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25.サラ・2
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「ここだ」
ローゼン王子に案内された場所は屋敷の奥の奥にある北側の日の入りにくい場所だった。
廊下の大きな窓には暑い威圧感のあるカーテンがかかり一切日が入っていない。
「なんか、落ち着く」
アーロン様がボソッと呟いた。
「サラ様は本当にアトピーでしょうか?」
私はアーロン様にコソッと耳打ちする。
「同じじゃないかな」
「でも幼少期は普通だったんですよね?」
いきなりアトピーになったってことだろうか?有り得なくないのかもしれないがなんとなくピンとこなかった。
それに赤いボツボツ……ということに引っかかった。
ローゼン王子が扉をノックすると、優しく声をかけた。
「サラ、僕だよローゼンだ。顔を見せてくれないかな?」
しかし返事はかえってこない、ローゼン王子は慣れているのか言葉を続けた。
「今日は僕の友人に来てもらったんだ、君と同じ病気だったかもしれないんだよ。彼はそれを克服したんだ……君の病気も……」
「帰って下さい。私は王子とはもう……婚約者にはなれないと申しました」
サラ様と思われるか細い声が返ってきた。
「それについてもちゃんと顔を見て話そう……お願いだから」
「帰って!誰にも会いたくない!」
サラ様の叫び声が聞こえると中で何か倒れる音がする。
少ししてサラ様の侍女らしき人が出てきた。
「ローゼン王子、申し訳ありません。サラ様は……」
深々と頭を下げる。
「わかってる……」
ローゼン王子は悲しそうな顔で微笑んだ。
「すまないね、ここまで来てもらったのに……また日を改めて来て貰えるかな?」
「それはいいけど……」
アーロン様は無理じゃないかなと顔を曇らせた。
「えっと……申し訳ないですが私だけで会ってもいいですか?」
私はちょっと思い当たることがありローゼン王子に許可を求める。
「それはいいけど」
ローゼン王子は不安そうにしていた。
「じゃあ僕らはちょっと離れてるよ」
「いえ、先程の部屋で待ってて下さい。決して部屋のそばには来ないで下さい」
「え?」
ローゼン王子が驚いて大きな声を出した。
「アーロン様も同様です、ここには私とこちらの方だけで」
そう言ってサラ様の侍女に視線を送った。
「わかったよ、じゃあローゼン行こうか」
アーロン様は私の意見に素直にしたがってくれた、そして渋るローゼン王子を連れて部屋へと戻っていく。
廊下はシーンと静まると私は扉をノックする。
「サラ様、私マリルと申します。アーロン様のお世話係をしております」
サラ様からは反応がない、それでも私は続けた。
「ここにはローゼン王子はもちろんアーロン様もおりません。他の執事の方も下がらせたので私と……えっと……」
侍女さんの名前がわからずに顔を見つめる。
「ミーナと申します」
侍女さんが名前を教えてくれた。
「ありがとうございます、ミーナさんと私だけです。ですから安心して話をしてください」
「お嬢様本当です、ここにはマリル様しかおりませんよ」
ミーナさんが声をかけると中で人が動く気配がする。
「マリル……様?」
「私の事はマリルとお呼び下さい、近くに来てくださってありがとうございます。私サラ様のお力になれればと思いここに残りました」
「……無理です。私はもういいのですここで誰にも見られずに暮らしますから」
サラ様からは覇気が感じられない。
もう全て諦めてしまっているように感じた。
「もう諦めているなら最後に少しだけ足掻いてみませんか?それでもダメならもう田舎にも でも引越して人に会わない暮らしもいいと思います。一生ひとりで終えるのも悪くないですよね」
「え?」
ミーナさんが私の言葉に驚いている。
きっと今までそんなことを言った人はいなかったのだろう。
「サラ様もローゼン王子に見られのはいやでも同じ女の私ならどうですか?私は先程王子に誓約書を書かされました。ここでのことを他言すれば打首だそうです。ですからサラ様の秘密は絶対に外には漏れませんよ」
「せ、誓約書?」
「はい、そんなの書かなくても人に言うことなどありませんけどね、私友達いませんから」
フッと自虐的に笑うと部屋の中からまた微かに音がした。
「あの......本物に私を見ても驚きませんか?」
サラ様が私に声をかけてきてくれた。
でも慌てずに落ち着いて言葉を返す。
「アーロン様の噂は知っていますか?私はそんなアーロン様のお世話をずっとしてきたんですよ」
アーロン様をネタにしてしまうのは心苦しいが今は私達はしかいない。
アーロン様ならきっと許してくれるだろう。
しかし中から反応がない。
