19 / 24
19
しおりを挟む
「なんで……謝るの?」
リコのか細い声が頭の上に降ってくる。
今リコはどんな顔をしているだろう、悲しませてしまったか?
ラウルが頭をあげるとジンジャーがリコの姿を隠して怒った顔で立っている。
「うちの子を怖がらせないでいただきたい。もうおかえり願おうか。この子は話すことなどないみたいだ」
リコを連れて回れ右をしてしまう。
「待ってくれ!今謝ったのは昨日の事だ、俺は嘘をついた」
リコの足がピクっと止まった。
「俺はリコの面倒が見たくない訳じゃない、それがリコの幸せだと思ったからだ。リコも俺なんかのところにいたよりも貴族になれた方がいいんじゃないか、幸せなんじゃないかと思ったんだ」
リコがようやくしっかりと俺を見てくれた。
俺はリコの目を見つめて続きを話した。
「リコ、ごめん。だから昨日は自分の気持ちに嘘をついた、本当はお前と離れたくなかった。こんな俺のそばにいたらリコに贅沢な暮らしはさせてやれないが……リコが望むなら戻ってきて欲しい」
「そんなの貴族の方がいいに決まっている、そうだな?」
ジンジャーが確認するようにリコに聞いた。
「昨日寝たベットはどうだ?それに豪華な食事に安心出来る家。それがあいつに用意出来るか?」
ジンジャーはラウルをゆび指した。
「それはできないかもしれない、でも片時も離れずにそばにいて守ってやる。それは誓う」
ラウルは負けることなくジンジャーを睨み返した。
「まぁいい、答えは決まっているからね。リコならわかるだろ?君がどちらを取るべきか?」
ジンジャーは笑ってリコの肩にそっと手を置いた。
リコはビクッとして俺を見る。
迷っているのかジンジャーと交互に何度も見ていた。
「ほら、早く決めないと兵士がきてこの男を連れて行ってしまうよ」
「え!?」
リコは驚いた顔をしてジンジャーを見つめる。
「このまま諦めて二度とここには来ないと誓うなら今日の不法侵入の件はなかったことにしてやろう。しかし諦めずにまた来たら……」
ジンジャーがそこで言葉を切った。
「ラウルさん、帰って!捕まっちゃうよ」
リコが慌てて声をかけてきた。
「それは貴族を選ぶってことだよね?」
ジンジャーがリコの答えを確認する。
「うん、貴族になる。だからラウルさんを帰してあげて」
「わかったよ」
ジンジャーがニヤリと笑うとリコはそっと目を閉じた。
「リコ!」
俺はそんなリコに大きな声で名前を呼んだ。
「俺の為に嘘をつくな!俺はそれをして後悔して自分の意思でここに来ている。何があっても責任は自分で取る!お前に何かして欲しいわけじゃない、お前の本当の気持ちが知りたいだけだ」
「私の気持ち?」
「そうだ、何もかもとっぱらって何がしたいか言ってみろ!」
「私……」
リコは自分の小さな手を見つめた。
「私、ラウルさんと料理するのが楽しかった……ここに来て何もかも不安だったけどラウルさんといる時は安心できた」
ずっと大人びた顔でいたリコが表情を崩した。
みるみると目に涙が溜まり溢れ出しそうになる。
「私……貴族に興味無い。ラウルさんともっと料理したい」
「リコ!」
ラウルはガバッと立ち上がるとリコの元に走り出した。
リコも同じように駆け寄ってくる。
そんな二人を誰も止められなかった……
リコはラウルの胸に飛び込むとわんわんと声を出して泣きだした。
「我慢してたんだな……ごめん、気が付かくて」
ラウルは潰さないようにリコを抱きしめた。
リコのか細い声が頭の上に降ってくる。
今リコはどんな顔をしているだろう、悲しませてしまったか?
ラウルが頭をあげるとジンジャーがリコの姿を隠して怒った顔で立っている。
「うちの子を怖がらせないでいただきたい。もうおかえり願おうか。この子は話すことなどないみたいだ」
リコを連れて回れ右をしてしまう。
「待ってくれ!今謝ったのは昨日の事だ、俺は嘘をついた」
リコの足がピクっと止まった。
「俺はリコの面倒が見たくない訳じゃない、それがリコの幸せだと思ったからだ。リコも俺なんかのところにいたよりも貴族になれた方がいいんじゃないか、幸せなんじゃないかと思ったんだ」
リコがようやくしっかりと俺を見てくれた。
俺はリコの目を見つめて続きを話した。
「リコ、ごめん。だから昨日は自分の気持ちに嘘をついた、本当はお前と離れたくなかった。こんな俺のそばにいたらリコに贅沢な暮らしはさせてやれないが……リコが望むなら戻ってきて欲しい」
「そんなの貴族の方がいいに決まっている、そうだな?」
ジンジャーが確認するようにリコに聞いた。
「昨日寝たベットはどうだ?それに豪華な食事に安心出来る家。それがあいつに用意出来るか?」
ジンジャーはラウルをゆび指した。
「それはできないかもしれない、でも片時も離れずにそばにいて守ってやる。それは誓う」
ラウルは負けることなくジンジャーを睨み返した。
「まぁいい、答えは決まっているからね。リコならわかるだろ?君がどちらを取るべきか?」
ジンジャーは笑ってリコの肩にそっと手を置いた。
リコはビクッとして俺を見る。
迷っているのかジンジャーと交互に何度も見ていた。
「ほら、早く決めないと兵士がきてこの男を連れて行ってしまうよ」
「え!?」
リコは驚いた顔をしてジンジャーを見つめる。
「このまま諦めて二度とここには来ないと誓うなら今日の不法侵入の件はなかったことにしてやろう。しかし諦めずにまた来たら……」
ジンジャーがそこで言葉を切った。
「ラウルさん、帰って!捕まっちゃうよ」
リコが慌てて声をかけてきた。
「それは貴族を選ぶってことだよね?」
ジンジャーがリコの答えを確認する。
「うん、貴族になる。だからラウルさんを帰してあげて」
「わかったよ」
ジンジャーがニヤリと笑うとリコはそっと目を閉じた。
「リコ!」
俺はそんなリコに大きな声で名前を呼んだ。
「俺の為に嘘をつくな!俺はそれをして後悔して自分の意思でここに来ている。何があっても責任は自分で取る!お前に何かして欲しいわけじゃない、お前の本当の気持ちが知りたいだけだ」
「私の気持ち?」
「そうだ、何もかもとっぱらって何がしたいか言ってみろ!」
「私……」
リコは自分の小さな手を見つめた。
「私、ラウルさんと料理するのが楽しかった……ここに来て何もかも不安だったけどラウルさんといる時は安心できた」
ずっと大人びた顔でいたリコが表情を崩した。
みるみると目に涙が溜まり溢れ出しそうになる。
「私……貴族に興味無い。ラウルさんともっと料理したい」
「リコ!」
ラウルはガバッと立ち上がるとリコの元に走り出した。
リコも同じように駆け寄ってくる。
そんな二人を誰も止められなかった……
リコはラウルの胸に飛び込むとわんわんと声を出して泣きだした。
「我慢してたんだな……ごめん、気が付かくて」
ラウルは潰さないようにリコを抱きしめた。
1
お気に入りに追加
333
あなたにおすすめの小説
髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜
あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。
そんな世界に唯一現れた白髪の少年。
その少年とは神様に転生させられた日本人だった。
その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。
⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。
⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい
三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです
無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す!
無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる