54 / 107
54.友
しおりを挟む
「よ、よかったです。喜んでいただけて…」
猫神様がほっと胸を撫で下ろした。
するとふわぁっと体が薄くなってきた…
「あっ!すみませんマリーさんお時間のようです!あんまりこっちの空間にとどまってしまうとマリーさんによろしくなくて…」
「そうなんだ…なら今度は私の世界に遊びに来てください!」
「え…いいんですか?」
「もちろん!それとも猫神様は来れないんですか?前世の世界で買い物してたって言ってたけど…」
「いえ!大丈夫です!誰かから誘われた事なんて…無かったから…」
嬉しそうに顔を緩ませた。
「必ず遊び来てくださいね!」
「はい!すぐには無理ですが必ず!」
消えゆく中私は必死に手を伸ばした。
「私達、もう同志ですね!」
「同志…?」
「友って事です!志しが同じ仲間です!オタ友!」
「はい!友…達ですね」
「じゃあまたー…」
マリーの言葉と笑顔が遮られるが猫神様の心にはしっかりと届いた。
「はい…また〝ね〟。マリーさん、あなたに幸多からん事を…」
猫神様は始めて出来た友の幸福を祈らずにはいられなかった。
◆
私は気がつくと勉強部屋に戻っていた。
そして見るとその手にはしっかりとあの本が握られている。
「ふぁ~!!」
ばっ!と本を掲げて眺めると…
男の人が抱き合った素晴らしい絵がこちらを見て微笑んでいた。
「久しぶりのBL本だ…」
内容はほぼ暗記していた…パラパラと本をめくると…
「題名がかまって下さいなんだから…この文字がそう読めるって事か…」
私は夢中で文字を置いながら本をめくった!
その頃シリルと家庭教師のラクターは屋敷の主ジェラートの元に向かっていた…
「お忙しいところ恐れ入ります。ジェラート様にどうしても御報告しなければならない事が出来まして…」
うやうやしくラクターが頭を下げるとジェラートを上目遣いに見上げた。
「なにかな?また子供達の事で何か問題でもありましたか?」
ジェラートは持っていた書類を机に置くと前を見て話に集中した。
「はい、シリル様とマリー様の事です」
「それは昨日話しましたよね。マリーも一緒に勉強させると…」
「その事では…それにちゃんと同じ部屋で教えていますわ!」
ラクターは声を高く甘えるように答えた。
「お父様…僕も発言よろしいですか?」
そんな媚びを売る様子に嫌悪感をあらわにラクターを見ていたシリルがそっと手を上げる。
「なんだい?シリル」
ジェラートはラクターには反応せずにシリルに笑いかけた。
「この方は…勉学の方は少しだけなら出来るかもしれませんが僕には合いません…それにマリーにも…」
シリルがジロリとラクターを見つめた。
「少し!」
ラクターは馬鹿にされた事がカチンと来たようだ!
「ん?どういう事かな?」
ジェラートは二人を交互に見ると
「ジェラート様!テオドール様は大変優秀で教えるに値しますがこちらのシリル様とマリー様はどうかと…こんな事言いたくありませんがジェラート様に似ていないのでは?」
「何…」
「ジェラート様と言うより奥様似なのではないかと…」
「ほほう…」
ジェラートはこめかみをピクピクさせながらもどうにか落ち着いてこの女の話を聞いた。
「シリル様は確かに優秀ですがそれも一時だと思います!このままでいたら落ちこぼれる事間違いなしです!あのマリー様の様に!」
「マリーが落ちこぼれ…?」
ジェラートは自分の耳を疑った。
猫神様がほっと胸を撫で下ろした。
するとふわぁっと体が薄くなってきた…
「あっ!すみませんマリーさんお時間のようです!あんまりこっちの空間にとどまってしまうとマリーさんによろしくなくて…」
「そうなんだ…なら今度は私の世界に遊びに来てください!」
「え…いいんですか?」
「もちろん!それとも猫神様は来れないんですか?前世の世界で買い物してたって言ってたけど…」
「いえ!大丈夫です!誰かから誘われた事なんて…無かったから…」
嬉しそうに顔を緩ませた。
「必ず遊び来てくださいね!」
「はい!すぐには無理ですが必ず!」
消えゆく中私は必死に手を伸ばした。
「私達、もう同志ですね!」
「同志…?」
「友って事です!志しが同じ仲間です!オタ友!」
「はい!友…達ですね」
「じゃあまたー…」
マリーの言葉と笑顔が遮られるが猫神様の心にはしっかりと届いた。
「はい…また〝ね〟。マリーさん、あなたに幸多からん事を…」
猫神様は始めて出来た友の幸福を祈らずにはいられなかった。
◆
私は気がつくと勉強部屋に戻っていた。
そして見るとその手にはしっかりとあの本が握られている。
「ふぁ~!!」
ばっ!と本を掲げて眺めると…
男の人が抱き合った素晴らしい絵がこちらを見て微笑んでいた。
「久しぶりのBL本だ…」
内容はほぼ暗記していた…パラパラと本をめくると…
「題名がかまって下さいなんだから…この文字がそう読めるって事か…」
私は夢中で文字を置いながら本をめくった!
その頃シリルと家庭教師のラクターは屋敷の主ジェラートの元に向かっていた…
「お忙しいところ恐れ入ります。ジェラート様にどうしても御報告しなければならない事が出来まして…」
うやうやしくラクターが頭を下げるとジェラートを上目遣いに見上げた。
「なにかな?また子供達の事で何か問題でもありましたか?」
ジェラートは持っていた書類を机に置くと前を見て話に集中した。
「はい、シリル様とマリー様の事です」
「それは昨日話しましたよね。マリーも一緒に勉強させると…」
「その事では…それにちゃんと同じ部屋で教えていますわ!」
ラクターは声を高く甘えるように答えた。
「お父様…僕も発言よろしいですか?」
そんな媚びを売る様子に嫌悪感をあらわにラクターを見ていたシリルがそっと手を上げる。
「なんだい?シリル」
ジェラートはラクターには反応せずにシリルに笑いかけた。
「この方は…勉学の方は少しだけなら出来るかもしれませんが僕には合いません…それにマリーにも…」
シリルがジロリとラクターを見つめた。
「少し!」
ラクターは馬鹿にされた事がカチンと来たようだ!
「ん?どういう事かな?」
ジェラートは二人を交互に見ると
「ジェラート様!テオドール様は大変優秀で教えるに値しますがこちらのシリル様とマリー様はどうかと…こんな事言いたくありませんがジェラート様に似ていないのでは?」
「何…」
「ジェラート様と言うより奥様似なのではないかと…」
「ほほう…」
ジェラートはこめかみをピクピクさせながらもどうにか落ち着いてこの女の話を聞いた。
「シリル様は確かに優秀ですがそれも一時だと思います!このままでいたら落ちこぼれる事間違いなしです!あのマリー様の様に!」
「マリーが落ちこぼれ…?」
ジェラートは自分の耳を疑った。
17
お気に入りに追加
2,526
あなたにおすすめの小説

〖完結〗死にかけて前世の記憶が戻りました。側妃? 贅沢出来るなんて最高! と思っていたら、陛下が甘やかしてくるのですが?
藍川みいな
恋愛
私は死んだはずだった。
目を覚ましたら、そこは見知らぬ世界。しかも、国王陛下の側妃になっていた。
前世の記憶が戻る前は、冷遇されていたらしい。そして池に身を投げた。死にかけたことで、私は前世の記憶を思い出した。
前世では借金取りに捕まり、お金を返す為にキャバ嬢をしていた。給料は全部持っていかれ、食べ物にも困り、ガリガリに痩せ細った私は路地裏に捨てられて死んだ。そんな私が、側妃? 冷遇なんて構わない! こんな贅沢が出来るなんて幸せ過ぎるじゃない!
そう思っていたのに、いつの間にか陛下が甘やかして来るのですが?
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

〖完結〗幼馴染みの王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。
藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。
何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。
同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。
もうやめる。
カイン様との婚約は解消する。
でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。
愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません!
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~
浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。
「これってゲームの強制力?!」
周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。
※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる