料理の腕が実力主義の世界に転生した(仮)

三園 七詩

文字の大きさ
上 下
12 / 24

12.

しおりを挟む
俺達は兵士の案内について行きまたあの貴族達の住む地域へとやってきた。

そして最初にリコの住んでいた所かもしれないと訪れたジンジャー家だった。

その屋敷を見るなり俺とリコは顔を見合わせた。

「え?本当にここなんですか?」

俺は兵士に尋ねた。

「ああ、ジンジャー様が迷子の話を聞いて自分の子供かもしれないとおっしゃっている」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!自分の子かもしれないってなんで親がわかんないんだよ!」

疑問に思っていた事を聞く。

「それはあってからお話しましょう」

この前にあった執事が出てきて声をかけた。

「あんた……子供が行方不明なんて知らないって言ったよな?」

なんかおかしくないか?

俺はリコをぎゅっと抱きしめる。

「悪いが帰らせて貰う。もう少しリコの親を探してみる」

俺が帰ろうとすると兵士が剣を取り出してそれを止めた。

「あんたの意見なんて聞いてないんだ、その子を離してもらおうか?」

俺はリコを抱きしめたまま後ずさりする。

「おい、子供の前で手荒な事をするな!」

今度は屋敷の中から身なりのいい男性が出てきた。
そしてリコを見るなり顔を輝かせながら近づいてくる。

「おお、この子が噂の子かな?可愛い顔をしている」

リコのそばに顔を覗き込んだ。

「君がこの子を保護してくれた方かな?」

「あっ、はい。森で迷っていて……それで本当にジンジャー家の子なんですか?昨日来た時はそんな子は知らないと言ってましたが……」

俺は後ろに立つ執事をちらっと見た。

「それはすまなかったね、私まで話が来てなくてね。聞けばしょうが焼きのレシピを知っていたとか?」

笑顔を浮かべながらも油断ならない眼球で見つめてきた。

「なぜそれを?」

「情報はすぐに入ってくるものでね」

さすが貴族、昨日の騒ぎがすぐに耳に入ったようだ。

「しょうが焼きを作れるならジンジャー家の可能性が高いのだろ?遠縁かもしれないね」

じっとリコを見つめるとリコは顔を隠した。

「じゃあまずはその料理を食べさせてもらおうかな」

「料理を?」

「味で判断するからね」

「リコ、どうする?」

俺達が困惑していると兵士達が周りを取り囲んだ。

「すまないが君達に拒否権はない、さぁ屋敷に入ってくれ」

俺達は強引に屋敷に招き入れられた。

「リコ、本当にここに覚えはないのか?あれは親なんじゃ……」

リコにこっそりと聞いてみるがわからないと首を振っている。

「まぁリコの記憶がないだけで本当にここの子かもしれないぞ?」

「そう……かな?」

リコは屋敷の中を眺めるがどうもピンと来るものはないようだった。

俺達は厨房に案内されると食材を用意されていた。

「ここにある物を好きに使って料理してみてくれ」

俺はリコを下ろすと食材を眺める。

俺では手に入らないような高価な物から質のいい物が大量に並んでいる。
料理器具もピカピカでなんでも揃っていた。

そして何より厨房が凄い!
まるで店の厨房のように広くて五人ぐらい余裕で調理できそうだった。

「すげえ!」

俺はこんな時に少し興奮してしまった。

「ラウルさん……」

リコに服を引っ張られて正気に戻った。

「さぁ好きに初めてくれ」

ジンジャー様に促されて俺はリコを見下ろした。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

新・俺と蛙さんの異世界放浪記

くずもち
ファンタジー
旧題:俺と蛙さんの異世界放浪記~外伝ってことらしい~ 俺と蛙さんの異世界放浪記~八百万ってたくさんって意味らしい~の外伝です。 太郎と愉快な仲間達が時に楽しく時にシリアスにドタバタするファンタジー作品です。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

自由気ままな生活に憧れまったりライフを満喫します

りまり
ファンタジー
がんじがらめの貴族の生活はおさらばして心機一転まったりライフを満喫します。 もちろん生活のためには働きますよ。

処理中です...