料理の腕が実力主義の世界に転生した(仮)

三園 七詩

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「こいつ!手間かけさせやがって」

ラウルはあっさりと入り口近くで捕まっていた。

「くそ!リコー」

屋敷に向かって声をかけると何事かと人が集まって来るがその中にリコはいない。

「なんで話だけでもさせてくれないんだ!」

「こんな不法侵入するやつに合わせられるわけないだろ!」

最もな意見にラウルは少し冷静になった。

「それはすまなかった。だけど本当に話だけでいいんだ、もう一度リコに会わせて欲しい……お願いします」

ラウルは大人しくその場に座るとゴチンと音を立てて床に頭をつけてお願いした。

「し、しかし……」

ラウルの態度にもう暴れる気はないと思ったのか押さえつけていた人達の力が抜ける。

「もう暴れたりしない、ここから先には行かないからお願いだ、リコを連れてきてくれ」

ラウルはもう一度頭を下げるとそのままずっと床に頭をつけていた。

すると頭の上から声がする。

「なんの騒ぎかと思えば……もう金は渡したはずだが?」

ジンジャーの声が聞こえた。

ラウルはすぐに頭をあげるとジンジャーが腕を組んでラウルを見下ろしていた、そしてその足元には隠れるようにリコが立っていた。

「リコ!」

思わずリコに声をかけるとリコは一瞬驚いた顔をしてジンジャーを見上げた。

そしてすぐに顔を下げるとラウルからの視線を避けた。

「金なんていいんだ!俺はリコに会いたくて……もう一度話をしたくて」

リコに訴えるように話をする。

ジンジャーはリコの肩に手を置くと言ってあげなさいとばかりに前に出した。

「ラウルさん、もうここには来ないで……」

リコは下を向いたままそう言った。

「リコ……俺、迷惑だったか?」

「そう言ってるよね?」

ジンジャーが馬鹿にするように口を挟んだ。

「この子はこの家で昨日から楽しく過ごしている。綺麗な服に美味しいご飯。何も困ることなんてないんだよ、危ない仕事はしなくていいし、危険な食材取りに行かなくてもいい」

ラウルは痛い事を言われてグッと怯んだ。

「それに君だって子供の面倒は見れないと手放したんだろ?」

そう言われてリコの手にぎゅっと力が入るのが見えた。

リコは感情がなさそうに見えて全身に力を入れて我慢していた。
言いたいことを全て飲み込んで自分が我慢すればいいと、子供らしくない考えを持っているように見えた。

ラウルはリコを見つめて大声を出した!

「リコ!俺を見ろ!」

リコはびっくりして顔をあげてラウルを見た。

久しぶりに感じるリコの顔にラウルはこんな時なのに思わず笑顔になってしまった。

「ラウル……さん……」

リコは怯えたような泣きそうな複雑な顔をしていた。

「リコごめん!」

そしてリコに今日三度目になる土下座を決め込んだ。
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