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「どんな違和感だ?医者を呼んだ方がいいか?」
「そ、そんな必要ありません!本当に…あの…ちょっとだけなので…」
ロレッタはボソボソと声を濁していると
「聞こえない…なんだ?」
フレッド王子の顔が近づいて来た。
「あ、あの…」
しかしフレッド王子はふざけている訳でなくその顔は真剣に心配をしているようだった。
そして顔が近づいた事でフレッド王子の傷に気がついた。
「王子…そのお顔は…」
ロレッタは自分の違和感など忘れて王子の顔に手を伸ばした。
頬には薄らと叩かれたような赤い痕が…所々に引っ掻き傷もある。
「痛そう…」
ロレッタは優しくその傷を労わるようになぞった。
フレッドは申し訳なくなりながらロレッタの手を掴むと…
「ロレッタに話さないといけない事がある…そうすればこの傷の訳も納得する…」
フレッドはロレッタに呆れられるのを覚悟して女性関係の事を話始めた。
ロレッタは王子の話を真剣に聞いていた…じっと見つめられてフレッドの方がいたたまれなくて何度も目線を逸らしてしまった。
「私のせいでロレッタは騙されて薬を飲まされたのだ…本当にすまない。他の女性達には謝罪して関係を全て絶ってきた…だからもう君に被害が及ぶ事はない…」
「そうだったんですか…」
ロレッタは悲しそうな声を出した。
フレッドはその声にグッと胸を締め付けられる。
さすがのロレッタにもやはり呆れられ嫌われてしまった…しかしこの事を秘密にしておく事も出来なかった。
「では…フルレシア様とはもうお友達にはなれないのでしょうか?」
「すまない…ルフレシアは……ん?友達?」
「はい、私…今まで友と呼べる人が居なくて…ルフレシア様が初めてだったのです…友になろうと言われた時、本当に嬉しかった…」
ロレッタはその時の事を思い出して微笑んだ。
「ルフレシア様は今どちらに?」
「彼女は幽閉している、だから安心して欲しいもう君に危害を加えることは決して出来ない」
「幽閉…そうですか…」
「ロレッタが彼女にされた事を証言すれば収容所か修道所行きとなるだろう…もう普通の生活を送ることは出来なくなる」
フレッド王子の顔はなんとも言えず複雑な表情をしていた。
「ルフレシア様と…少しだけお話って出来ますか?」
「ルフレシアと!?いや、やめておいた方がいい」
「お願いします…本当に少しだけでもいいので…」
フレッド王子は心配するがロレッタは一言だけでも言いたいと王子に懇願した。
「うっ…」
ロレッタからのお願いならなんでも叶えてあげたいと思っていたが…いざきた願いがこれとは…
フレッドはなんと答えようかと迷っていた。
「王子、ロレッタ様?」
するとエミリーさんが部屋をノックして声をかけてきた。
いいタイミングだとフレッドは安堵する。
「入れ」
「失礼致します。ロレッタ様がお腹を空かせているのではと…スープを用意致しました」
エミリーさんが台車に温かいスープを乗せて持ってきてくれた。
美味しそうな香りが部屋に広がると…
くぅ~
可愛いお腹の音が鳴った。
フレッド王子とエミリーさんの視線の先には頬を赤く染めるロレッタが…
「ふふ、ちょうどよかったみたいです。ロレッタ様食べられそうですね」
「はい…お願いします」
エミリーさんが笑いながらロレッタにスープを用意すると…フーフーと冷ましながらロレッタが美味しそうに飲んでいる。
ぐぅー!
