貧乏庶民に転生!?将来楽しみな子を見つけたので私が守ります!

三園 七詩

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26.顔

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「サラ様」

扉が開き、心を少し開いてくれたのかと扉に近づいた。

「入らないで!」

サラ様の声に足を止めた。

「ミーナ」

するとサラ様は侍女の名前を呼んで部屋へと招き入れる。
その時見えた手は細く血の気が無い。

でもアーロン様に見えた掻きむしった後など見えなかった。

ミーナさんは申し訳なさそうに私に頭を下げて部屋へと入った。
そして扉を閉めると中で2人の会話する声が聞こえてきた。

「お嬢様……」

「わかってる……マリルさん、ちょっとだけ待ってて」

「はい!」

私はいつまでも待つつもりでいた。

しかし思いのほか待たされずに中へと通された。

サラ様は顔に帽子と布を何重にも巻いて部屋の奥に腰掛けていた。

「こんな姿でごめんなさい」

サラ様は怯えた声で謝ってきた。

「どんな姿だって大丈夫です。サラ様のお部屋ですからね、でも……」

締め切った部屋はやはり空気が悪い。
部屋を見渡すと何も無くガランとしてやはり窓という窓にはカーテンが…それと窓とは関係ない棚のガラスなどに布がかかっている。

なんでだろうと考えながら部屋を一通りみてわかった。

この部屋には自分を映すものが無いのだ。

「サラ様、そちらに近づいてもいいですか?」

サラ様は迷っていたが渋りながらも頷いてくれた。

私は近づいサラ様の顔が見える位置まで行くが布に巻かれた顔には素肌が見える場所はなかった。

しかし腕や首は隠されていない、そこを見る限り湿疹や掻き傷はできていなかった。

「サラ様いくつか質問をしてもいいですか?答えたくなければ答えなくて構いません」

「ええ」

「まず赤いボツボツが出来たと聞きましたがそれは顔だけですか?」

「そう、最初は1個だけだったのに......今では」

声のトーンが落ちていく、私は慌てて質問を続けた。

「それは痛み痒みはありませんか?」

「無かったわ」

「でも気になって触ったりして潰れる、なんてことは?」

「......」

サラ様はなんでわかったの?と言うように私の顔を見つめた。

「ボツボツは潰れると跡になりませんでしたか?潰れると汁や白い膿のようなものが出たりとか?」

「そうです!なにか知ってるのですか!」

サラ様は私に詰め寄ると、慌ててそれに気がついて離れた。

「ご、ごめんなさい!でもこれは伝染らないから」

離れるサラ様の手を掴んで私は引き寄せる。

「知ってます。サラ様は甘い物が好きではありませんか?特にクリームとかそれとか油っぽいものなど…」

「好きですね」

これにはミーナさんが答えてくれた。

「サラ様お願いです、もしかしたら私はサラ様を悩ませる原因がわかるかも知れません」

「本当ですか?」

「はい、でもそれにはサラ様の症状をよく見せてくれないとはっきりとは言えません」

そういうとサラ様は自分の顔の布を押さえた。

「顔を見られるのは嫌かも知れませんが私はそれを否定も嫌悪もしません、ですからお願いです、少しだけお顔を見せて下さい」

ゆっくりと落ち着きながら説得するうに話しかけた。

「わかりました……見せます。だからお願い、私を助けて……」

サラ様は震える手で顔に巻かれた布を解いていく、そして最後の帽子を脱ぐとその瞳には涙が溢れていた。

「ありがとうございます」

私はサラ様の姿をみて笑顔を見せた。

「やっぱりそれはニキビですね」

「にきび?」

サラ様がそれはなんだと顔を歪めた。

きっと元は綺麗な肌をしていたのだろう、でも今はおでこと両頬、それに顎にニキビができている。
しかもそれを隠そうと化粧までしてしまいさらに酷くなっていた。

「サラ様、まず顔を洗いましょう」

「や、やだ……」

サラ様は化粧を落としたくないと首を振った。

「ですが化粧はさらに肌を悪くしますよ!」

「で、でも……」

「部屋には誰も入れません!だから見るのは私とミーナさんだけです。気にしていたら治りませんよ!」

今すぐにでも落としたくてつい強い口調になってしまう。

「うっ……」

するとサラ様は涙を溢れさせ泣いてしまった。

「す、すみません。サラ様に早く良くなって欲しくて……でもお願いです化粧を落とさないと本当に治らなくなってしまうかも……」

サラ様はまだ若いしアーロン様同様ちゃんとケアすれば早く良くなるかもしれない。

「治らなく?」

「はい、ニキビは酷いと痕ができてしまいます、それはどんなにケアしても治らないんです」

「わ、わかったわ!すぐに洗う、ミーナお願い」

「はい!お嬢様!」

話を聞いていたミーナさんはお嬢様を浴室まで抱き上げてつれていった。

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