料理の腕が実力主義の世界に転生した(仮)

三園 七詩

文字の大きさ
上 下
8 / 24

8.怒り

しおりを挟む
「おい、リコどうしたんだよ」

「あの人、きらい」

私はラウルさんがバカにされるのがどうしても許せなかった。

料理で戦うと言うなら私にもなにか手伝えるかもしれない。

「ここで料理するの?」

外で作った時とは違い道具も色々と揃っている。
どれも見覚えのある道具だった。

「ラウルさんは何を作るの?」

「俺か?俺はイノシシ肉の串焼きにする」

まさかあれか……

チラッと先程の男の人を見てみるとお肉をあげて何かタレに絡めている。
あきらかにラウルさんより美味しそうな匂いがしてきた。

「ラウルさん、さっきのしょうが焼きのお肉使おうよ」

「え、でもあれはリコのレシピだろ?」

私は首を横に振った。

「違うよ、何も覚えてないのにふっと浮かんできたんだもん。それにイノシシのお肉をとってきたのはラウルさんだから、これは二人で作ったんだよ」

「リコ、いいのか?俺とレシピを共有する事になるんだぞ」

ラウルさんが真剣な顔で聞いてくる意味がわからなかったが私は迷うこと無く頷いた。

ラウルさんは少し悩んだが私がじっと見つめていると覚悟を決めたように腕まくりした。

「よし!リコ頼む。俺に料理を教えてくれ!」

「うん!」

私はこくっと頷いた。

「あっ……」

ラウルさんはそんな私をみて驚いた顔をして固まっていた。

「ラウルさん?どうしたの?」

そんなラウルさんの服を引っ張るとなんでもないとなぜが嬉しそうにしていた。

私はイノシシの漬けていたお肉を取り出すとじっと見つめる。

さっきのも良かったけどもう少し違う料理の方がいいのかもしれない……

「ラウルさん!スパイスみせて。ナツメグとかあるかな……」

ラウルさんのスパイスを見せてもらいながら匂いで確認する。

すると嗅いだことのある匂いがする瓶があった。

「これだ!ラウルさん、イノシシ肉をミンチに出来る?なるべく細かくね」

「任せろ!」

ラウルさんは包丁を取り出すといい音を鳴らしながら肉を細かく切り出した。

少し粘りまで出できたところでやめてもらい、玉ねぎや卵にスパイスや借りられる食材を放り込む。

「これをよく練ってください」

ラウルさんは私の指示に何も聞かずに言う通り動いてくれた。

「リコ、こんなもんか?」

「はい、ばっちりです。そしたら手のひらぐらいに丸く広げてフライパンで両面焼きます」

「わかった!」

ラウルさんは決して料理が下手ではなかった。
こちらが拙い説明で指示を出すのをきちんと読み取ってくれる。

ラウルさんが肉を焼く間に私はソースを作ることにした。

先程の玉ねぎを細かく刻み炒め、しょうがのすりおろしを入れるとそこに酒と醤油と砂糖を少し入れて煮詰める。

「ん?ラウルのくせにいい香りがするだと?」

ラウルさんに全然注目していなかった人達が美味しそうな香りに引き寄せられてきた。

「なんだ?いつもの肉焼きじゃないのか?」

どうもラウルさんの料理と言えばあれらしい。

「これはそこのリコと俺の共有メニューだ!」

「その子供が?」

酒場の人達は私を見るなり怪訝な顔をして見つめてきた。

私は大きな男の人達に見つめられて固まってしまった。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。 そんな世界に唯一現れた白髪の少年。 その少年とは神様に転生させられた日本人だった。 その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。 ⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。 ⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです 無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す! 無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

処理中です...