料理の腕が実力主義の世界に転生した(仮)

三園 七詩

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8.怒り

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「おい、リコどうしたんだよ」

「あの人、きらい」

私はラウルさんがバカにされるのがどうしても許せなかった。

料理で戦うと言うなら私にもなにか手伝えるかもしれない。

「ここで料理するの?」

外で作った時とは違い道具も色々と揃っている。
どれも見覚えのある道具だった。

「ラウルさんは何を作るの?」

「俺か?俺はイノシシ肉の串焼きにする」

まさかあれか……

チラッと先程の男の人を見てみるとお肉をあげて何かタレに絡めている。
あきらかにラウルさんより美味しそうな匂いがしてきた。

「ラウルさん、さっきのしょうが焼きのお肉使おうよ」

「え、でもあれはリコのレシピだろ?」

私は首を横に振った。

「違うよ、何も覚えてないのにふっと浮かんできたんだもん。それにイノシシのお肉をとってきたのはラウルさんだから、これは二人で作ったんだよ」

「リコ、いいのか?俺とレシピを共有する事になるんだぞ」

ラウルさんが真剣な顔で聞いてくる意味がわからなかったが私は迷うこと無く頷いた。

ラウルさんは少し悩んだが私がじっと見つめていると覚悟を決めたように腕まくりした。

「よし!リコ頼む。俺に料理を教えてくれ!」

「うん!」

私はこくっと頷いた。

「あっ……」

ラウルさんはそんな私をみて驚いた顔をして固まっていた。

「ラウルさん?どうしたの?」

そんなラウルさんの服を引っ張るとなんでもないとなぜが嬉しそうにしていた。

私はイノシシの漬けていたお肉を取り出すとじっと見つめる。

さっきのも良かったけどもう少し違う料理の方がいいのかもしれない……

「ラウルさん!スパイスみせて。ナツメグとかあるかな……」

ラウルさんのスパイスを見せてもらいながら匂いで確認する。

すると嗅いだことのある匂いがする瓶があった。

「これだ!ラウルさん、イノシシ肉をミンチに出来る?なるべく細かくね」

「任せろ!」

ラウルさんは包丁を取り出すといい音を鳴らしながら肉を細かく切り出した。

少し粘りまで出できたところでやめてもらい、玉ねぎや卵にスパイスや借りられる食材を放り込む。

「これをよく練ってください」

ラウルさんは私の指示に何も聞かずに言う通り動いてくれた。

「リコ、こんなもんか?」

「はい、ばっちりです。そしたら手のひらぐらいに丸く広げてフライパンで両面焼きます」

「わかった!」

ラウルさんは決して料理が下手ではなかった。
こちらが拙い説明で指示を出すのをきちんと読み取ってくれる。

ラウルさんが肉を焼く間に私はソースを作ることにした。

先程の玉ねぎを細かく刻み炒め、しょうがのすりおろしを入れるとそこに酒と醤油と砂糖を少し入れて煮詰める。

「ん?ラウルのくせにいい香りがするだと?」

ラウルさんに全然注目していなかった人達が美味しそうな香りに引き寄せられてきた。

「なんだ?いつもの肉焼きじゃないのか?」

どうもラウルさんの料理と言えばあれらしい。

「これはそこのリコと俺の共有メニューだ!」

「その子供が?」

酒場の人達は私を見るなり怪訝な顔をして見つめてきた。

私は大きな男の人達に見つめられて固まってしまった。
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