上 下
64 / 107

64.誤解

しおりを挟む
「え?ラクター先生のお父様ですか?」

そうだとビルド伯爵が頷いた。

何故か怯えるビルド伯爵を見上げる…ふっと目をそらされた。

全然ラクター先生に似てない…

先生はもっと自分に自信満々って感じだったがビルドさんは自信なさげな感じがする。

「ビルド様、ラクター先生にお世話になりましたとお伝え下さい」

私は伝えられなかった言葉をビルドさんに託した。

「え?ラクターに?」

ビルドさんが驚いて顔をあげた。

「はい、挨拶も出来なくて辞めちゃったと聞いたので…」

「マリー様は娘に…怒ってはいないのですか?」

「怒る?」

え?何かされたっけ?

私は先生との会話を思い出す…

んー…シリルの顔とかお父様とトーマスさん見てたからなぁ…なんかよく覚えてないや

「怒るような事は言われてませんよ」

たぶん!

少し考えてそう答えると

「マリー…お前の気持ちはわかった…もう部屋に戻りなさい」

「は、はい」

お父様が何故か誇らしそうに目を細めてこちらを見つめると部屋を出るように言われてしまった。

「マリー様…本当にお優しい…」

トーマスさんまで目頭を押さえながら何か呟く…どうしたんだ?この二人?

ビルドさんは何か考えているのか難しい顔をして黙ってしまった。

なんか大人の難しい話なのかも…ここは早めに退散しよう!

「では、失礼します」

私はペコッと頭を下げてそそくさと部屋を出ていった。


マリーが部屋を出ていくとトーマスは足音でマリー様が離れるたのを確認する。

「お部屋の方に戻られたようです」

トーマスが笑ってジェラートを見ると…

「マリー様はあんな仕打ちを受けてなお、あの娘を罰しないで欲しいと言いに来たのですね…しかも気にかけまいと遠回しに…」

トーマスがそう呟くと…

「あんな幼い子が…なんと聡明で慈悲深い…本当に娘のした事が恥ずかしいです」

ビルドはガクッと膝を床につけた。

「マリーにあんな事を言われてしまったら、君を罰したりしたら嫌われてしまいますね」

ジェラートがはぁとため息を着くのをビルドはハッ!として見つめた。

「今回の件は…厳重注意としておく。その代わり君から十分に娘を叱っておきなさい。私も偉そうな事は言えないが…それが親としての務めだ!それに気づかせてくれたのもマリーだったなぁ…」

ジェラートは昔を思い出し懐かしそうな顔をしていると

「ありがとう…ございます!ジェラート様に…そしてマリー様に感謝致します!」

ビルドは親子の寛大な処置に心から感謝して深々と頭を下げ続けた。



お客様が帰るとお父様とトーマスさんが笑いながら部屋にきた。

なんだかとても機嫌がいい、いい事でもあったのかな?

部屋にいた時はなんだか怒ってるようだったのに…

不思議そうにその顔を見上げると

「本当にマリーは私の天使だ…」

お父様はそういうと私を抱き上げ強く抱きしめた…

私はお父様の態度に首を傾げるしかなかった…
しおりを挟む
感想 118

あなたにおすすめの小説

マグノリア・ブルーム〜辺境伯に嫁ぎましたが、私はとても幸せです

花野未季
恋愛
公爵家令嬢のマリナは、父の命により辺境伯に嫁がされた。肝心の夫である辺境伯は、魔女との契約で見た目は『化物』に変えられているという。 お飾りの妻として過ごすことになった彼女は、辺境伯の弟リヒャルトに心惹かれるのだった……。 少し古風な恋愛ファンタジーですが、恋愛少な目(ラストは甘々)で、山なし落ちなし意味なし、しかも伏線や謎回収なし。もろもろ説明不足ですが、お許しを! 設定はふんわりです(^^;) シンデレラ+美女と野獣ですσ(^_^;) エブリスタ恋愛ファンタジートレンドランキング日間1位(2023.10.6〜7) Berry'z cafe編集部オススメ作品選出(2024.5.7)

【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那
恋愛
 元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。 ◇◇◇◇  名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。  自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。    運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!  なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!? ◇◇◇◇ お気に入り登録、エールありがとうございます♡ ※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。 ※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

破滅ルートを全力で回避したら、攻略対象に溺愛されました

平山和人
恋愛
転生したと気付いた時から、乙女ゲームの世界で破滅ルートを回避するために、攻略対象者との接点を全力で避けていた。 王太子の求婚を全力で辞退し、宰相の息子の売り込みを全力で拒否し、騎士団長の威圧を全力で受け流し、攻略対象に顔さえ見せず、隣国に留学した。 ヒロインと王太子が婚約したと聞いた私はすぐさま帰国し、隠居生活を送ろうと心に決めていた。 しかし、そんな私に転生者だったヒロインが接触してくる。逆ハールートを送るためには私が悪役令嬢である必要があるらしい。 ヒロインはあの手この手で私を陥れようとしてくるが、私はそのたびに回避し続ける。私は無事平穏な生活を送れるのだろうか?

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。

玖保ひかる
恋愛
[完結] 北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。 ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。 アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。 森に捨てられてしまったのだ。 南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。 苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。 ※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。 ※完結しました。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

悪役令嬢に転生するも魔法に夢中でいたら王子に溺愛されました

黒木 楓
恋愛
旧題:悪役令嬢に転生するも魔法を使えることの方が嬉しかったから自由に楽しんでいると、王子に溺愛されました  乙女ゲームの悪役令嬢リリアンに転生していた私は、転生もそうだけどゲームが始まる数年前で子供の姿となっていることに驚いていた。  これから頑張れば悪役令嬢と呼ばれなくなるのかもしれないけど、それよりもイメージすることで体内に宿る魔力を消費して様々なことができる魔法が使えることの方が嬉しい。  もうゲーム通りになるのなら仕方がないと考えた私は、レックス王子から婚約破棄を受けて没落するまで自由に楽しく生きようとしていた。  魔法ばかり使っていると魔力を使い過ぎて何度か倒れてしまい、そのたびにレックス王子が心配して数年後、ようやくヒロインのカレンが登場する。  私は公爵令嬢も今年までかと考えていたのに、レックス殿下はカレンに興味がなさそうで、常に私に構う日々が続いていた。

処理中です...