これでも駄目かとまたチャレンジするかと肩を落とすと……
キィ……と扉が静かに開いた。
ローゼン王子に案内された場所は屋敷の奥の奥にある北側の日の入りにくい場所だった。
廊下の大きな窓には暑い威圧感のあるカーテンがかかり一切日が入っていない。
「なんか、落ち着く」
アーロン様がボソッと呟いた。
「サラ様は本当にアトピーでしょうか?」
私はアーロン様にコソッと耳打ちする。
「同じじゃないかな」
「でも幼少期は普通だったんですよね?」
いきなりアトピーになったってことだろうか?有り得なくないのかもしれないがなんとなくピンとこなかった。
それに赤いボツボツ……ということに引っかかった。
ローゼン王子が扉をノックすると、優しく声をかけた。
「サラ、僕だよローゼンだ。顔を見せてくれないかな?」
しかし返事はかえってこない、ローゼン王子は慣れているのか言葉を続けた。
「今日は僕の友人に来てもらったんだ、君と同じ病気だったかもしれないんだよ。彼はそれを克服したんだ……君の病気も……」
「帰って下さい。私は王子とはもう……婚約者にはなれないと申しました」
サラ様と思われるか細い声が返ってきた。
「それについてもちゃんと顔を見て話そう……お願いだから」
「帰って!誰にも会いたくない!」
サラ様の叫び声が聞こえると中で何か倒れる音がする。
少ししてサラ様の侍女らしき人が出てきた。
「ローゼン王子、申し訳ありません。サラ様は……」
深々と頭を下げる。
「わかってる……」
ローゼン王子は悲しそうな顔で微笑んだ。
「すまないね、ここまで来てもらったのに……また日を改めて来て貰えるかな?」
「それはいいけど……」
アーロン様は無理じゃないかなと顔を曇らせた。
「えっと……申し訳ないですが私だけで会ってもいいですか?」
私はちょっと思い当たることがありローゼン王子に許可を求める。
「それはいいけど」
ローゼン王子は不安そうにしていた。
「じゃあ僕らはちょっと離れてるよ」
「いえ、先程の部屋で待ってて下さい。決して部屋のそばには来ないで下さい」
「え?」
ローゼン王子が驚いて大きな声を出した。
「アーロン様も同様です、ここには私とこちらの方だけで」
そう言ってサラ様の侍女に視線を送った。
「わかったよ、じゃあローゼン行こうか」
アーロン様は私の意見に素直にしたがってくれた、そして渋るローゼン王子を連れて部屋へと戻っていく。
廊下はシーンと静まると私は扉をノックする。
「サラ様、私マリルと申します。アーロン様のお世話係をしております」
サラ様からは反応がない、それでも私は続けた。
「ここにはローゼン王子はもちろんアーロン様もおりません。他の執事の方も下がらせたので私と……えっと……」
侍女さんの名前がわからずに顔を見つめる。
「ミーナと申します」
侍女さんが名前を教えてくれた。
「ありがとうございます、ミーナさんと私だけです。ですから安心して話をしてください」
「お嬢様本当です、ここにはマリル様しかおりませんよ」
ミーナさんが声をかけると中で人が動く気配がする。
「マリル……様?」
「私の事はマリルとお呼び下さい、近くに来てくださってありがとうございます。私サラ様のお力になれればと思いここに残りました」
「……無理です。私はもういいのですここで誰にも見られずに暮らしますから」
サラ様からは覇気が感じられない。
もう全て諦めてしまっているように感じた。
「もう諦めているなら最後に少しだけ足掻いてみませんか?それでもダメならもう田舎にも でも引越して人に会わない暮らしもいいと思います。一生ひとりで終えるのも悪くないですよね」
「え?」
ミーナさんが私の言葉に驚いている。
きっと今までそんなことを言った人はいなかったのだろう。
「サラ様もローゼン王子に見られのはいやでも同じ女の私ならどうですか?私は先程王子に誓約書を書かされました。ここでのことを他言すれば打首だそうです。ですからサラ様の秘密は絶対に外には漏れませんよ」
「せ、誓約書?」
「はい、そんなの書かなくても人に言うことなどありませんけどね、私友達いませんから」
フッと自虐的に笑うと部屋の中からまた微かに音がした。
「あの......本物に私を見ても驚きませんか?」
サラ様が私に声をかけてきてくれた。
でも慌てずに落ち着いて言葉を返す。
「アーロン様の噂は知っていますか?私はそんなアーロン様のお世話をずっとしてきたんですよ」
アーロン様をネタにしてしまうのは心苦しいが今は私達はしかいない。
アーロン様ならきっと許してくれるだろう。
しかし中から反応がない。
これでも駄目かとまたチャレンジするかと肩を落とすと……
キィ……と扉が静かに開いた。
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