【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩

文字の大きさ
上 下
4 / 177

よん

しおりを挟む
俺は妻に子供が目を覚ましたことを伝えると…

「あら!起きたのね、よかった…ならこれをもっていってあげて!栄養たっぷりのスープよ!コレを飲めばすぐ元気になるわ!」

妻はスープをよそうとスプーンを付けて渡してきた。

「お代わりなら沢山あるからね」

俺は頷くとスープを子供の元へと持っていった。

いつも通りのいい香りが食欲を湧かせる、さすが俺の妻だ。

子供の元にいってスープを差し出すが受け取ろうとしない…どうやら迷っている様子に俺は一口飲んで見せた。

うん!美味い!

すると正直な子供のお腹が豪快に鳴り出した!

俺はもう一度スープをひと匙差し出すと今度は恐る恐る啜ってくれる。

ゆっくりとスープを飲み出すと…飲んだ分程の大粒の涙を流していた…

涙を流しながらも飲む事を止めることなくスープを貪る様に飲んでいる…

俺は思わず涙を拭いた。

子供はスープを飲み干すと若干落ち着いたようだ…泣き腫らした赤い目で俺を見つめてきた。

上手く喋る事の出来ない子供はたどたどしくお礼を言うとここをすぐにでも出ていくと言う。

どうやら自分がここにいる事を良くないと思っているようだった。

俺はあんな風に道に倒れていた子が帰る場所がちゃんとあるのかと心配になった…。

帰る場所はあるのか…

子供に酷な事を聞く

すると子供は顔を曇らせ首を横に振る…

やはり帰る場所が無いようだ、ならとここでよければ居てもいいと言ってみる。

子供は言われた意味がわからなかったのか唖然と固まってしまった。

しまいには自分以外に人が居ないかさがす始末…思わずその仕草に笑ってしまった。

急な話にゆっくりと考えて見るように言うとまたベッドに寝かせる。

余程疲れていたのか腹も膨れた事で子供はすぐに眠りについた…

子供の髪を撫でていると…

「どうかしら?」

妻が部屋に顔を出した…

「今寝たところだよ」

妻は俺のそばに来ると子供の顔を覗き込む。

「可愛い顔で寝てるわね、こんなに可愛いのに…なんであんなに酷い格好で…」

「この子…帰る家がないらしい…」

俺が妻を見ると…

「ならここに住めばいいじゃない?」

俺は妻と同じ事を考えていた事に嬉しくなる…

「だな…」

俺は妻と微笑み合うと子供に笑いかけ部屋を出て行った。


次の日の朝早速部屋に子供を起こしに行くと、部屋のベッドのシーツが綺麗にたたまれ子供の姿が無かった…

「あれ?」

俺は部屋の中を探してみると…壁とベッドの隙間に子供が寄りかかりながら眠っていた。

その姿に可愛いやら、そんな所で眠る事に慣れてしまっていることに悲しくもなる。

俺は子供をだき抱えると起こさないようにそっとベッドに戻した…しかし子供は気が付き目を覚ましてしまう。

「う…ん」

目を擦りながら周りを確認していると俺と目があった。

「あっ」

子供は昨日の事を思い出したのか急いで立ち上がるとベッドから降りた!

「ごめんさい…よごして…」

そう言って汚れたベッドを怯えながら見つめていた。

「なんだ?そんなの洗えば綺麗になる、なんの問題もない。それよりどうだ?朝飯の時間だか食えるか?」

俺が聞くと、子供の変わりに腹の虫がぐぅと答えた。

「ははは!坊主の腹の虫は正直で元気だな!」

俺は笑うと坊主を抱き上げた。




しおりを挟む
感想 210

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜

九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます! って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。 ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。 転移初日からゴブリンの群れが襲来する。 和也はどうやって生き残るのだろうか。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...