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「ここはうるさいから食堂の方に移動しようか?マリーの好きなお菓子があるよ。申請して常備させるようにしたんだ」
「申請?常備?」
お兄様、学園で何してるの…
でもお菓子かと…思わずゴクリと唾を飲み込むとテオドールお兄様が笑って私の手を取って歩こうとする。
「テオドール様!お茶をするなら私達もご一緒してもよろしいでしょうか?」
すると一人のご令嬢がテオドールお兄様達の前に立ち塞がった。
「ビクトリア嬢、今は遠慮してもらってもいいか?大切な人を案内するので…」
テオドールお兄様は目の前のご令嬢に謝りながら何故か私の手を持ち上げてチュッと軽く手の甲にキスをした。
これは最近増えたお兄様の挨拶だ。
最初の頃は驚いたが最近ではもう慣れてきた、この世界では挨拶代わりにそんな事をするらしいと教えられたのだ。
たまに王子やダンさんも帰り際にしてくるようになった。
なのでお兄様がなぜ今挨拶をしたのかよくわからずにポカンとしていると…
「な、な、な!」
「七?」
ご令嬢は顔を真っ赤にして何やら怖い顔をこちらに向けてきた。
「その小娘はなんです!?テオドール様にふさわしくありません!令嬢達のパーティーでも見かけたこともないし何処の方かしら!?」
ビクトリアと呼ばれたご令嬢は何やら凄く怒っているようだ、金色の髪をドリルの様に巻き付けて頭には羽が生えた帽子を被っている。
なんかそのうち髪からミサイルでも発射しそうだった。
私がボケーッとそんな事を考えているとそんなとぼけた顔がさらに癇に障ったのかこちらに向かってきた。
あっ…叩かれるかな?
ゆっくりとスローモーションの様にご令嬢の手が大きく振りかぶった。
私はそんな時でさえ全然動かないドリル髪に感心して視線がそっちに集中すると…
バシッ!!
音はしたがご令嬢の手は私の頬に届く事はなかった。
「テ、テオドール様…」
ビクトリア様の手をお兄様が見事に防いでくれていた。
そして気がつけばシリルが私の手を引いて庇い、ダン様は剣に手をそっと当てていた。
「ビクトリア嬢…君は何をしようとしているのかわかってるのかな?」
テオドールお兄様の冷たい声がビクトリア嬢の背筋を凍らせた。
「わ、私は…ただこの令嬢の方に身分の違いを分からせようと…」
ビクトリア嬢は顔を真っ青にすると言い訳を始めたが、それをテオドールお兄様が冷たく無視する。
「あなたの父上の地位は何かな?」
「わ、私は伯爵家の長女です…」
「この子は私の大切な妹のマリーだ、もちろん私の父の爵位は知っているよね」
お兄様の顔は後ろで見えないがどうも落ち着いている風だが声が怒ってる?
これは止めた方がいいのかな…
隣のシリルやダン様を見ると同じように顔を顰めて令嬢を睨んでいた。
「い、妹…す、すみません!私テオドール様の妹君だとは知らずに…」
声を震わせて謝罪すると…
「もういいよ」
テオドールお兄様は真っ青を通り越して真っ白になったビクトリア嬢の横を無視するようにとおりすぎた。
そしてそのまま連れていかれると…
「お兄様、あの人あのままでいいのですか?なんか…震えてますけど…」
ちょっと心配になって声をかけた。
「マリーは本当に優しいんだから…自分を叩こうとした奴なんて庇う必要ないよ」
テオドールお兄様はそういうと大丈夫だからとその場を離れるようにさらに私の手を引いて歩き出した。
「申請?常備?」
お兄様、学園で何してるの…
でもお菓子かと…思わずゴクリと唾を飲み込むとテオドールお兄様が笑って私の手を取って歩こうとする。
「テオドール様!お茶をするなら私達もご一緒してもよろしいでしょうか?」
すると一人のご令嬢がテオドールお兄様達の前に立ち塞がった。
「ビクトリア嬢、今は遠慮してもらってもいいか?大切な人を案内するので…」
テオドールお兄様は目の前のご令嬢に謝りながら何故か私の手を持ち上げてチュッと軽く手の甲にキスをした。
これは最近増えたお兄様の挨拶だ。
最初の頃は驚いたが最近ではもう慣れてきた、この世界では挨拶代わりにそんな事をするらしいと教えられたのだ。
たまに王子やダンさんも帰り際にしてくるようになった。
なのでお兄様がなぜ今挨拶をしたのかよくわからずにポカンとしていると…
「な、な、な!」
「七?」
ご令嬢は顔を真っ赤にして何やら怖い顔をこちらに向けてきた。
「その小娘はなんです!?テオドール様にふさわしくありません!令嬢達のパーティーでも見かけたこともないし何処の方かしら!?」
ビクトリアと呼ばれたご令嬢は何やら凄く怒っているようだ、金色の髪をドリルの様に巻き付けて頭には羽が生えた帽子を被っている。
なんかそのうち髪からミサイルでも発射しそうだった。
私がボケーッとそんな事を考えているとそんなとぼけた顔がさらに癇に障ったのかこちらに向かってきた。
あっ…叩かれるかな?
ゆっくりとスローモーションの様にご令嬢の手が大きく振りかぶった。
私はそんな時でさえ全然動かないドリル髪に感心して視線がそっちに集中すると…
バシッ!!
音はしたがご令嬢の手は私の頬に届く事はなかった。
「テ、テオドール様…」
ビクトリア様の手をお兄様が見事に防いでくれていた。
そして気がつけばシリルが私の手を引いて庇い、ダン様は剣に手をそっと当てていた。
「ビクトリア嬢…君は何をしようとしているのかわかってるのかな?」
テオドールお兄様の冷たい声がビクトリア嬢の背筋を凍らせた。
「わ、私は…ただこの令嬢の方に身分の違いを分からせようと…」
ビクトリア嬢は顔を真っ青にすると言い訳を始めたが、それをテオドールお兄様が冷たく無視する。
「あなたの父上の地位は何かな?」
「わ、私は伯爵家の長女です…」
「この子は私の大切な妹のマリーだ、もちろん私の父の爵位は知っているよね」
お兄様の顔は後ろで見えないがどうも落ち着いている風だが声が怒ってる?
これは止めた方がいいのかな…
隣のシリルやダン様を見ると同じように顔を顰めて令嬢を睨んでいた。
「い、妹…す、すみません!私テオドール様の妹君だとは知らずに…」
声を震わせて謝罪すると…
「もういいよ」
テオドールお兄様は真っ青を通り越して真っ白になったビクトリア嬢の横を無視するようにとおりすぎた。
そしてそのまま連れていかれると…
「お兄様、あの人あのままでいいのですか?なんか…震えてますけど…」
ちょっと心配になって声をかけた。
「マリーは本当に優しいんだから…自分を叩こうとした奴なんて庇う必要ないよ」
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