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19.お茶会3
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「ではアーロン様、マリル様行ってらっしゃいませ」
グランドさんに見送られ私達は会場の入口まで来ていた。
「グランドさん達は来ないのですか?」
グランドさんとマリエルさんは道から外れて端に寄っている。
「私共も会場には参りますが端でお二人を見守ることしかできません。どうかマリル様、アーロン様をよろしくお願いします」
グランドさんが私に頭を下げた。
「もちろんです!」
私はグランドさんの瞳をしっかりと見つめて頷いた。
「普通逆じゃない?」
アーロン様がグランドさんと私のやり取りに呆れているとマリエルさんがクスッと笑う。
「アーロン様はマリルちゃんをお守りください。お二人で助け合って…そして楽しんできてください、なんせ初めての二人の共同作業ですよ」
「なるほど…」
アーロン様は何がなるほどなのか妙に納得していた。
「共同作業かわかりませんが、アーロン様頑張りましょうね」
「ああ、マリル腕を」
アーロン様はそういうと私の手を引いて自分の腕に絡めさせた。
「では行ってくる」
二人に頭を下げると私達はいざお茶会の会場へと足を踏み入れた。
「わぁ…すごい」
私は顔に出さないように会場をチラと一瞥するとそっと呟いた。
会場は既に何十人も同じような年の頃の貴族の子息や令嬢が来ていた。
各々散らばり数人で集まり話をしたりしている。
「ど、どこにいればいいんでしょうか?あっちなど理想的ですが…」
なるべく人のいない端にいたい私はアーロン様にコソッと問いかける。
アーロン様は頷き二人で人気の無い方へと行こうとすると……
「アーロン・ブライアン様とお見受け致します、ご挨拶よろしいでしょうか?」
可愛らしいご令嬢が道を阻んできた。
アーロン様は顔には出さなかったが一瞬体が固くなった。
でもすぐに笑顔を見せて挨拶をする。
「すみません、なにぶんお茶会は久しぶりでお名前を伺っても?」
アーロン様が令嬢に声をかけるとそれをきっかけのように人が集まって来てしまった。
「私レズモンド侯爵家のステファニーと申します。アーロン様にはかねてからずっとお会いしたいと思っていました」
扇で顔を隠しながら上目遣いにアーロン様を見つめる。
その顔は幼いながらも色っぽく感じた。
アーロン様は顔を崩さなかったが固まった笑顔を見るに嫌そうにしている。
「よろしく……では」
そう言ってその場を通り過ぎようとすると他の令嬢達が自分も挨拶をしたいとアーロン様を取り囲んだ。
「ちょっとあなた退いてくださる?」
すると令嬢の一人にアーロン様と繋いでい腕を離されて外に押しやられてしまった。
「マリル!」
「アーロン様!」
あっという間にアーロン様は人の中に埋もれてしまった。
「ふん、侍女もどきがアーロン様の隣に居座ってるなんて許せないわ」
「いい気味」
誰かわからないがクスクスと陰口が聞こえてきた。
なんと……子供と言えど貴族。それなのに礼儀もマナーも習ってないの?
現実は私の思い描いていたお茶会とは全然違った。
確かにこれならアーロン様が行きたがらないのもうなずける。
私は体制を立て直すとアーロン様が何処にいるのかを把握した。
「うん、多分あそこだな……」
人の塊がゆっくりとだがフラフラと右へ左へと動いている。
例えるなら小さな台風のようだった、きっとその中心にアーロン様がいるはずだ。
私は動きを読み、先回りすると渦の中に飛び込んだ。
いた!
人に押しつぶされながら私は再びアーロン様を目視した。
アーロン様は笑顔で取り繕っているがその顔は蒼白だった。
ただでさえ白くて綺麗な顔が今にも倒れそうになっている。
私は令嬢達を押しのけアーロン様の元に向かった。
「アーロン様!あちらでお茶でも飲みましょう」
私はアーロン様の前に立つと手を差し出した。
アーロン様は私を見ると心底ホッとしたように顔をほころばせる。
「あぁ」
そう言うと私の手を取ろうとする。
しかしその間にまた割り込もうとする人がいた。
「アーロン様、それなら私と……」
アーロン様の手を握ろうと近づいていく……アーロン様はその姿に嫌悪感を滲ませ手を振り払おうとした。
いけない!
