料理の腕が実力主義の世界に転生した(仮)

三園 七詩

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俺達は兵士の案内について行きまたあの貴族達の住む地域へとやってきた。

そして最初にリコの住んでいた所かもしれないと訪れたジンジャー家だった。

その屋敷を見るなり俺とリコは顔を見合わせた。

「え?本当にここなんですか?」

俺は兵士に尋ねた。

「ああ、ジンジャー様が迷子の話を聞いて自分の子供かもしれないとおっしゃっている」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!自分の子かもしれないってなんで親がわかんないんだよ!」

疑問に思っていた事を聞く。

「それはあってからお話しましょう」

この前にあった執事が出てきて声をかけた。

「あんた……子供が行方不明なんて知らないって言ったよな?」

なんかおかしくないか?

俺はリコをぎゅっと抱きしめる。

「悪いが帰らせて貰う。もう少しリコの親を探してみる」

俺が帰ろうとすると兵士が剣を取り出してそれを止めた。

「あんたの意見なんて聞いてないんだ、その子を離してもらおうか?」

俺はリコを抱きしめたまま後ずさりする。

「おい、子供の前で手荒な事をするな!」

今度は屋敷の中から身なりのいい男性が出てきた。
そしてリコを見るなり顔を輝かせながら近づいてくる。

「おお、この子が噂の子かな?可愛い顔をしている」

リコのそばに顔を覗き込んだ。

「君がこの子を保護してくれた方かな?」

「あっ、はい。森で迷っていて……それで本当にジンジャー家の子なんですか?昨日来た時はそんな子は知らないと言ってましたが……」

俺は後ろに立つ執事をちらっと見た。

「それはすまなかったね、私まで話が来てなくてね。聞けばしょうが焼きのレシピを知っていたとか?」

笑顔を浮かべながらも油断ならない眼球で見つめてきた。

「なぜそれを?」

「情報はすぐに入ってくるものでね」

さすが貴族、昨日の騒ぎがすぐに耳に入ったようだ。

「しょうが焼きを作れるならジンジャー家の可能性が高いのだろ?遠縁かもしれないね」

じっとリコを見つめるとリコは顔を隠した。

「じゃあまずはその料理を食べさせてもらおうかな」

「料理を?」

「味で判断するからね」

「リコ、どうする?」

俺達が困惑していると兵士達が周りを取り囲んだ。

「すまないが君達に拒否権はない、さぁ屋敷に入ってくれ」

俺達は強引に屋敷に招き入れられた。

「リコ、本当にここに覚えはないのか?あれは親なんじゃ……」

リコにこっそりと聞いてみるがわからないと首を振っている。

「まぁリコの記憶がないだけで本当にここの子かもしれないぞ?」

「そう……かな?」

リコは屋敷の中を眺めるがどうもピンと来るものはないようだった。

俺達は厨房に案内されると食材を用意されていた。

「ここにある物を好きに使って料理してみてくれ」

俺はリコを下ろすと食材を眺める。

俺では手に入らないような高価な物から質のいい物が大量に並んでいる。
料理器具もピカピカでなんでも揃っていた。

そして何より厨房が凄い!
まるで店の厨房のように広くて五人ぐらい余裕で調理できそうだった。

「すげえ!」

俺はこんな時に少し興奮してしまった。

「ラウルさん……」

リコに服を引っ張られて正気に戻った。

「さぁ好きに初めてくれ」

ジンジャー様に促されて俺はリコを見下ろした。
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