上 下
93 / 107

102.アンスロット家の日常

しおりを挟む
なんだか近くで興奮するお父様とテオドールお兄様の声がするなぁと思いながら目を覚ました…

「んん…」

目をこすっていると二人の声がピタッと止まってしまった。

「マリーおはよう。よく寝てたねもっと寝てても良かったんだよ」

「そうだね、今日は疲れただろうから」

二人が優しい笑顔で見つめていた。

「おはようございます…大丈夫です…」

そうは言いながらも本当はまだ少し眠い、二人の声に起きたなんて言ったら気にしそうだから黙ってお父様の胸に顔を埋めた。

「はぁ…お父様いい匂い…」

あっ!つい本音が漏れちゃった!

でもつぶやく程度だから聞こえてないかな?

チラッと上目遣いに伺うように顔をあげるとそこには苦しそうに顔を背けるお父様がいた…

「お、お父様?」

これは話を聞いていたどころか重くて大変だったのか!?

私は慌てて下ろして欲しいと頼んだ!

「お父様!下ろして下さい!ずっと寝てる間抱っこしててくれたの?」

しかしお父様は全然下ろす気は無いようでさらに抱き直してしまった。

「マリーが重いなんてこと感じたことないよ、どんなに大きくなろうとお父様はいつでも抱き上げてあげるからね」

にっこりと笑うとそのままテオドールお兄様を見つめた。

「もちろんテオドールもだよ」

「お父様、私は大丈夫ですよ…」

お兄様が断ろうとするがその顔は恥ずかしそうだった!

これは本当は抱っこして欲しいけど私の手前出来ないだけなのでは!?

「お父様!お兄様!私お兄様と一緒に抱っこされたい!」

落ちないようにお父様の首にギュッと抱きつくとお父様にお兄様を抱っこして欲しいと頼んだ!

「もちろんだよ、さぁテオドールおいで…」

お父様が優しく声をかけるとテオドールお兄様は私とお父様を交互にみてため息をつくと手を差し出した。

「お父様、明日どうなっても知りませんよ」

「大丈夫、その時はフローラに介抱して貰うからね」

そんなお兄様の心配をよそにお父様はお兄様を軽々と抱き上げた。

グッとお兄様と距離が近くなり膝が重なって足が絡まる、顔をあげればすぐそこに整った顔のテオドールお兄様がいた。

「ふふ、お兄様一緒に抱っこ嬉しいね」

お兄様の赤くなった顔にやっぱり嬉しかったのだと確信した。

「おっと…テオドール、マリーを少し抱いてあげてくれ。落ちそうだ!」

お父様の言葉にお兄様に向かって手を伸ばした。

片手はお父様の首にもう片っぽをお兄様の腕にしっかりと掴まった。

「お兄様!お父様すごいね!私とお兄様二人とも抱っこしててくれて」

「そ、そうだね、でもそのうち私もマリーを軽々と抱き上げられるよ」

お兄様の優しい笑顔に楽しみだと返しておいた。

でもそれは一番最初は王子にしてあげてくださいと心の中でお願いしておいたのは内緒だ。

その後心配して来てくれたシリルもきてずるいと泣きそうな顔をしてしまい、慌てたお父様が私達三人を抱き上げてくれた。

そして次の日…お父様はお母様と部屋から出てくることはなかったのだ。
しおりを挟む
感想 118

あなたにおすすめの小説

マグノリア・ブルーム〜辺境伯に嫁ぎましたが、私はとても幸せです

花野未季
恋愛
公爵家令嬢のマリナは、父の命により辺境伯に嫁がされた。肝心の夫である辺境伯は、魔女との契約で見た目は『化物』に変えられているという。 お飾りの妻として過ごすことになった彼女は、辺境伯の弟リヒャルトに心惹かれるのだった……。 少し古風な恋愛ファンタジーですが、恋愛少な目(ラストは甘々)で、山なし落ちなし意味なし、しかも伏線や謎回収なし。もろもろ説明不足ですが、お許しを! 設定はふんわりです(^^;) シンデレラ+美女と野獣ですσ(^_^;) エブリスタ恋愛ファンタジートレンドランキング日間1位(2023.10.6〜7) Berry'z cafe編集部オススメ作品選出(2024.5.7)

【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那
恋愛
 元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。 ◇◇◇◇  名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。  自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。    運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!  なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!? ◇◇◇◇ お気に入り登録、エールありがとうございます♡ ※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。 ※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

破滅ルートを全力で回避したら、攻略対象に溺愛されました

平山和人
恋愛
転生したと気付いた時から、乙女ゲームの世界で破滅ルートを回避するために、攻略対象者との接点を全力で避けていた。 王太子の求婚を全力で辞退し、宰相の息子の売り込みを全力で拒否し、騎士団長の威圧を全力で受け流し、攻略対象に顔さえ見せず、隣国に留学した。 ヒロインと王太子が婚約したと聞いた私はすぐさま帰国し、隠居生活を送ろうと心に決めていた。 しかし、そんな私に転生者だったヒロインが接触してくる。逆ハールートを送るためには私が悪役令嬢である必要があるらしい。 ヒロインはあの手この手で私を陥れようとしてくるが、私はそのたびに回避し続ける。私は無事平穏な生活を送れるのだろうか?

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。

玖保ひかる
恋愛
[完結] 北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。 ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。 アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。 森に捨てられてしまったのだ。 南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。 苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。 ※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。 ※完結しました。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

悪役令嬢に転生するも魔法に夢中でいたら王子に溺愛されました

黒木 楓
恋愛
旧題:悪役令嬢に転生するも魔法を使えることの方が嬉しかったから自由に楽しんでいると、王子に溺愛されました  乙女ゲームの悪役令嬢リリアンに転生していた私は、転生もそうだけどゲームが始まる数年前で子供の姿となっていることに驚いていた。  これから頑張れば悪役令嬢と呼ばれなくなるのかもしれないけど、それよりもイメージすることで体内に宿る魔力を消費して様々なことができる魔法が使えることの方が嬉しい。  もうゲーム通りになるのなら仕方がないと考えた私は、レックス王子から婚約破棄を受けて没落するまで自由に楽しく生きようとしていた。  魔法ばかり使っていると魔力を使い過ぎて何度か倒れてしまい、そのたびにレックス王子が心配して数年後、ようやくヒロインのカレンが登場する。  私は公爵令嬢も今年までかと考えていたのに、レックス殿下はカレンに興味がなさそうで、常に私に構う日々が続いていた。

処理中です...