すると今度は王子の腹が…
「いや、美味そうに飲んでいるからつい…気にせず食べてくれ」
フレッド王子は自分の腹を撫でて鳴くなと叩いた。
「ふふ、フレッド様…良かったら」
ロレッタは笑って王子にスープを差し出した。
「いいのかな?」
「はい」
すると王子は大きな口をあーんと開けて待っている。
「え…」
ロレッタとしては器ごと渡そうと思っていたが…これは…
「どうした、くれないのか?」
王子は自分の手で受け取る気は無いようでずっと待っていた。
「で、では失礼して…」
ロレッタはスープを冷ますと王子の口に運ぶ…緊張して微かに手が震えてしまった。
「んっ…美味い」
王子は少し口の端から零れたスープを舌でペロッと舐めた。
王子の色っぽい仕草にロレッタはドキッと胸がなる。
その後は味わう余裕もなくひたすらにスープを飲み干した。
「そ、そんな必要ありません!本当に…あの…ちょっとだけなので…」
ロレッタはボソボソと声を濁していると
「聞こえない…なんだ?」
フレッド王子の顔が近づいて来た。
「あ、あの…」
しかしフレッド王子はふざけている訳でなくその顔は真剣に心配をしているようだった。
そして顔が近づいた事でフレッド王子の傷に気がついた。
「王子…そのお顔は…」
ロレッタは自分の違和感など忘れて王子の顔に手を伸ばした。
頬には薄らと叩かれたような赤い痕が…所々に引っ掻き傷もある。
「痛そう…」
ロレッタは優しくその傷を労わるようになぞった。
フレッドは申し訳なくなりながらロレッタの手を掴むと…
「ロレッタに話さないといけない事がある…そうすればこの傷の訳も納得する…」
フレッドはロレッタに呆れられるのを覚悟して女性関係の事を話始めた。
ロレッタは王子の話を真剣に聞いていた…じっと見つめられてフレッドの方がいたたまれなくて何度も目線を逸らしてしまった。
「私のせいでロレッタは騙されて薬を飲まされたのだ…本当にすまない。他の女性達には謝罪して関係を全て絶ってきた…だからもう君に被害が及ぶ事はない…」
「そうだったんですか…」
ロレッタは悲しそうな声を出した。
フレッドはその声にグッと胸を締め付けられる。
さすがのロレッタにもやはり呆れられ嫌われてしまった…しかしこの事を秘密にしておく事も出来なかった。
「では…フルレシア様とはもうお友達にはなれないのでしょうか?」
「すまない…ルフレシアは……ん?友達?」
「はい、私…今まで友と呼べる人が居なくて…ルフレシア様が初めてだったのです…友になろうと言われた時、本当に嬉しかった…」
ロレッタはその時の事を思い出して微笑んだ。
「ルフレシア様は今どちらに?」
「彼女は幽閉している、だから安心して欲しいもう君に危害を加えることは決して出来ない」
「幽閉…そうですか…」
「ロレッタが彼女にされた事を証言すれば収容所か修道所行きとなるだろう…もう普通の生活を送ることは出来なくなる」
フレッド王子の顔はなんとも言えず複雑な表情をしていた。
「ルフレシア様と…少しだけお話って出来ますか?」
「ルフレシアと!?いや、やめておいた方がいい」
「お願いします…本当に少しだけでもいいので…」
フレッド王子は心配するがロレッタは一言だけでも言いたいと王子に懇願した。
「うっ…」
ロレッタからのお願いならなんでも叶えてあげたいと思っていたが…いざきた願いがこれとは…
フレッドはなんと答えようかと迷っていた。
「王子、ロレッタ様?」
するとエミリーさんが部屋をノックして声をかけてきた。
いいタイミングだとフレッドは安堵する。
「入れ」
「失礼致します。ロレッタ様がお腹を空かせているのではと…スープを用意致しました」
エミリーさんが台車に温かいスープを乗せて持ってきてくれた。
美味しそうな香りが部屋に広がると…
くぅ~
可愛いお腹の音が鳴った。
フレッド王子とエミリーさんの視線の先には頬を赤く染めるロレッタが…
「ふふ、ちょうどよかったみたいです。ロレッタ様食べられそうですね」
「はい…お願いします」
エミリーさんが笑いながらロレッタにスープを用意すると…フーフーと冷ましながらロレッタが美味しそうに飲んでいる。
ぐぅー!
すると今度は王子の腹が…
「いや、美味そうに飲んでいるからつい…気にせず食べてくれ」
フレッド王子は自分の腹を撫でて鳴くなと叩いた。
「ふふ、フレッド様…良かったら」
ロレッタは笑って王子にスープを差し出した。
「いいのかな?」
「はい」
すると王子は大きな口をあーんと開けて待っている。
「え…」
ロレッタとしては器ごと渡そうと思っていたが…これは…
「どうした、くれないのか?」
王子は自分の手で受け取る気は無いようでずっと待っていた。
「で、では失礼して…」
ロレッタはスープを冷ますと王子の口に運ぶ…緊張して微かに手が震えてしまった。
「んっ…美味い」
王子は少し口の端から零れたスープを舌でペロッと舐めた。
王子の色っぽい仕草にロレッタはドキッと胸がなる。
その後は味わう余裕もなくひたすらにスープを飲み干した。
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