【完結】売られた令嬢

三園 七詩

文字の大きさ
上 下
19 / 98

19.

しおりを挟む
「おはようございます」

エミリーはフレッド王子とロレッタ様の寝室に入る前に声をかけると…

「少し待て…」

中からフレッド王子の声が返ってきた。

ロレッタ様の声がないわ…

しかし待てと言われて突入する訳にもいかず、心配になりながら言われた通りにソワソワしながら落ち着かずに待っていると…

「いいぞ」

フレッド王子の許可に急いでその身を部屋に滑り込ませた。

「ロレッタ様!おはようございます!」

ロレッタ様が気になり真っ先に声をかけると…

「エミリー、先ずは俺に挨拶じゃないのか?」

フレッド王子は苦笑しながらベッドに座っていた。

「王子が元気なのは声でわかりました。それよりもロレッタ様は?」

「ここにいる…疲れたようでまだ寝ているからこのままに」

そう言ってベッドに寝ていたロレッタ様の髪を優しく撫でた。

「王子…」

女性にあんな顔をするフレッド王子の変化に驚いた。

起こさないようにそっと近づくと、ロレッタ様はスヤスヤとベッドで寝ていた。

しかしその身は何も着ていないように感じる。

「王子…まさか…」

私は思わず王子を睨む!

ロレッタ様を大事にしていると思った矢先にまさかもう!?

「凄い怖い顔だなエミリー。だがまだ何もしてないぞ」

「え?」

思わぬ返事に驚くと

「どうもロレッタ相手だと上手くいかん…」

しかしそれが嫌と言うわけでは無いようだ。

笑いながらロレッタ様を見下ろしていた。

「俺はもう公務に行くから後は頼んだ。ロレッタは痩せすぎだ、何か甘い物でも食べさせてやってくれ」

「かしこまりました」

私は喜んでと頷くと王子を見送った。部屋の外にはもうシド様が待機していたようでお二人で公務へと向かった。

しばらく静かに部屋の掃除やロレッタ様が起きた時の準備をしていると…

「んっ…」

ロレッタ様が身動ぎ起き上がった。

「ロレッタ様、おはようございます」

エミリーが声をかけるとビクッとロレッタ様が肩を揺らした。

「驚かせてしまい申し訳ありません。お疲れのご様子だったので王子からそのままにするようにと言われておりました」

「フレッド様が?」

ロレッタ様はキョロキョロと部屋の中を見渡している。

フレッド王子を探しているようだ。

「王子はもう公務に行かれましたよ。ロレッタ様はこれから湯浴みを、その後食事に致しましょう」

「なんだか申し訳ないです…私は役目も果たせないのに…」

「役目?ロレッタ様は王子からなにか言われているのですが?」

「いえ、フレッド様はこんな私に優しくしてくださいます…私は売られた身、本来ならフレッド様を私が癒して差し上げなければいけないのに…」

ギュッと悔しそうにシーツを握りしめていた。

「ロレッタ様はそのままでよいのです。フレッド王子は変わりつつありますから」

「変わった?」

「はい、なんだか落ち着きましたね」

「そうでしょうか?フレッド様は最初から大人で…落ち着いてらしたように思えます」

「それは、ロレッタ様が来たからです」

エミリーさんが自信満々に頷くがロレッタは自分が何かしたとは思えず首を傾げていた。
しおりを挟む
感想 290

あなたにおすすめの小説

メイドから母になりました 番外編

夕月 星夜
ファンタジー
メイドから母になりましたの番外編置き場になります リクエストなどもこちらです

根暗令嬢の華麗なる転身

しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」 ミューズは茶会が嫌いだった。 茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。 公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。 何不自由なく、暮らしていた。 家族からも愛されて育った。 それを壊したのは悪意ある言葉。 「あんな不細工な令嬢見たことない」 それなのに今回の茶会だけは断れなかった。 父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。 婚約者選びのものとして。 国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず… 応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*) ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。 同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。 立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。 一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。 描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。 ゆるりとお楽しみください。 こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

元聖女だった少女は我が道を往く

春の小径
ファンタジー
突然入ってきた王子や取り巻きたちに聖室を荒らされた。 彼らは先代聖女様の棺を蹴り倒し、聖石まで蹴り倒した。 「聖女は必要がない」と言われた新たな聖女になるはずだったわたし。 その言葉は取り返しのつかない事態を招く。 でも、もうわたしには関係ない。 だって神に見捨てられたこの世界に聖女は二度と現れない。 わたしが聖女となることもない。 ─── それは誓約だったから ☆これは聖女物ではありません ☆他社でも公開はじめました

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

処理中です...