料理の腕が実力主義の世界に転生した(仮)

三園 七詩

文字の大きさ
上 下
9 / 24

9.

しおりを挟む
「リコ、大丈夫か?」

そんな私にラウルさんがそばに来てくれた。

「肉を焼き終えたからここは俺がやるよ」

ラウルさんは私の手から木ベラを受け取るとソース作りを変わってくれた。

ラウルさんの後ろに隠れながら私はラウルさんにだけ聞こえるように指示を出す。

と言ってもあとはお肉にソースをかけるだけだった。

「これさ、一緒に煮ても美味そうだな」

ラウルさんの何気ない一言にピンっときた!

「それ絶対美味しい!」

「だよな!そうしよう」

ラウルさんは焼いた肉をソースの中に入れるとよく絡めて皿に盛った。

「出来た!味見する暇がなかったのが残念だ……」

もう相手は作り終えてラウルさんの料理を待っていた。

ラウルさんはすぐに料理をテーブルに運ぶと周りに人が集まってくる。

「ラウルの料理にしちゃ美味そうだな」

「よし、料理も出揃ったしみんな審査してくれ」

ウバが自信満々に自分の料理を差し出した。

「まぁじゃあウバの方から」

みんなが味見をするとウンウンと頷いている。

「リコも食べてみな」

ラウルさんがウバの料理をとってくれた。

彼の料理は何かの肉を焼きながらタレをつけて食べるものだった。

焼肉みたいだな……と感じた。

タレがオリジナルらしく少し辛めで食欲を増幅させる。

しかし子供の私には少し辛すぎた。

少し顔をしかめるとラウルさんが水を用意してくれた。

「大丈夫か?」

「うん、ちょっと辛かった」

私は口を押さえた。

「ふん、子供なんかに味を合わせていられるか」

ウバは知るかと私の事を見下ろして睨みつけた。

「まぁ確かに辛いな、俺は甘めがすぎたな」

辛いのが苦手な人もいたようでそんな事を言い出した。

次にラウルさんの料理をみんなが食べる。

するとみんなの手が止まってしまった。

「ど、どうだ?」

ラウルさんもみんなの反応が初めてのようで戸惑っていた。

「なんだこりゃ!」

ラウルさんはガックリと肩を落とした。

「やっぱりダメか……あいつに謝らないと」

ラウルさんがウバに謝ろうとすると

「違う!すげぇ美味いんだよ!ラウルどうしたんだ?」

「本当に久しぶりにこんな美味いの食ったな、これなら貴族になれそうだぞ」

「え?」

ラウルさんは自分の料理をパクッと食べる。

私もついでに味見してみた。

うん、美味しい。

あのウバって人のより食べやすかった。

ラウルさんの料理は人気であっという間にみんな平らげて取り合いになる。

「おい、もっと無いのか!」

そんな事を言い出す人までいた。

「そんなおかわりなんてねーよ」

困ったように答えるラウルさんだったがその顔は嬉しそうだ。

みんなは料理を見比べて頷きあった。

「この勝負ラウルの勝ちだな」

ラウルさんの料理は空でウバの料理はまだ少し残っている状態だった。

「ウバ、ラウルに謝れよ」

「お、俺の勝ち?」

ラウルさんは勝敗の結果に驚いていた。

「初めて勝った……」

ラウルさんのつぶやきに私は驚いてその顔を見上げる。

初めて勝った?

そんなのに勝負をしようとした事に少し呆れる。

でもラウルさんの嬉しそうな顔にまぁいいかと聞かなかった事にした。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです 無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す! 無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

自由気ままな生活に憧れまったりライフを満喫します

りまり
ファンタジー
がんじがらめの貴族の生活はおさらばして心機一転まったりライフを満喫します。 もちろん生活のためには働きますよ。

処理中です...