料理の腕が実力主義の世界に転生した(仮)

三園 七詩

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6.リコ視点

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「ありがとうございます」

肉を受け取って「いただきます」と食べようとするとその挨拶はなんだと言われた。

いただきます。は食べる時に言うものだと思っていたが…普通は言わないのかな?

しかしラウルさんは気にした様子もなく今度は肉を食ってみろとじっと見つめる。

私はガブッと噛み付くが歯で噛んでみてこれは無理だと思った。

顎の力が弱く噛みちぎれる自信がない、どうにか少し噛んで見るがイノシシの肉は少し臭みがあり固かった。

しかし美味しいかと聞くラウルさんに不味いとも言えずに頑張って飲み込んで美味しいと伝える。

しかし私の様子にラウルさんはガックリと肩を落としてしまった。

ラウルさんは自分は料理が下手だから仕方ないと私の態度に怒りもしない。

それどころか肉を小さく切らなかった事を謝ってくれる。

この人になにか返したい。

先程から色々とあたてくれるラウルさんに何か恩返しがしたくてそう思い、私はこの肉を美味しくする方法を思いついた。

イノシシの肉を見た時にスっと頭に浮かんできたのだ。

臭みには酒やしょうが、それに味が濃いものの方がいいと、調味料を聞けばどれもあると言う。

普通は調味料を持って歩くものだと聞いてなんか不思議な気がした。

ラウルさんは貴重な調味料を貸してくれたので私は肉を薄く切ろうとするが固くて切れない。

肉も固いが私の力が無いのも原因だろう。

困っているとラウルさんが代わりに肉を捌いてくれた。

二人で味付けをして焼いてみればまぁまぁの出来だった。

もう少し長い時間漬ければもっと美味しくなるだろう。

ラウルさんにも食べさせて見ると美味しかったようだがそれよりも驚きの方が大きかったようだ。

似た味を知っていたのかなにか考えこんでいる。

料理名を教えてあげると、私がどこの誰かわかったと言う。

「貴族の家の子だよ」

貴族?

そう言われてもピンとこない、貴族ってなに?

ラウルさんはきっとそこの子だと確信があるようで私をそこに連れて行ってくれると言う。

何となく行きたくないと思うが赤の他人のラウルさんにこれ以上迷惑もかけられない。

その人達に会えばもしかしたら記憶も戻るかもしれないと私は不安になりながらもラウルさんに抱かれて町に向かうことになった。


※※※


「ラウル、その子はどうした?」

町に着くと歩いてる人、歩いてる人に声をかけられる。

その度にリコはビクッとその身を隠すように俺に抱きついた。

「迷子だよ、森で保護したんだ。多分ジンジャー家の子だと思うんだよ」

「ジンジャー家?そんな小さい子がいるって聞いた事無いけどな。まぁ無事でよかったな」

町の人に声をかけられるとリコは頭を動かすだけでビクビクとしていた。

「おい、怖がってるから近づくな」

「なんだよ!」

ジロジロと珍しそうなものに近づいてくる野蛮な町の奴らからリコを隠すと俺は足早にジンジャー家を目指した。

俺が住む一般的な住宅地を抜けると大きな屋敷が建ち並ぶ高級住宅地についた。

「おい!お前達何処に行く!」

すると警備兵に呼び止められる。

「ああ、ちょうどいい。森で迷子の子を保護したんだ。多分ジンジャー家の子じゃないかと思うんだが…」

俺は兵士にリコを抱き上げてこの子だと見せた。

リコは俺の服の隙間からチラッと顔を覗かせる。

可愛い仕草に兵士の鼻の下が少し下がっていた。

「確かに気品がある顔だな、ジンジャー家はこっちだ。俺が連れていこうか?」

兵士にリコを渡せとばかりに手を差し出された。

俺はどうしようかとリコを見ると不安そうに顔をあげて服を掴まれてしまった。

「いや、俺が責任もってこの子を届けるよ」

「そうか?まぁいいが俺もついて行くぞ、万が一って事もあるからな」

俺は頷き、兵士の案内でジンジャー家へと向かった。
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