今度はゆっくりゆっくりと食べる。

しかし気がつけばそれはすぐになくなっていた。

そんなメリルをディーンは微笑ましく見つめていたがその顔をふっと暗くする。

「ディーン、どうしたの?  やっぱりドーナツ食べたかった?」

メリルはどうしようと食べてしまったことに後悔する。

するとディーンは苦笑して憂いていたことを話した。

「違いますよ、ドーナツは姉さんに食べて貰えてよかったです。それよりも…今度のお茶会が心配で…」

ディーンはため息をついた。

「お茶会?ああ!ディーンもお茶会があるのね!あれはいいわよ、たくさんの美味しい料理が出てくるもの」

「そうですね、でも僕は男なので女性の相手もしなくてはならなくて……僕は姉さんが…」

ちらっとメリルの様子をうかがうがメリルは聞いているのかいないのかニコニコと笑っていた。

「あの時の料理美味しかったなー」

「うん、聞いてないよね…」

ディーンはそれでもいいとクスッと笑った。

「それよりも…あの日から姉さんはあの王子の婚約者になったって言うのに…」

ディーンはそれを思い出して眉間に皺を寄せた。

「ねー、でもすぐにお断りされちゃったけどね」

メリルは気にした様子もなく三杯目のお茶を口にする。

「あの王子…本当に信じられない…」

ディーンはその時のことを思い出してはムカムカと胸が熱くなった。
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