このままこの令嬢の手を払えばアーロン様の評判に傷がつく。
そう思った私は強引にアーロン様の手を掴むと自分に引き寄せた。
「ちょっと、あなた?」
アーロン様の手をすり抜けた令嬢は私の顔をギロっと睨みつけてきた。
グランドさんに見送られ私達は会場の入口まで来ていた。
「グランドさん達は来ないのですか?」
グランドさんとマリエルさんは道から外れて端に寄っている。
「私共も会場には参りますが端でお二人を見守ることしかできません。どうかマリル様、アーロン様をよろしくお願いします」
グランドさんが私に頭を下げた。
「もちろんです!」
私はグランドさんの瞳をしっかりと見つめて頷いた。
「普通逆じゃない?」
アーロン様がグランドさんと私のやり取りに呆れているとマリエルさんがクスッと笑う。
「アーロン様はマリルちゃんをお守りください。お二人で助け合って…そして楽しんできてください、なんせ初めての二人の共同作業ですよ」
「なるほど…」
アーロン様は何がなるほどなのか妙に納得していた。
「共同作業かわかりませんが、アーロン様頑張りましょうね」
「ああ、マリル腕を」
アーロン様はそういうと私の手を引いて自分の腕に絡めさせた。
「では行ってくる」
二人に頭を下げると私達はいざお茶会の会場へと足を踏み入れた。
「わぁ…すごい」
私は顔に出さないように会場をチラと一瞥するとそっと呟いた。
会場は既に何十人も同じような年の頃の貴族の子息や令嬢が来ていた。
各々散らばり数人で集まり話をしたりしている。
「ど、どこにいればいいんでしょうか?あっちなど理想的ですが…」
なるべく人のいない端にいたい私はアーロン様にコソッと問いかける。
アーロン様は頷き二人で人気の無い方へと行こうとすると……
「アーロン・ブライアン様とお見受け致します、ご挨拶よろしいでしょうか?」
可愛らしいご令嬢が道を阻んできた。
アーロン様は顔には出さなかったが一瞬体が固くなった。
でもすぐに笑顔を見せて挨拶をする。
「すみません、なにぶんお茶会は久しぶりでお名前を伺っても?」
アーロン様が令嬢に声をかけるとそれをきっかけのように人が集まって来てしまった。
「私レズモンド侯爵家のステファニーと申します。アーロン様にはかねてからずっとお会いしたいと思っていました」
扇で顔を隠しながら上目遣いにアーロン様を見つめる。
その顔は幼いながらも色っぽく感じた。
アーロン様は顔を崩さなかったが固まった笑顔を見るに嫌そうにしている。
「よろしく……では」
そう言ってその場を通り過ぎようとすると他の令嬢達が自分も挨拶をしたいとアーロン様を取り囲んだ。
「ちょっとあなた退いてくださる?」
すると令嬢の一人にアーロン様と繋いでい腕を離されて外に押しやられてしまった。
「マリル!」
「アーロン様!」
あっという間にアーロン様は人の中に埋もれてしまった。
「ふん、侍女もどきがアーロン様の隣に居座ってるなんて許せないわ」
「いい気味」
誰かわからないがクスクスと陰口が聞こえてきた。
なんと……子供と言えど貴族。それなのに礼儀もマナーも習ってないの?
現実は私の思い描いていたお茶会とは全然違った。
確かにこれならアーロン様が行きたがらないのもうなずける。
私は体制を立て直すとアーロン様が何処にいるのかを把握した。
「うん、多分あそこだな……」
人の塊がゆっくりとだがフラフラと右へ左へと動いている。
例えるなら小さな台風のようだった、きっとその中心にアーロン様がいるはずだ。
私は動きを読み、先回りすると渦の中に飛び込んだ。
いた!
人に押しつぶされながら私は再びアーロン様を目視した。
アーロン様は笑顔で取り繕っているがその顔は蒼白だった。
ただでさえ白くて綺麗な顔が今にも倒れそうになっている。
私は令嬢達を押しのけアーロン様の元に向かった。
「アーロン様!あちらでお茶でも飲みましょう」
私はアーロン様の前に立つと手を差し出した。
アーロン様は私を見ると心底ホッとしたように顔をほころばせる。
「あぁ」
そう言うと私の手を取ろうとする。
しかしその間にまた割り込もうとする人がいた。
「アーロン様、それなら私と……」
アーロン様の手を握ろうと近づいていく……アーロン様はその姿に嫌悪感を滲ませ手を振り払おうとした。
いけない!
このままこの令嬢の手を払えばアーロン様の評判に傷がつく。
そう思った私は強引にアーロン様の手を掴むと自分に引き寄せた。
「ちょっと、あなた?」
アーロン様の手をすり抜けた令嬢は私の顔をギロっと睨みつけてきた。
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