料理の腕が実力主義の世界に転生した(仮)

三園 七詩

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「旦那様、あの男どうしましょう?」

ジンジャーのそばには執事や従者が集まり指示を待っていた。

「今兵士が到着しました。お嬢様からあの男を引き剥がして引渡しますか?」

執事の言葉にジンジャーはリコとラウルを見つめた。

二人は周りの様子など関係なさそうに泣きあい喜びあっていた。

「いや、いい」

ジンジャーは力なく答えると兵士を返すように指示を出した。

「お前達も仕事に戻れ。ここは私だけでいい……」

従者達は訝しげな様子でラウル達を見たあと仕事に戻っていった。

そして抱き合う二人に近づくとラウルがそれに気がついてリコを隠した。

「すまないがリコは帰して欲しい。自分からリコを預けたのに申し訳ないが……この通りだ!」

ラウルはジンジャーに頭を下げた。

「すみません」

リコも同じように横で頭を下げる。

「頭をあげて……少し付きあいなさい。そうすればその子は帰そう」

ジンジャーはそう言って二人を自分の書斎へと案内した。

「本当だな?」

「嘘なら今すぐ兵士にお前を捕まえさせている」

ラウルはいつの間にか周りに従者達がいなくなっていることに気がついた。

「ラウルさん行こう、私もジンジャーさんにお世話になったお礼を言いたい」

リコにクイッと引っ張られてラウル達はジンジャーの後を追った。

部屋に入るまで警戒していたが部屋の中には誰も居らずに拍子抜けしてしまう。

そんなラウルの表情にジンジャーは苦笑した。

「罠とでも思ったのか?」

「あっいや……」

ラウルは気まずそうに頭をかいた。

「あんな姿を見せられては無理やり引き離す訳にもいかない……リコ、本当にその男でいいのかい?」

ジンジャーは優しくリコにもう一度聞いた。

「はい、ラウルさんは不器用だけど優しいし頼りになります」

リコは頷くと少し笑って見せた。

「ふふ、帰してようやく笑顔が見られるとは皮肉だな」

「あっ……すみません」

リコはしゅんとして肩をすぼめた。

「いや、意地悪な言い方をしてしまったね」

ジンジャーは二人にお茶を入れた。
それはリコから聞いたしょうが湯だった。

「このレシピも君に返さないとね」

「え?別に大丈夫です。これからも作ってください」

リコは返さなくていいと首をふる。

「私、レシピとかよくわかんなくて……ただ料理が好きでみんなで美味しく食べられる方がいいです。だからレシピを自分だけのものとかしたくないんです」

「リコはこういう子なんです」

ラウルはそこがいいとリコの頭を自慢げに撫でていた。

「まだ会って日が短いと聞いていたがまるで古くから知ってるような仲だね」

二人の様子に苦笑する。

「そ、そうかな?」

ラウルは嬉しそうに照れていると、リコはじっとラウルを見つめた。

「はい、なんか私もラウルさん知ってるような気がしていて……」

「え?」

リコの反応にラウルの方が驚いていた。

「だからラウルさんのそばが安心するのかも」

リコがラウルを見つめると恥ずかしそうに頬を少し染めていた。

「はぁ……そんな顔を見せられたら余計無理やり引き離すわけにもいかないな」

「それじゃあ!」

「あぁ、リコのことは諦めよう」

「ありがとうございます!リコそれでいいか?」

ラウルがリコに再度確認すると嬉しそうに頷いた。

「ただし条件がある」

嬉しそうに喜ぶ二人にジンジャーから条件を出されて固まってしまった。
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